hibi

国語が苦手だけど、言葉が好き。

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世界を愛してるから、嫌い

悲しい言葉の雨が降った。コップに注いだ水を床に投げつけたかった。血が滲むまでガラスの破片を握りしめたかった。玄関のドアを乱暴に開けて、裸足でどこまでも遠くへ行けたらよかった。町の名前も知らないまま切符を買えたらよかった。昼間の川辺で白鳥を見た。土の匂いがする中で遠い国に関する本を読んだ。味気のないコーヒーに死ぬほど砂糖を入れた。大声で歌いながら道を歩いた。疲れ果てるまでシャッターを切った。爪先のネイルが剥げていた。どこまでも正しく生きられないから、私は私でいられた。魂の叫びが

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      エッセイ / 短編集①

      • 私の世界と、木曜日の日記

        体調を崩してしまって、3日ベッドの上で安静に過ごした。明日は夜の仕事探しなので、気持ちも体も健やかであってほしいと祈ってる。やっぱり外に出ないとダメだなと思った夕方。今日は雨だったから仕方ないわ。大人になって、見たくないものが増えていくのね。ずっと静かに大事に握りしめてきた真っ白な貝殻を、海へ放り投げる勇気が私にはまだない。隣の芝生も綺麗ねってみんなが言ってくれる世界だったらよかったのに。どこにも書けないわがままと、木曜日。 ずるい方が得をするなら、損をしたまま生きていたい

        • 踏み出そうとした一歩には価値がある

          走って、休んで。走って、休んで。 そんな不器用な生き方をしているのは 私だけだろうか。 歩き続ける人を眺めた日。 全力で走って行く人と自分を比べた日。 こんな夜に終わりなんて来ないと泣いた日。 立ち止まるなと誰かに指を指された日。 必死に生きる道を探しているその人の姿は どんな感情が渦巻いていたって 美しいと信じていたい。 仕事に立ち向かって自分を擦り減らした日々。 全てから逃げて、電車へ飛び乗った日々。 人生に空白が欲しかった春と夏の始まり。 眠る

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        世界を愛してるから、嫌い

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          叶わないこと、祈りをやめた日曜日

          7.7 わんわん泣いた日から何日が経ったのか、わからない。私は自分なりに山を登って、なんども引き返しながらも下りおえた。前へ進めといわれている気がする。日常を変えたくて、海も森も、車窓から見える景色も、わたしの小さな世界の全てを見たかった。遠くへ行ったら、もう二度と帰ってこれない気がする。タバコばかり吸ってしまうけれど、お腹がすくようになって夕方に桃を剥いて食べた。まだ、料理をする元気がない。飲みに行くことも、眠らないまま公園で朝を迎えることも、逃避だと自分を咎めることが

          叶わないこと、祈りをやめた日曜日

          人生の山を登る人、下る人、間をすり抜ける人

          元恋人が言ってた。 「山なんて登らなくていい、間をすり抜ければいいんだよ。」 よくいえば、傷つかずに生きることが上手で わるくいうなら、逃げてしまう臆病者だった。 わたしは山を登る選択をいつもしていた。 のぼるために必要なのは、幾冊かの本だった。 言葉はたくさんのことを私に知らせてくれた。 下るためにひつようなのは、温かい紅茶くらい。 頂上まで来てしまえば、あとは下るだけなんだもの。 鼻歌を歌って、景色を眺めて、一人で平気。 登る選択肢しかない山が人生には

          人生の山を登る人、下る人、間をすり抜ける人

          3歩進んで5歩戻る

          私が発達障害(ADHD/ASD)と診断されたのは 約2年前のことだ。 仕事は転々として、次々と二次障害が悪化していった。 慢性疲労、低血圧、微熱、反復過眠。 生活の中で困りごとは数え切れない。 けれど、さんざん考え込んたら 欠点なんて指さされることは 私にしかない個性、お茶目ってこと。 夜に紅茶をのむときは大体そんな風に考えている。 最近、出会って大好きになった言葉2つを記録しておく。 不安と不運と不幸の中でも、踊り続けるのが人生である。 特別なものに出

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          見つけた大切なかけら

          新居の鍵が届いた。 今住んでいる場所を出て行くまでに あと3ヶ月を切った。 仕事は意外にも続けている。 手を止めていたジュエリーをまた作り始めた。 お店に置いてもらうという 夢が叶う間近である。   心がぎゅうぎゅうに押し潰されそうなくらい 不安と期待が入り混じった気持ちで 日々を過ごしている。 けれども、なんだかとても大切なかけらを 取り戻したような、見つけたような そんな気がしている。 すごく辛かったアパレルのお給料が入って 父へ贈り物をした。

          見つけた大切なかけら

          夜に働く私

          夜に働く私はASDである。 ASDというと、なにそれ?と聞き返す人が 未だに大半のような気がする。 簡潔にまとめると以下のような特性を持つ。 ・複数人の会話に入れない ・一つの事に集中しすぎてしまう (マルチタスクが苦手) ・聴覚情報が弱く過敏、視覚情報優位 症状は人によって様々である。 今まで辞めた仕事の数は知れず とても上手くいくかとても劣っているか どちらかのパターンしかなかった。 コロナ禍に直面して仕事を失い そこからは体の不調と退職の繰り返し

          夜に働く私

          記憶が形を亡くしても

          今年が始まったと思ったら もう2月も終わりかけている。 そろそろちゃんとした大人になりたいな、 そんな漠然とした希望が 私が生きる理由であり、死ぬ理由でもある。 部屋の整理を始めて 料理を作って体をととのえて 何かを頑張る程に虚しいと感じてしまうのは いつも自分の気持ちを置き去りにして 暮らすことしか知らないからだったのだと思う。 血の繋がった人たちへ もしも最後の手紙を書くならば あなたたちのことが私は大好きだった。 それは本当のことで、嘘のことだ

          記憶が形を亡くしても

          切ないという言葉を知らなかった

          あなたは私に何本もの薔薇をくれた。 ほら、綺麗でしょう?と笑顔で首を傾げながら。 私は笑って、きれいだねと言った。 指にいくつもの棘が刺さって血が滲んだ。 愛は痛いことなんだと 苦しいことなんだと ずっと思ったまま 私はひとりの大人になった。 握りしめた薔薇の本数だけ 消えない棘が刺さって だけどあなたはこれだけ沢山の美しいものを 与えてきたのに、と言う。 そうだね。綺麗ね。うつくしいね。 何回も何回もわたしは 私じゃない人になりたいと願って く

          切ないという言葉を知らなかった

          私の体は光っている

          私の体は光っている、確かに光っていた。 目に見えなくても。 コーヒーの香りが好きだ。雨の匂いが好きだ。雨が止んだ夜の川辺の匂いが好きだ。枯れかけた花びらがテーブルに落ちていく様子が好きだ。花瓶の水に光が差し込んで反射するのを眺めるのが好きだ。道端ですれ違う人に靡かない猫が自由で好きだ。夕日に照らされた毛が陽だまりのように柔らかくて温かくて好きだ。どんな日であっても海を眺めるのが好きだ。読んだ本について、心の中で問い続けていることを木に話しかけるのが好きだ。車の窓から眺める

          私の体は光っている

          遠くへ行くこと

          生きていたい場所がみつからない。 だから雨の味がするコーヒーをのんで 私はいつも優雅な記憶に助けをもとめた。 叫びはうねり、捻り、鋭く色を変えて 電車の揺れる音に不協和音を溶け込ませた。 木々が淋しく冷たい風に当たる様子を眺めて 沈黙の言葉だけがつづいている世界から 静かな生命のことばを分けてもらった。 「どこか遠くへ行ってくれる人を募集します」 そう書いた貼り紙をしようかと考えたけれど 孤独が二人分に増えることは、長旅の荷物を増やすことでしかなかった。

          遠くへ行くこと

          あなたの知らない街

          わたしが、どこに住んでいて どんな職について働いていて 誰と一緒に日々を過ごすのか ママは、どういう心境なのか知らない。 海の目の前に、住んだことがありますか? 誰にも話せないことを 何度も、何度も、永遠と繰り返す 波の前で過ごしました。 わたしの人生は、少し不思議で たまに、知らない人が ふらりと現れて助けてくれはするけど やっぱり飽きて、みんないなくなります。 けど、わたしだって ある日とつぜん、世界一周に出かけて すきな国をすきなだけ旅したら

          あなたの知らない街

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          どうか、朝を迎えて 毎日、同じ場所で眠れますように。 毎日、同じ場所へ通えますように。 わたしにとっての切な真っ直ぐな願いは これしかなかった。 何かをたよりにしようとしても なにも上手に掴めず 不確かな1日の中から ひとつでも、ひとつでも、多く そして、できるだけはやく 確かなものをつかんでいくしかなかった。 努力していること、すべて 決して口には発さず 誰にも知られてはいけないような、 そんな気がした。 最近になるまで ただいま、と、おかえ

          大切なものを、失ったとき

          ・銀色のブレスレット おじいちゃんの病院へ通っていた帰り道 叔母さんと近くの雑貨屋さんへ行った。 そこで一目惚れした紺色のまっさらなワンピースと、華奢な銀色のブレスレットを買った。 それは、それは、私のとても大切な宝物だった。 どんなにくしゃくしゃにしてリュックに詰めても 一晩ハンガーに吊るせば着られた。 高価な洋服を沢山持っていなくても 健やかな綿をたっぷりとって作られたそのワンピースはとても丈夫で、ベンチに転がっても、階段に座ってソフトクリームを食べても派

          大切なものを、失ったとき