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2020年も映画が面白くてよかった!(今年観た映画振り返り)

年末に今年観た映画の振り返りを記事にしようと思ったのが半年前。「1本観るたびに少しずつ書いていけば特に苦労もないな」と思ったあの時の自分を殴りたくなりながらこの原稿の1行目を書き始めたのが12月30日(水)20時45分。今までずっと計画性のない自分の人生について深く考えるきっかけを与えてくれる、映画って本当に素晴らしいものですね。ファック!

というわけで今年見た映画を観た順に振り返りたいと思います。忘れられない映画は色々ありますけど忘れたくないシーンとしてはコロナで閉館してた映画館が上映再開した6月、上映前に流れた『映画泥棒』ですね。

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お前と会うのが久しぶり過ぎて、まさかお前で感激する日が来るとは。そういえばよく考えると1月に観た映画とかほぼ1年前なんですけど頑張れ俺の脳細胞。ではいきましょう、1月からだいたい観た順です。

『パラサイト 半地下の家族』

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言わずもがなの大傑作ですね。格差社会、貧困の連鎖など社会の歪みを描いてはいるんですけどそれと同時進行でコメディ、サスペンスなどが全力疾走してる多重構造でもう凄すぎます。一つの皿に出された料理が、一方からはフレンチで逆から食べると中華になる、というようにいろんな切り口で楽しめる映画じゃないですかね。あらゆる切り口に耐える作り込みの深さと毎シーン画面にちりばめられたメタファーなどポン・ジュノ監督の偏執性を感じさせます。偏執性と言えば「嵐の夜、主が留守の豪邸で主人公家族が宴会するシーン」を『何度も撮り直したけど4人の俳優最高の演技がそれぞれテイクごとに違うから4人それぞれ違うテイクの演技を合成で繋いだ』というこだわりっぷりが狂気。そしてそれだけこだわって神経すり減らして編集した映画なのに本国でファンが一番盛り上がったのが『乳首を愛撫するとき時計回りにこだわった理由』の考察だったってのが最高だよ!そんなもんだよね!!
新年1月8日の金曜ロードショーで時計回りはカットされず放送されるのか大注目、凍りつけ全国のお茶の間!


『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』

メタルの本場、北欧フィンランド。のどかな田舎町のライブ経験もないメタルバンドが北欧最大のメタルフェス出演を目指し奔走するコメディ。どうやったら「オリジナル曲もない」「ライブしたこともない」「ただ集まって練習してただけの仲良し素人4人組」が最大のメタルフェスに出れるのか、想像しながら観てください、全てのシーンで想像の斜め上空3000mブッ飛んでいく裏切り方で解決していきます。いやー映画館で死ぬほど笑った!世界中どこでもメタラーってのは愛すべきクソバカ野郎ってポジションなんだなと再確認できる一本。

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※メタルフェス出演を目指すバンドです


『ジョジョ・ラビット』

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ナチスに憧れる少年ジョジョとジョジョの友人であるヒトラー(ジョジョの作り出したイマジナリー友人)を中心に戦時下のドイツが舞台。強がってるけど臆病でママ離れもできない少年ジョジョと親友(実在)の、ファニーでキュートな世界。そして年上のヒロインエルサへの恋に目覚めたり愛らしい展開から一転、戦時下なので突如ジョジョの望まないビターな現実に見舞われたりもします。悲しいけど人生ってそういうもんだよね、ジョジョ。この映画が素晴らしいのは子供たちの愛らしさだけじゃなくて、その子供たちを見守り助けている大人の存在。スカーレット・ヨハンソン演じるジョジョの母だけでなく、ジョジョと関係するすべての大人から「子どもを守り育てるのが大人の役目なんだぜ」という意志をビンビンに感じるからとてつもない安心感と愛おしさが生まれるのです。そして主人公ジョジョとヒロインのエルサと並ぶくらい魅力なのが音楽!ビートルズで始まりボウイで終わるこの映画、単なるBGMでなく監督自らチョイスした名曲たちとシーンのハマり具合が最高でそれがピークに達するラストシーンの最高さといったら、いつだって世界を変えるのは愛とダンスとボーイミーツガールなんだぜ!!!!

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ママチャリで爆走するスカーレット・ヨハンソンという激レアシーン。


『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

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人生をやり直したい漁師タイラーと、施設を脱走したダウン症の青年ザックに途中から施設の看護師エレノアも加わり、ザックの「プロレスラーになる」という夢を叶えるため旅するロードムービー。ダウン症のザックにお構いなしに酒を教え銃の撃ち方を教えるタイラーが最高すぎる笑 ロードムービーらしくうまくいかない人生やしがらみを飲み込んだり振り払ったりしながら進むんだけど、肩ひじ張らず説教臭くないところがすげぇいいです。

ちなみにこの映画、ストーリーとリンクするような裏話があってザックを演じるザック・ゴッツァーゲンは実際にダウン症で元々映画俳優が夢だったがダウン症の人間に俳優なんて夢のまた夢だった。そこに本作のチャンスが舞い降りてきた。しかし、タイラーを演じるシャイア・ラブーフは撮影当時アルコール問題を抱えており酔って逮捕された上に差別発言でスキャンダルを巻き起こし映画は公開中止寸前まで行ったそう。その時、ザックが「君はもう有名だけど、これが僕のチャンスなんだ。君はそれを台無しにした」とラブーフに告げそれを聞いたラブーフは激しく自らを悔い、それ以来アルコール中毒の治療に真剣に取り組みはじめ、見事映画は公開にこぎつけることができザックはスクリーンデビューの夢を叶えることができたそう。個人的に思うことがあった時期なので劇中のセリフ『友達ってのは自分で選べる家族なんだ』がどこまでも沁みた。良作。

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直訳中国語だといきなりカンフーコメディっぽくなる中国版ポスター


『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』

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顔面の圧が強い!絶対にお隣に住んでほしくない隣人No.1、実在したドイツの連続殺人鬼フリッツホンカのストーリー。この映画の凄いところは、ホンカ以下被害者含め全員が基本酒浸りのダメ人間で「あぁ、、また善良な人々が殺されてしまう・・」みたいな悲壮感が一切ないところ。人生を160kmの剛速球で投げ捨ててるような人しか出てこないので1mmも心が痛みません、大丈夫かドイツ。おそらく真っ当な人には到底理解できないホンカの場当たり的犯行や証拠隠滅の稚拙さ、ホンカの部屋の荒れっぷりやちょっと吐き気を覚えるひどい料理など『落ちていく人間特有のあれこれ』のリアルがこの映画の怖さ。でもこれって都市生活者にとってすぐ隣の部屋に潜んでるかもしれない恐怖なんですよね。非常に見苦しいセックスシーンなど初デートには全くおススメできないこの映画、いま調べたらバレンタインデー公開だったんですね。配給会社の悪意しか感じない!

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バレンタインロードショー!じゃねぇよ。

『1917 命をかけた伝令』

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全編ワンカット!という(実際はワンカット風)地上波で放送したらどうやってもCM入ってクレーム間違いなしのこの映画。最前線へ指令を伝えるのが間に合わないと部隊が壊滅してしまう、そのために主人公がひたすら戦場を走り続ける1917年版走れメロスなわけですがその映像のクオリティと仕掛けの見事さに圧倒されっぱなしで映画史に残る一本でしょう。三人称視点オープンワールドゲームから着想したと思われる、常に行く先が巧妙に隠され主人公スコフィールドと同じく観客も画面からヒントを集め状況を把握しながら進んでいく戦場体験。主人公に自分を重ね合わせ「現場」を「体感」する作品なのでヘッドマウントディスプレイで観るのが最高だと思います。「常にどこからか命を狙われてる」感覚に陥るとんでもない戦争映画!

メイキングがめちゃくちゃ面白い。

『ミッドサマー』

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今年、全世界でスウェーデン不信を招いた話題作。皆さんもスウェーデン人に地元の祭りに誘われたら全力で逃げましょう。舞台はスウェーデンの辺境の村ホルガ、そこへ都会から「俺の地元の夏至祭に行かないか」と連れてこられた大学生男女5人。村には他にも同じように連れてこられた若者たちが。そして始まる祝祭ー 山田と上田の出てこないTrickとでも言いましょうか、とにかく救いがない。途中から監督に腹立ってくるくらい救いがない。でもめちゃくちゃ面白い、ホラーが全くダメな俺が「最高だった!」と言ってしまうくらい面白い。舞台のホルガ村へ向かう旅の途中、カメラが天地反転し「現世との価値観の反転」を暗示するシーンからゆっくりゆっくりと侵食し始める悪夢に「気づいたら首まで浸かってる」感をぜひ体感してほしい。最高に面白いけどしばらく見たくないな!

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ミッドサマー観た後だと恐怖しか感じないグリーンダ・カ・ラのCM

『レ・ミゼラブル』

かの有名なユーゴーの「レ・ミゼラブル」と同名の本作に描かれるのはパリの貧困地区に暮らすレ・ミゼラブル(悲惨な人々)。通奏低音のように存在する貧困、格差、人種差別など不条理しかない世界で生まれたときからそれを受け入れざるを得ない人々。冒頭、2018年W杯決勝フランス対クロアチアに熱狂するパリの路上、PSGのシャツを着てエムバペの活躍に熱狂する移民黒人の少年たち。本作を観るとヨーロッパで黒人選手がどう支持され、またはどう差別されているかその一端も垣間見れる。スラム街に暮らす移民たち有色人種と白人警官たちの対立、日常で静かに蓄積されていく憎悪、そして臨界点を越え起きた爆発。ラスト20分の衝動と衝撃、俺の2020年ベストはこの映画。フットボールのシーンは冒頭のW杯やストリートでの試合くらいだけどフットボールファンも見ておいて損はない映画。

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映画冒頭、W杯優勝に沸くパリ凱旋門のシーン

『コロンバス』

モダニズム建築の街コロンバスで高名な建築家の息子ジンと地元の図書館で働く建築に詳しく街の観光ガイドも務めるケイシーが出会い、対照的な二人はたがいの共通項である建築を巡りながら語ることで互いの抱える家族の問題と自分の人生を見つめ直す本作。静かに進むストーリーはもちろん、明らかに人物よりも撮影にこだわってる素晴らしい建築の映像美。建築とミッドセンチュリーのインテリアが好きな人には堪らないシーンばかり。監督が小津安二郎に捧げた、と公言する一本。良作。

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こんな映像の連続です。

『デッド・ドント・ダイ』

ジム・ジャームッシュ御大がジョージ・A・ロメロのナイト・オブ・ザ・リビングデッドをパロディし出演がビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントンと恐ろしく豪華なキャストが文化祭ノリで作った本作。アダム・ドライバーがスターウォーズネタをセルフパロディするわティルダ・スウィントンは日本刀振り回すはやりたい放題。トムウェイツにイギーポップ、RZAなどいつもの面々に加え何を血迷ったかセレーナ・ゴメスまで出演する映画史に残る豪華なB級映画。考えたら負け、ジャームッシュ大先生がこれでもかとかましてくる小ボケを手を叩いて笑いながら観ましょう。ビール2~3本飲みながら観るのが最高におススメ。今日も世界は平和だった。

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ティルダ・スウィントンが日本刀振り回し始めた時点で100点でした。

『燕 Yan』

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生き別れた兄へ父から預かった書類を渡しに、亡き母の生まれた国台湾へ渡った主人公。なぜ母は自分を捨て兄だけ連れ台湾へ渡ったのか、なぜ母は手紙すらくれなかったのか。20数年抱えた思いを胸に主人公は台湾の街を彷徨う。「どこにも居場所のなかった人たち」を描いた本作は、雑多な街頭、路地裏、路上に椅子を並べた安食堂に古いネオン。好きな台湾ばかりだった。山中崇、テイ龍進ら脇を固めるキャストが良かったなー。亡き母役が一青 窈なので歌がメチャうまい。個人的な境遇も重なり心に刺さりまくる映画だった、劇中、唯一出てくるCGシーンだけがいらなかったけど笑

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

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古典をここまで現代の感覚でアレンジできるのかーと驚いた。若草物語なんて児童文学でしょ、と観なかったら勿体ない。現代を生きる女性に自立へのメッセージを突き付けるウーマンエンパワーメント作品でもあると同時に四姉妹それぞれの価値観、時に旧弊的でもあるそれらを否定することなく描き切ります。四姉妹とそれを取り巻く人々を2つの時間軸で同時に描き切る圧巻のドラマがとにかく凄すぎる、なんなんだこれ。超古典作品をラストシーンでメタ的展開に持っていって新たに生まれ変わらせるなんて想像できないだろう。とにかく全く隙のない映画だった。引退して20年経ったレジェンド選手がフットサルに出てきたと思ったら全然技術が錆びついてなかったみたいな驚き。これ合ってるかな??違うか??アカデミー衣装デザイン賞受賞だけあって衣装が凄い!衣装見てるだけで楽しい!

『はちどり』

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パラサイトと同じ年にこのクオリティの映画が出てくるのかよ、とぶっ飛んだ一本。1994年、家父長制の厳しい韓国で暮らす14歳のウニが塾のアルバイト教師を務める女性ヨンジと出会い、変化していく日々を切り取った映画。世界との距離をつかみきれない少女ウニの「言葉の間」と「音」が素晴らしく、劇場で観て良かったなーと心から思った作品。掛け値なしの本物で今年を代表する作品の一つなので未見の方はぜひ。

『WAVES/ウェイブス』

陽キャの兄と陰キャの妹、仲は良いものの対照的な2人の人生がある事件をきっかけに兄の人生は転落し妹には変化が訪れる。家族は傷つき、再生に向け歩みだす。というストーリーなんだけど圧巻なのは登場人物の心象に合わせ画面サイズが変化し(’精神的に追い詰められてる時は画面サイズが狭くなっていき、精神的な枷が外れるシーンはスクリーンフルサイズに拡がる)、ミュージカルのように心象に合わせセレクトされたロック、ヒップホップのプレイリスト(監督が語るプレイリスト)、ただ、音楽はともかく画面サイズは家庭用テレビでどうすんだこれ・・?カラコレで思いっきりチューニングした色彩含め、劇場の良さに振り切った作品。面白かった。

『悪人伝』

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マブリーーー(マ・ドンソクの愛称)!!ドンソク兄貴がビンタを振るうということはそれすなわち最高。パラサイトだ、はちどりだと小難しいこと言ってちゃいけない、ビンタをお見舞いすれば良いのですビンタを。というわけで今回も暴走ビンタ列車のドンソク兄貴、珍しくナイフで刺されたり車にひかれたり出血量多めの文字通り出血大サービスです。しかも今回ははみ出し刑事とドンソク組長のバディものなので全編にわたって誰かが血を流してます。まぁ誰と組もうがやることは暴力なんですけど。ますます磨きのかかったドンソク兄貴の芸術(=ビンタ)、未見の方はぜひチェックしてください。そして映画ファンだけが兄貴を独占するのは心苦しいのでそろそろ日テレさん、大みそか「笑ってはいけない」に兄貴の出演どうですか??山崎邦正の首が一回転するとこ、見たくないですか??

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ブ・チ・コ・ロ・ス・♡

『WAR ウォー!!』

インド2大スター共演スパイアクション。ただの筋肉映画かと思いきやあっと驚く大どんでん返しがあった、、、はずなんだけど全編筋肉とダンスの圧が凄くて予告編見返したけどぜんっぜん思い出せないし多分そんなに重要じゃないです。知力3武力97くらいの映画なので頭空っぽにして観てください、ちなみにかなり面白いです!ウォーー!!

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めちゃくちゃダンスが上手い2大スター(※敵同士)

『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

ジーク、アール、ディックの 3 人は売れないバンド仲間。ある晩、練習と称しガレージに集まりバカ騒ぎをしていたが、あることが原因でディックが突然死んでしまう。誰もが知り合いの小さな田舎町で、驚くべき死の真相が徐々に明らかになっていく。

監督が「高機能性死体を使って無人島から脱出する異色のサバイバルムービー:スイス・アーミーマン」のダニエル・シャイナート監督なので本作も上記の一見まともそうなあらすじとは全然違うダメ人間の祝祭みたいになってます。劇中で明らかになるディックの死因含め、ディックの死を隠蔽しようとするジークとアールの行き当たりばったり加減と想像力の無さは『IQを限界まで下げたファーゴ』としか形容できません。「馬鹿な友達と一緒の時に死ぬのは絶対に避けような」と心から思える一本、観ながら何度も頭を抱えそうになります。

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こういう映画です。


『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

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成績優秀な優等生(ブックスマート=ガリ勉)であることを誇っていた親友同士のエイミーとモリー。しかし、卒業前夜、遊んでばかりいたはずの同級生もハイレベルな進路を歩むことを知り自信喪失。二人は失った時間を取り戻すべく卒業パーティーに乗り込むことを決意する。果たして、二人を待ち受ける怒涛の一夜の冒険とは?という本作。とにかくこの主人公の2人、エイミーとモリーが最高で、お世辞にもイケてるとはいえない2人がパーティーに行く服を選ぶシーンで「どこの美人かと思ったわ!!!!」「なんで今まであなたに誰も気づかなかったの!?」みたいにお互いを本気でめちゃくちゃ褒めあうんですね。自分を否定しない、お互いを肯定しあえる友達って最高だなと思う一本です。劇中、2人が衝突し仲違いするシーンがありますがそれも青春のスパイス。全てが優しく、笑えて泣ける最高の映画です。上映後、映画館のロビーで親友同士で観に来たと思われる20代前半の女の子2人が涙を流しながら無言で抱き合ってて、それを見てたおじさんは「すげぇいいな」と心から思いそのシーンが一番泣きそうになりました。特に10代~20代女子は忘れられない一本になるんじゃないかな。ぜひあなたの最高の親友と一緒に観てくださいね。孤独なおじさんは、なるべく強い酒を飲め。

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「自分を卑下しない」って最高の魅力だと思う一本。


『mid90s』

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90年代半ばのロサンゼルス。13歳のスティーヴィーは兄のイアン、⺟のダブニーと暮らしている。⼩柄なスティーヴィーは⼒の強い兄に全く⻭が⽴たず、早く⼤きくなって彼を⾒返してやりたいと願っていた。そんなある⽇、街のスケートボード・ショップを訪れたスティーヴィーは、店に出⼊りする少年たちと知り合う。彼らは驚くほど⾃由でかっこよく、スティーヴィーは憧れのような気持ちで、そのグループに近付こうとするが…。

年上の悪い友達、初めてのバイク、初めてのタバコ、初めての酒、初めて聴く音楽、初めてのクラブ、初めてのセックス、夜通し遊んで公園で見た朝陽、知らない部屋で迎えた朝。形や場所は違っても10代のころ誰もが過ごしてきたそんな日々に捧げられた青春映画。全てが詰まったラストシーン、そこで観客はこれが「もう戻らない日々への追憶」だと気付かされます。これは僕たちにとっての「ニューシネマパラダイス」だった。超絶おススメです。ちなみに本作が初監督のジョナ・ヒルの妹はなんとこの前で紹介した「ブックスマート」主演のビーニー・フェルドスタイン!凄い兄妹だ。



『もう終わりにしよう。』

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マルコヴィッチの穴のカウフマン監督のネットフリックス映画。10分以上も場面転換がなく退屈なシーンが続いたり、途中から登場人物が若返ったり急激に老化したり会話がチグハグになったり「あー難解ぶった心象風景アート系かよー」と途中ちょっと飛ばしたりしながら観てたんですけど、ラスト20分くらいでこの映画の「仕掛け」に気付いた時、全てのズレたパズルが一瞬で綺麗にハマり一気に汗かいた!カウフマンすげぇぇぇぇぇ!!ネタバレしてもしょうがないので興味ある方はぜひネットフリックスで!最初の1時間以上は我慢して観てくれ!!!!

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序盤、雪のドライブでの本当につまらない会話が10分以上続いた時は心底「もう終わりにしてくれよ」と思った。


『TENET』

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クリストファー・ノーラン先生待望の新作。難解!と言われた時間逆行・順行を組み合わせた本作、鑑賞後「???」と顔に浮かべながら劇場を後にする観客が多かったんですけど映画ってそんなに仕掛けを理解する必要ありますかね?「すげーー!!時間巻き戻ってアクションかっけー!人類救われてよかった!」じゃダメなのかなーと思いましたし、たぶんノーラン先生も本作で一番やりたかったのは空港ビルに突っ込むボーイング747なんじゃないかな・・

ミニチュアを作ったりCGを制作するためのセットを一から作ることを考えればね。計算してみると、実際に飛行機を買った方が安くて効率がいいことに気づきました。まず最初に (購入した飛行機の) エンジンを外して売ったんです。飛行機のエンジンはかなり高価なものなので、それでかなりの額を取り戻すことができました。
(virtualgorillaplus.com クリストファー・ノーランインタビューより引用)

↑まともそうなこと言って自己弁護してますが飛行機を空港に突っ込ませたくて言い訳を色々考えただけです。CGを嫌い、実物で撮影することにこだわるノーラン先生が今後「次はコロニー落としされる地球撮りたい!」とか言い出さないことを祈るばかりです。作品に隠されたテーマとかもあるんですけどそういうのはいいので、ひとまずノーラン先生が撮りたかった映像を楽しむべき本作、実物にこだわる先生の最高のこだわりがこちらエリザベス・デビッキ!!!!!

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「美の結晶」「動く世界遺産」エリザベス・デビッキがアクションする、それだけで観る価値がある。


『ミッドナイトスワン』

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凪沙は故郷の広島を離れ、東京・新宿を舞台に生きている。あるきっかけで親戚から預かった一人の少女と暮らすことになってしまった。母から愛を注がれずに生きてきた少女、一果と出会ったことにより孤独の中で生きてきた凪沙の心にいままでにない感情が芽生える。一人生きてきた少女との出会い、自らの“性”の葛藤、実感した事の無かった“母性”の自覚を描く軌跡の物語。

というあらすじ紹介ですが、「トランスジェンダーの物語」「母性の映画」などと紹介されがちなこと、それに対する批判も含めて誤解の多い映画だと思います。この映画はハナっからトランスジェンダーを真正面から描こうなどとは思っていない。真正面から描いてるのはあくまでも草彅剛演じる凪沙だけ。凪沙は母になりたかったのでも女になりたかったのでもなく、ただ自分の人生を賭けて「分かり合える相手を求め続けた」だけだったしそれは映画の登場人物全てに当てはまる。孤独を抱える全ての人に捧げられた本作、草彅剛に圧倒されっぱなしだった。おススメ!

『鵞鳥湖の夜』

追われる男、助ける女。未舗装の道路、乱雑な安食堂、現代と旧来が混在する中国の地方都市で繰り広げられる中国ノワールの佳作!バイク窃盗を資金源とするチンピラの逃亡劇が独特の映像美で描き出されていて、いつまでもシーンが脳裏に焼き付いてる。劇中に出てくる中国飯が美味そうで観終わった後中国料理食べに行ったのと、タイトルが読めなくて窓口で「読み方がわからない映画1枚」「がちょうこです・・」「ダチョウ?」「がちょう・・」というやり取りをした思い出の一本。良かった。

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安食堂のよくわからん麺。美味そうだった。

『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』

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パラサイトと同じくこれもまた格差を描いた映画だけど違うのは、その中で人生に何を求め自分に何を求め、他人に何を与えそしてどう生きるか。主人公2人がサンフランシスコの街をスケートボードでクルージングするシーンは2020年を象徴するベストシーンじゃないだろうか。多くを語るのも野暮な映画なので興味のある方はぜひ。

『佐々木、イン、マイマイン』

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佐々木という名の青春、佐々木という名の煌めき、佐々木という名の焦燥、佐々木という名の孤独、佐々木という名の別れ。
誰にでもある「あの頃」を描いたアフター青春の一本で、20年代の「キッズ・リターン」かもしれない。最近は「なんか面白い映画あった?」と聞かれたら必ずこれを挙げてる。『mid90s』が「あの頃」を消化した一本だとしたら『佐々木』は今なお胸で疼く「あの頃」と向き合うための一本かもしれない。一部で「追い佐々木」なる言葉も生まれるほどリピーターが出た『佐々木、イン、マイマイン』、今年この映画があってよかった。

King Gnu井口理の「地方都市のパチ屋にいるいる」感が凄い!

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この顔はミリゴに台パンする顔。

『燃ゆる女の肖像』

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18世紀フランス、貴族令嬢と彼女の肖像を描く女性画家の恋。

いやーーーフランス映画らしく抑揚のないシーンの連続で一瞬眠くなったりするんだけどこれがとんでもない傑作!!西洋画のカンヴァスをそのままスクリーンに落とし込んだ映像と、俳優陣の目で語る演技。この映画はもはや西洋画として美術館に収蔵すべきでは??中世西洋画の「ろうそくの灯りに照らされた世界」をスクリーンで再現する映像は圧巻。ラストシーンが話題だけど、俺が好きなのは村祭りのシーン。瞬きも勿体ないくらい美しい。ちなみにそのシーンがこのメインヴィジュアルで、本当に燃ゆる女になります(物理)。

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これも美しいモチーフ


終わり

はい、いかがだったでしょうか!ちょっと飛ばした映画もあるけどだいたいこれが2020年に観た新作映画です!現在12月31日(木)の13時、2021年はマジで一本観たらキチンと記録していきたい、頼むぞ俺。「クイズ!正解は1年後」も我慢し10時間くらいかけて書いたので最後まで読んでくれてサンキュー、サンキューな!それではよいお年を!!

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