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大人の遠足 - 奈良〜大阪編【後編: 大阪編】

昨年10月のある晴れた日。

草々さんを後にした私は、次の目的地へ向かった。

生駒から向かう大阪。いつもは京都から向かうけど、この経路は初めてだ。鉄子にとって、知らない路線を乗るのはやっぱりワクワクする。見知らぬ地元の人たちに混じって、初めての景色に心躍る。これぞ鉄旅の醍醐味。日帰りでも十分楽しめる。

余談だが、JRの大都市近郊区間で行う大回り乗車も、日帰り長距離旅の楽しさを味わえる。興味のある方はぜひ一度トライしてほしい。

今回は大回りではなく、正味運賃を支払いかなりの交通費となったが、それも旅の醍醐味を味わうための投資。生駒山トンネルを越えるともうすぐそこに大阪の街が迫っている。

四ツ橋で電車を降り、西心斎橋へ向かう。
お目当てのコーヒーロースターは、2年半前まで一緒に仕事してたアメリカ人デザイナーお勧めの店。

2年半越しでやっと来れた。

アメリカ村に程近いお店。入り口付近にテラス席が2卓ほどあり、鰻の寝床のような店内にもカウンター席が幾つか。一番奥にショップカウンターがあり豆のオーダーもテイクアウトもイートインも全てここで注文するスタイル。初めてなので要領に戸惑いつつ、お店の人に豆の好みを伝えながら選ぶ。

挽いてもらうのを待つ間、カウンター席に座る。目の前の壁面にディスプレイされているキャニスターなどの商品やパッケージがいちいち可愛くて、ずっと見ていられる。

勧めてくれた彼は、コロナ禍の影響を受けて業務契約が更新されず、帰国することになった。住まいを引き払うにあたり、引越しや持ち物の処分の業者とのやり取りを手伝いに彼のタワマンを訪れた。その時に出してくれたコーヒーをきっかけに話が転がる。スウェーデンで入手したという豆を振る舞ってくれた彼は、デザイナーらしくコーヒーにも拘りを持っていて、大阪に暮らす間に行きつけのロースターを見つけていた。そのうちの一つが、件の店だった。

帰宅してから飲んだそのコーヒーのお味は、earthyな感じが前面に出てかなり癖のある味に感じた。解説によれば、ブルーベリーとチョコレートの風味とのことだが、言われてみればこの土臭い感じがそれなのか。私にはちょっと早すぎたのかもしれない。次回は別の豆を選ぼう。このちょっとクセの強い味が、デザイナーの彼との共通点と言えば共通点。コーヒーを啜りながら、あのピタピタのデニムとストール、そして難解な言葉を繰り出しながら話す姿が脳裏に蘇った。

その人自身を感じる作品

珈琲豆を無事購入して少し歩くと、御堂筋に出ていた。心斎橋に程近いその場所には、そう、トシさんの御堂筋チャレンジのガーデンがあったはず。それもぜひ観たいと思い、通りを北へ南へと少し歩いた。そして漸く見つけた。

都会の街並みのど真ん中に突然現れた花壇。
秋らしい落ち着いた色合いが洗練された雰囲気を醸し出して、周りの風景にマッチしている。その植えられた草花を見ながら、いつもTwitterにアップされている草花の写真とツイートを思い出していた。ご本人が居られなくても、その人の手による作品を目の前に、その人自身を感じるというのもいい。逆にいえば、そんな作品を作れるということがすごいことだと思う。文章でも絵画でも写真でも音楽の演奏でも、その人を感じるもの。そんな作品が作れたら。

そこに居てくれるから

御堂筋を後に、次の目的地へ。

御堂筋線の長い駅名のあの地

地下鉄から阪急への乗り継ぎも、その土地の雰囲気に触れるチャンスと思えば面倒でも何でもない。たとえ日帰りでも、見知らぬ土地を歩くことで旅の気分を充分に味わえる。そんな気がして思わず写真を撮っていた。

次に向かったのはお馴染みのあのお店。

たこ焼たこばさん
美味しゅうございました

コロナ禍以降は出かけること自体が減ってしまったため、なかなか訪れる機会がなかったけれど、今回はせっかく大阪に出たのでお邪魔させてもらった。

島田さんはいつも元気な声で出迎えてくれる。

お店のテーブルに着くと、大抵はたこば焼きか月替わりのメニューをオーダーする。時にはお任せで珍しいメニューを出してくださる。
焼けるまで待っている間、いろんなお喋りをする。近況、お笑いの話、世代が近いので懐かしい話に花が咲いたり。
美味しいたこ焼きを頂いてお土産用の分も準備してくださる頃には、なんだかほっこり心が解れていることに気づく。

お店って、行けばそこに居てくれる、会えるのがいいなとあらためて思う。出禁は別として、余程のことがない限り入店拒否されることはないと思うし、受け入れてもらえそうな安心感がある。オーナーにしてみれば「お店を持つ」ということはそんな簡単で気楽なことではないだろうけれど。お気に入りのお店、行きつけのお店とはただの客を越えた信頼関係が築けるのだろうな。私にはまだそんなお店はないけれど…

阪急大山崎駅から

たこばさんを後にし、帰路に着く。途中またJRへの乗り換えのために歩いた路地も、何だか懐かしさを感じる風景だった。

JR山崎駅に向かう

あの旅からはや半年になろうとしている。コロナ禍も含めてこの数年は時があっという間に経ってしまう気がする。ぼやっとしてたら周りはどんどん変わっていく。変わらないようにすることはできないけど、そこへ訪れることはできる。変化も見届けつつ、その場所にいる自分がその時々で何を感じるか。そのことに目を向け耳を傾けていたいものだ。

大人の遠足。さあ、次はどこへ行こうか。できればもう少し足を伸ばして泊まりで行きたい。

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