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びっくりの試着(スパルタ編)

すっぱいぶどう

あきやさんの2回目の講演会の課題の一つ、「びっくりの試着」。
正直ハードルが高かった。
たくさんの自問自答ガールズたちが着々と課題をこなす中、私には荷が重いな……と、見なかったことにしようとしていた。
中学の頃、そうやって夏休みの宿題を有耶無耶の内に葬っていたもので(提出してないことは微塵も感じさせず、当然すでに提出済みですけど何か?みたいな態度でやり過ごす能力に長けていたのです)。
今回も、ま、まぁ課題っていっても必須じゃないですし? 私まだ講座も教室も現地講演会も参加していないので? きっとあのぶどうは酸っぱいですし?! ……なんて言い訳連発して不誠実にやり過ごす気配が濃厚だった。
一方でガールズのありのままの言葉のひとつひとつを読んでいたら、そんなんでいいのかお前?!と己を叱咤する自分がムクムクと湧いてきたのです。
ならばもう、これは逃げ場をなくすしかないな、と思った。
私の「いつか行こう」が実現する日はそうそう来ない。
母がよく言ったものだ、「今度とお化けは出たこと無い」、その通り。
これまでどれだけの酸っぱいぶどうで願望を封じてきたかわからない。
本当はもういい加減やめたいんだろ、と自供を促す渋めのベテラン刑事さんが肩を叩く。
ううぅそうなんです、いい年こいて自分に言い訳するのはやめたいし、面倒って言葉で雑に片付けて本当の気持ちを何度も殺してしまっていたんです……えぇ……間違いなく私がやりました。

だから、私は試着会に申し込んだ。

(ヨルシカの「僕は音楽をやめた」風に)
勢いだった。
あるときTwitterのTLに素敵なワンピースが降り立った。以前も気になったブランドだ。
リンクに飛んだ。試着会が渋谷であるらしい。渋谷は定期券の範囲内なので断然行ける。常設の店舗はないらしい。ふぅん試着会かぁ……。
シックな刺繍ドレスに惹かれた。コンセプトとはたぶんかけ離れている。でも気になる。とりあえず紹介記事にあがっていた写真を全部見よう。刺繍モノ以外もあるらしい。ターコイズブルーのセーター素敵じゃないの。へぇシンプルなワンピースもあるのか……。
と、隈なくチェックしていたら、あ、これ着る。というブラウスに出会った。
気づいたら画像を長押ししてツイートしていた。

商品名も価格も情報が載っていなかったから、公式サイトへ飛んだ。
素敵なコートと新作ドレスの画像が並んでいた。
試着会の申込みもそこからできた。けれどあのブラウスの情報はどこにもなかった。
写真すら見当たらない。え、FashionPressでしか見られないとかアリ?通販にはない。アーカイブにもない。23春夏のラインナップにもない。どゆこと?
この謎を解き明かすべく、私は試着会の申し込みを行った……

などと川口浩探検隊風に茶化しているが完全に勢いだ。普段の私にはないやつ。カッとなってやった。後悔は……直前に押し寄せてきた。
申込みのリターンメールに燦然と輝く文言。
「キャンセル手続きなく当日お越しいただけない場合は次回からご予約をお断りさせていただきます」
要するにブラックリストに載ると。そりゃそうだ。
そもそも私は試着が苦手だ。断然苦手だ。
のこのこと申し込んだけど、試着会ってナニ??どんな空間なのかまったくわからないんですけど!!
あきやさんがnoteかスキップスキップレディオである試着会のことに触れてらしたけど、あれは服飾関係者の特権的イベントなのでは???
博物館の内覧会なら行ったことあるけど、あれは招待だったし、それなりに専門性を身につけているジャンルだったから気後れしなかったのであって、ファッションはだから私にとっては苦手ジャンルなのであって、え、私ここのお洋服、サイズ的に大丈夫なの?? やっべえやつが来たよ……とかなんない? 一人で行くんだよね、私。場違い感半端なかったときに誰が助けてくれるの? 何も着られずすごすご帰ることになるんじゃないの。きゃ、キャンセルっていつまでなら効くんだっけ?
パニックである。(顔は平静)
私なんか、という言葉なんぞ使いたくはないが、いたし方ない場合もあろう。と、めちゃくちゃナーバスになった。
が、これこそ「びっくりの試着」の場なのではなかろうか。
逃げ場をなくすってこういうことでは?
まぁ初心者にしてはいきなりハードモードでの無謀な挑戦なのだが、これで課題をこなせるではないか。
まぁね、あきやさんからの課題だし、と責任を押し付けて軽いのか重いのか判然としない足取りで、渋谷ストリームから代官山方向へ初めて足を伸ばした。

いざ行け無敵のふふふふふふふふーん

前置きが長いが、私は無事に試着会の場にたどり着いた。雑居ビルの5階。同じタイミングでエレベーターに乗り合わせた母子らしき方たちに続いて会場に入った。
緊張していたが、挨拶はちゃんとした。ええ、実は体育会系気質なので。自分、自問自答ファッション部なんで!押忍!(いや、実際はそんなんじゃないっすよ、もちろん)
スタッフの方たちは、当たり前だが皆さんそこのお洋服をお召しだ。
HPで見たやつが目の前にある。素晴らしい。
そしてちゃんと見つけることができた。
一目惚れしたリボンタイつきの半袖ブラウス。春夏の新作だったのだ。
思った以上に素敵なつくりで、もうこれはぜったい試着する!と心に決めた。
それから一通りすべての服を見て回り、もう一度ブラウスに戻り鏡の前で合わせたりしていたら、絶妙なタイミングでスタッフの方が声をかけてくださった。
お話しているうちに、スカートも試してみたくなって追加をお願いした(!)。
試着ブースが混み合っていたので、待つ間コラボ企画のペイント体験を先にやらせてもらった。
使われなくなったコスメから生まれた"SminkArt"、ミニキャンバスを自由にペイントするという企画。お絵描きがものすごーーーく苦手な私でも、なんとなく素敵な作品になった気がするから不思議。

それよりいただいた端切れというにはあまりに美しい左を見てほしい

風と水をイメージしながら塗ってたけど、これはどんな深層心理なんだろう。乾くとラメが強調されて、思ったよりも気に入ったものができたのは嬉しかったな。
このときいただいたチャイもスパイスがよく効いててとっても美味しかったです。
お察しの通り、すでにすっかり試着会に魅せられております。居心地最高。

私にだって試着はできるテンションMax

まずはブラウス。これがもうびっくりじゃなくて、完全にしっくりだったのがほんっっとーに嬉しかった。これは買うと即確信。これで夏の制服つくるわよ!!
別のスタッフの方がすかさず声をかけてくださったので、率直に感動をお伝えした。
これを着て仕事している自分が明確に思い浮かんだ。羽織ものとしてもめちゃくちゃいい。軽やかでひらっとする感じがたまらないし、光沢感もすごく素敵。一番上のボタンだけディテールが違うのもたまらない。そういうのに弱いよね、私。
たっくさん褒めてもらってウッキウキで刺繍スカートへお召し替え。これがまたとってもしっくりきたものだからびっくりした。めちゃくちゃスタイルがよく見える。そういう類の服があることは噂には聞いていたけど、自分には無縁だと思っていた。調子に乗ってウエスト強調した写真まで取った。こんなの目に焼きつけるしかないってくらい異次元だった。
これまたいっぱい褒めてもらって、もう満足!!という気持ちで、こちら2点お買い上げ〜〜で、もう帰るか、と思ったのだけど、あれ?私これでホントに帰っていいのか??
しっくりばっかりで、びっくりがない。いや、びっくりはしているんだけど、手堅く試着を終えて満足していやしないだろうか?
今回の目的はびっくり……すなわち自分では選ばないようなやつにチャレンジすることじゃないのか?それをしにきたんじゃないの??

このまま帰ってよいものか

そしてふと気づいたのだ。
試着会は試着のための空間だから、必ずしも着たものすべてを買うことが前提ではないのだ。だから、ちょっと着てみようかな……程度の気持ちでも気軽にとっかえひっかえ試すことができる。現に隣のカップルは何巡も試着室を出入りし、全部のドレスを試すくらいの勢いだった。素敵だった。
私はドレスを着ずには帰れない!!
そして脳内あきやさんが「試着しましょう!」と力強く背中を押してくれた。
あきやさんが言うならしょうがない。自分、これでも自問自答ガールズ名乗らせてもらってるんで。本当にありがとうございました、あきやさん。

で、着ました。
思ったより似合わなくないな、というのが収穫。カソックとかストラの厳かな雰囲気があって、式典服としては最高かもしれない。
しきりに結婚式のときにオススメですよ〜〜と言われたけど、結婚式に出席する予定はまったくないんですよ、友だち少ないので……とは言えませんでした。はい。
総レースの方も着てみて、切り替えがボレロみたいでカワイイ〜〜とはしゃげるくらいにはがっかりしなかったけど、やっぱりそれを着ている自分の姿が思い描けなかったんですよね。
こういう服も着られるんだ、という経験値を得たのはとってもよかったです。
これでおもいのこしたことはない!!
ということで、先に試着した2点の支払いをし、私は会場をあとにしたのでした。ちゃんちゃん。

びっくりの試着(やさしさに包まれたなら編)

振り返ってみて、ほんっっっと〜〜に行ってよかった。それに尽きる。
服の素晴らしさ、スタッフの方のホスピタリティは勿論のこと、この歳になってもまだ新しい体験ができるんだ、しかも自分の選択で、という感動がじわじわと効いています。
渋谷駅に向かう道すがらちょっと気になるお店にふらっとそのまま軽やかに入店したのも、なんかこう、いつもの私だったらできなかったことかもしれない。
けど、できたんですよね。
やってみたいにストッパーをかける要素は色々あるけど、その最たるものは自分なんだなと痛感しました。
そして、断然やってみたほうが楽しい。やってみちゃった自分のことが可愛くていとしいのです。やらかしちゃった後悔も愛してみせようじゃないか。

逃げ場のないところに自分を追い込んでのびっくり試着スパルタ編、のつもりだったけど、むしろ世界はこんなにもやさしかった編、の間違いだったようです。
打ちのめされた時用に、回復の魔法をかけるためのカフェをいくつかピックアップしていたんだけど、まったくの杞憂でした。
チャイもいただいたのでカフェいらずだったしね!
でもこれってほんとにびっくりの試着なのかな? ま、いっか!
課題を勝手に解釈して取り組むのはよくあることだしね!!!

さて、試着に関する次の課題は、「買わないという選択」なのですが、これについてもちゃんと向き合わなきゃなんだよなぁ。

最後にこっそり試着写真。
はしゃいでるんで、なにとぞご寛恕くださいませませ。

左、詐欺ってくらいスタイルよく撮れてる(笑)

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