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233.カレーに「もうレシピは要らない」のか? 問題 “クリエイション”編

 新刊『システムカレー学』の最終章は、クリエイションです。自分だけのおりじなるかれーをレシピに頼ることなく、次々と生み出すための考え方やポイントを様々な角度から整理しています。その上で、「チキンカレー11変化」を紹介しています。

 詳細は本書をお読みいただくとして、カレーのクリエイションというものについて、どのような捉え方をしているのかについてまとめたエッセイを紹介します。第4章に入る直前ページに書かれた内容の抜粋です。

エッセイ

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将棋の世界には「棋は対話なり」という言葉があります。対局する棋士が盤と駒を使って対話する。「突っ張ったな」とか「反省しているよね」とか、指し手を通じて理解するんです。
僕が誰かのカレーを食べて「おいしいなぁ」と感じるときは、決まって作り手のビジョンを感じられるときです。カレー作りは、作り手と鍋中との対話ですから。食べるときはそれを想像して楽しみたい。作り手の気持ちとはちょっと違います。「思いを込めて作りました」は嬉しいけれどおいしさとはちょっと別のもの。「こういう味わいにしたかったんだな」という意思を汲み取れたとき、「ああ、おいしい」と感じます。
すなわち自分なりのおいしいカレーを作ろうと思ったとき、大事なのは「意思≒ビジョン」です。あなたはどうしたいのか? どんなカレーを作りたいのか? カレー作りに正解があるとすれば、それは自分の中にだけ存在します。
さて、困りましたね。いったいどこから手をつけていいか。でも、本書で提案している通り、根底には「ゴールデンルール」があります。それを「アレンジ」すれば、次々と新しいカレーは生み出せます。でも、どこかで壁にぶち当たる。そうしたら、「カルチャー」をヒントにすることができる。「サイエンス」で調理法を見直すことができる。
ただ、ちょっと意地悪な見方をすれば、カルチャーは誰かや何かの「模倣」だし、サイエンスだけでは「理屈」っぽい。欲深い僕は自分にしかできないカレーを「創造」したいんです。それを「クリエイション」と呼んでいます。
これらは三つ巴の関係にあります。三層構造のらせん階段のようなものと言えるかもしれません。あなたはどの階段から登りますか? 途中で乗り換えたっていい。少しずつ上がっていけば、イメージしているゴールへじわじわと近づき、何をすればおいしくなるのかがわかるようになる。
そうやってカレー作りを続けた結果、知らず知らずのうちにテクニックが備わっていくんです。僕の場合はそうでした。だから、みなさんにも「ぜひ!」とお勧めします。
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