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渾身も、弛緩も。/ミュージックビデオ「脱力」に寄せて

「誰かがその人の人生をかけて生み出した表現は、他の誰にも評価できない。誰にも評価する資格はない。しかし、その表現を好きか嫌いかは言える。私はその感覚に信を置く」という表明をした、3年前の自作曲「渾身」。

「渾身」を聴き返すうちに、そうは言っても、人は常に100%の本気では生きられないよな。という思いが湧いてきた。遊ぶことも大切。張りつめた精神を緩めてやることも大切。そうしないと壊れてしまう。

「渾身」の対の曲も書きたい。
渾身も、弛緩も、人としてどちらも素敵。どちらも持っていたい。二つは表裏一体。そう考えることに矛盾はない。

緩めた体、緩めた脳。弛緩。軽く、楽にいこう。
今日は書けそうな気がした。そんな精神状態だった。

書きかけの曲のスケッチを何枚か眺めて、このアイデアを選択。ほんの一部、自己模倣的な和音が気になる。ここだけは少し直したい。ギターで新しい旋律を探しながら、歌詞の素材を書き留めた。
この段階で準備は終わり。曲構成は固めない。決めない。

どうなるのか。私自身にもこの曲の着地点は分からない。
不確定要素。それが喜びを生むための余白。その状態で録音に入った。

即興音日記の148曲目。この歌詞の内容からしても、多重録音はせずに、録音もこの一回きりが適している。弾き歌いながら次をどうしようか考えている。それが見える。けれども、やり直しは一切なし。

これが147曲目だと勘違いしてミュージックビデオを作ってしまった。これも直さないでおく。

■「脱力」録音データ
即興音日記#148「脱力」
フジサキヒロカズ:曲・詞・ギター・声・ミュージックビデオ制作
2022年2月13日 自宅録音
3分05秒


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