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「協調性」を強調すべきではない学生

私は大学キャリアセンターにカウンセラーとして従事して、今年で18年目になります。また、この数年は学生の就職活動が本格的になる1~3月に、キャリアセンターで学生のES添削や模擬面接の面接官としてのお手伝いもしています。今回はそこで感じることを書いてみます。

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現代の大学生は就職活動の際、応募先の企業が求めるES(エントリーシート)を提出します。そのESには、企業によってユニークな問いが儲けられているのですが、分類すると概ね「志望動機」「自己PR」「ガクチカ(学生時代に力を注いだ活動)」の3つが中心となります。

その「自己PR」の欄には、自身の「強み・長所」について記述する学生が大多数ですが、冒頭に「私の強みは協調性(cooperative)です」と記述する学生がとても多く、その数は年々増えているのではないかとも感じます。

私は本来カウンセラーなので、単に文章添削を行うだけでは納得できず、本人の自己理解について、私自身が理解したいという気持ちが高まり、「あなたはなぜこのことを『自己PR』の題材として強調したのか」について尋ねてしまいます。担うべき役割としては過干渉なのかもしれません。

さて、過干渉かもしれない私のこの問いに対して、「あまり自己主張しない性格で、聞き役に回ることが多いので」「チームで口論や喧嘩になることを避けたいので」「自分の主張に自信がないので」といったニュアンスの返答がかなり多いことに違和感を持っています。

協調性が「リーダーシップ」をベースとして発揮されるなら、独善性の高い人間ではなく協調性の高い人間であり、かつ主体性や積極性が高いといえるでしょう。積極的にメンバーに意見を求め、耳を傾け、受け止め、調整し、最適な意思決定を行うことができるというアピールです。

一方、波風がたつ事を恐れるがあまりに、自分とは異なる意見を明確にすることを避け、無批判にあるいは我慢して受け入れるのであれば、それは協調性ではなく「迎合性(compliant)」と表現されるのではないでしょうか。

迎合性が高いと、消極的な学生と捉えられるため、企業側の人事としては積極的に採用したい人材とは思わないかもしれません。

あるいは、強烈なトップダウン一辺倒の軍隊型の企業や、部下にはどんな命令でも受け入れさせるブラック企業なら、断ることのできない迎合性の高い学生を喜んで採用するかもしれません。

自己分析をしっかりと行い、自己の本当の良さを見つけ、心から自信を持ってアピールしていただきたい、そのように心から願いつつ。

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