見出し画像

のんふぃく!というアイドルグループが見せてくれた奇跡

僕の本業はアイドルの先生です。基本的には歌を教えることが多いのですが、踊りを教えてもいます。

そして今回楽器も教えることになり、この数ヶ月はそれに集中していました。

のんふぃく!というアイドルグループの1周年記念のワンマンライブでバンドをやりたいと、それを聞いたのが昨年末でした。

「え? みんな楽器できたの?」と思ったら、何と全くできないと。ドラムとキーボードは経験者ではあるものの、ギターとベースは完全にゼロからのスタートだと。

僕は間髪入れず「無茶です」と言いました。

普段僕は音楽の専門学校でも教鞭を執っております。専門学校にもゼロから入学してくる子が少なからずいるのですが、最低1年はやらないと何とか人前で見せられるものにならないことが多いです。

それを半年足らずで、しかも自分からやりたいと言ったわけでもなく、普段からライブの本数もレッスンの本数も多い子達が、その中で楽器もお客さんには秘密で練習をすると。

ドラムやキーボードは経験者と言っても、吹奏楽部でドラムを叩いていた子と、クラシックピアノを幼少期に数年やっていたという子というレベル。

楽器をやったことがない人にはわかりにくいかもしれませんが、クラシックとロックやポップスでは全然違うんです。

例えるなら同じ空手と言っても寸止め空手とフルコンタクト空手くらい違う。

同じ中国拳法と言っても詠春拳と長拳くらい違う。

どうしても自分が格闘技をやっていたので格闘技で例えてしまいますが、球技で言うなら野球とソフトボールよりも違うんではないかと、野球とクリケットくらいは違うと思うんです。


ですからゼロではないものの10あるうちの1にも満たない状態からのスタートです。

ギターとベースに関しては12月からレッスンがスタートしていましたが、ドラムとキーボードのレッスンがスタートしたのはもっと後。

5月5日にワンマンだったので、正味4ヶ月。

しかも演出的に映像とのリンクが不可欠なので同期ありでそれをやるという。

同期ありとなしではこれまた全然違うものなんです。

インドカレーと日本のカレーより違うかもしれない。

どれだけ大変かわかっていただけたでしょうか?


僕は結成時からのんふぃく!のヴォーカルレッスンを担当しています。

メンバーの皆が本当に努力家で、何事にも前向きに頑張る子達だということは知っていました。

それを踏まえても無理だと思ったのです。

ちなみにヴォーカルもオケで歌うのとバンドで歌うのではかなり違ってきます。


たった4ヶ月でそれを成し遂げるなんて、そんなことできたら漫画です。

「無茶です。例えばバスケットボールで5人のうち1人は経験者、2人は一応やったことは少しある、2人にいたってはルールも知らない。そんなチームが結成4ヶ月で関東大会に出ろと言われているようなものです。区大会で入賞できれば大したもんで、それでも凄いことですが、その上の上を求められても、それは無茶です。」というようなことを事務所の方にも伝えました。

それでもやってくれと。

最初は僕がほぼ全楽器を指導していました。

僕はプロのヴォーカリストですが、ドラムの仕事も経験があるのでドラムは教えられる。ギターとベースも弾けるので最初の部分は教えられる。キーボードも弾けなくはないけどこれが一番自信がないのでこれはまずどれくらい弾けるか見てからにしたいと、そのような形で全体を見ていました。

思っていた通り最初の壁が分厚く、特にギターの最初の壁が本当に厳しいもので、苦戦しました。

ベースは比較的最初の壁が厚くはない楽器なので何とか可能性が見えましたが、ギターに関しては頭を抱えました。

ドラムとキーボードに関してもそうです。

経験者と言っても先述したくらいの経験値。ドラクエIIIで言うならアリアハンをやっと出たくらいのレベルなのに、やまたのおろちを倒して来いと言われているようなものです。

例え話だらけになってしまいますが、どれだけ凄いことなのか少しでも感じてもらえたらと。


閑話休題。

僕は他のアイドルグループの指導もしています。現在30組を超えるグループの指導に携わっている為、物理的にも教える時間が限られてしまうのです。

そこで僕は信頼できるミュージシャン仲間達にお願いをし、それぞれの楽器を指導してもらいました。ドラムだけは僕が最後まで見ましたが、他はヴォーカル含め、他の先生方に助けていただきながら、指導内容のすり合わせ、経過報告をし合っている時も「無理だと思います」と全ての先生に言われました。

んなこたわかっとるわい! と思いながら、それでもやるしかないんだということで何とかやってもらいました。

しかも、しかもです。新曲が上がってきたのが4月。残り半月しかないという時期。それでいて新曲が今までの曲に比べてはるかに難易度が高いものだったのです。無茶がやっと形になるかもというくらいになってきたところで難曲。全員が頭を抱えました。

メンバー本人達の希望もあり、レッスンをがっつり増やしてワンマンに臨みました。そこからはメンバーも講師陣も全力で、メンバーは必死に練習、講師陣はどうすれば少しでも形になるか噛み砕いて指導、部分的にアレンジし、日々このライブのことばかり考えて過ごしました。


結果は見てくれた皆さんには伝わっていることでしょう。

奇跡が起きました。
先述した例え話を使うなら、ブロック大会勝ち抜いて都大会で途中対戦予定の強豪校が不祥事起こして不戦勝になった的なラッキーもあったけど、とにかく関東大会出るには出れた的な。
旅の中はぐれメタルに出逢いまくってレベルを順調に上げ、最短でジパング辿り着いて会心の一撃出しまくってやまたのおろち倒しちゃった的な。

例えではなく現実を語るなら、拙い部分、危うい部分はあったものの大きな失敗はなく、音もちゃんと出せて演奏も止まることがなく、最後までやりきったのです。


僕はアイドル業界そこそこ長いもので、今まで教えたグループを数えると100組を超えるのですが、その中でもこれだけ頑張った子達を他に知りません。


僕は元々アイドルヲタクです。何故アイドルが好きなのかというと、アイドルほど頑張っている子達はなかなかいないからです。

例えばバンドなら、自分の楽器だけ頑張れば良いんです。それすらもできない人が多いわけですが、とにかく自分の好きな楽器や歌を頑張ればそれ良い。

しかしアイドルは歌のみならずダンス、そしてトークも頑張らないといけない。さらにはルックスに磨きをかけないといけない上にSNSも使いこなせないといけない。特典会では接客的なこともしなくてはならない。

とんでもなく大変なのです。それに加えて楽器ですよ。もし自分が同じ立場だったら頑張れたのかと考えると、逃げ出していてもおかしくないという状況でした。

そんな状況でも、のんふぃく!の皆は常に笑顔で励まし合いながら、褒めあいながら、頑張ってその大きな壁を乗り越えたのです。

頑張る子達が好きだからアイドルを応援しているという人も少なからずいるかと思いますが、そんな方にはのんふぃく!ほど推し甲斐のあるグループもなかなかないですよ。

先述したように、僕は多くのグループを教えているので、どこかのグループを贔屓したりということは絶対にしないようにしています。ですからあまりこういう特定のグループについて書くことはないのですが、今回は決して贔屓ではなく客観的事実として、奇跡を起こしたのんふぃく!のメンバー達を褒め称えたいのです。

最後の曲を聴いていたら涙が出てきました。

個人的にとても悲しいことが多かった昨年ですら一度も泣いていないのに、今日ばっかりは泣けてきました。こんなにも頑張っている子達が報われる世界であって欲しい。そう思ってやみません。


今日は各楽器の先生達も見にきてくれていたので、終演後に講師陣で打ち上げをしたのですが、全員本当に感動していたし、全員のんふぃく!のファンになったと言ってました。関わった人達がファンになっていき、大成したグループといえば、Perfumeが真っ先に思い浮かびます。

のんふぃく!もそのくらいのレベルまで行ける可能性が大いにあると思いますし、そのくらい頑張っていると思います。僕はPerfumeにも関わっていた時期があり、その時の3人も本当に前向きに物凄い努力を重ねていたのですが、それを思い出すことが多いのです。

音楽の好み、ルックスの好みは人それぞれなので、そこが合わなければ仕方ないですが、とにかく一度チェックしてほしいです。

ちょうど自己紹介ソングがYoutubeにあったので貼っておきますね。



酔っ払った勢いで余韻の中思うままに書いてしまったので乱筆乱文ではありますが、酔いが覚めたらきっとこれは公開しないであろうと思うので、これを読んだ何人かでものんふぃく!のファンになってくれたらという気持ちで、酔った勢いを借りて公開してしまうことにします。

メンバーのみんな、本当によく頑張りました。

これからも頑張っていきましょうね。僕はそのお手伝いをしていきます。

そしてこの文章でのんふぃく!を知ってくれた方、動画を見て好きかもと思ってくれた方、是非現場に行って生で見てください。
生で見る方がさらに可愛い子達です。
元気をもらえること間違いなしですから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?