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退職後の小さな夢、叶う。

もう25年も前になるだろうか。子供たちをママチャリの前後に乗せて、毎日朝夕の保育園の送り迎えをしていた頃。2人の子供とその日のことを話したり、ふざけたりしながら通った片道ほんの5分ほどの時間。今思うとなんだか無性に貴重な時間だったような。思い出すと涙腺が緩んできそうになる、そんな楽しい思い出でもある。
その頃からずっと思い続けてきたホントに小さな夢。保育園のすぐ近くに一軒の喫茶店があった。毎日その前を通って保育園と我が家とを行き来していたのだが、ある時から「いつかあそこでモーニングセットを。」と思うようになっていた。通勤前に保育園に向かう自分の朝とは対照的な喫茶店での朝食。憧れたのは、そんなせわしない日常が生んだ妄想が元だったのかもしれない。
保育園の送り迎えは終わったが、なかなかその機会は訪れない。何かのきっかけがないと動けないものだなと感じていた。しばらくそんなことは忘れかけていた。
定年退職の6年前に最後の転勤。もうひとがんばりすれば、自分なりの一つめのゴールである「定年」を迎えられる。その時には…。
いろんなやってみたいことを思い浮かべた。
富士山に行く。熱海に釣りに行く。あの店であれを食べる。あの店?そう言えば、あの喫茶店まだあるかなぁ。思い出した。見に行ってみよう!まだ、変わらず営業しているじゃないか。そうとわかったら、行くしかない。
仕事休みの朝、開店時間に合わせて出かけた。何!?開いてないじゃないか。まさか、閉店したのか?もたもたしている間に廃業?がっかりして、家路に。その1時間後、別の用事で通りかかると、営業中!さすがは個人営業。開店もアバウトなんだなぁ。朝ご飯食べちゃったし、出直しだな。
そして、先日の休みに満を持して出発。開店時間よりも少しずらして。
店内は昭和の雰囲気のまま。ドラマなどでよく見る喫茶店そのまま。
ついにこの時がきた。「モーニング、ブレンドで。」と告げる。待っている間に店内を観察。そして、外を眺める。かつてこの道を子供たちを乗せた自転車でどれだけ往復しただろうか。外から覗いていた、あの喫茶店の中のソファーに座って、セットが運ばれてくるのを待つ自分の姿。妄想が現実になった日。とても小さいけれど、夢がまた一つ叶った。

定年退職後の「のんびり」を実感!

セットは780円。朝食にしては贅沢。そして客もマスターも煙草をぷかぷか。けむいなぁ。もうここには来ないかな。でも、こんなに長い間夢を見続けさせてくれたお店には感謝。
なんだか、とても嬉しい、そして感慨深い朝を過ごすことができた。さて、次はどこへ。


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