【高い理想。硬い内臓。】

そのひとは、
やわらかいひとではないようだ。

硬直しているように見えてしまうその信念。
偏っているように見えてしまうその行動。
そのひとは、硬直し、偏って生きることを望んでいるのだろうか。

そのひとに、硬く偏って生きたいのですかと問えば、いや、実はそうではないのだと泣きながら答えるかも知れない。

かたいひとは、じつはやわらかいひとになりたい。

「人は変われる」は真。
「人はそう容易くは変われない」も真。
このふたつの真実は、かたいひとが出会う苦しみと喜び。

かたいひとは、やわらかいひとになりたい。
しかし、やわらかいひととて、変われる/変われない、このふたつの真実があるのは同じこと。

太陽が落ちたあと、外の明かりだけを頼りに歌った即興の新曲「かたいひと」。
弾き歌いをしながら、部屋の闇と外の闇が繋がって、境目が消えたその中に、私の存在が溶けていくような優しさを感じていた。
暗闇は好きだ。暗闇礼讃。

解像度の低さ、粗さ。
暗闇の中で撮ったこの映像の解像度は著しく低い。ぼやけているそれは、人の曖昧さを連想させる。

曖昧さは、人の信念と行動の、硬さと柔らかさのあいだにあって、苦しみと喜びの両方の輪郭をぼやかすことができる。
曖昧さは、眉間に寄った厳しい皺を和らげることができる。
曖昧さは、硬い内臓のこわばりを解きほぐすことができる。

だからこの曖昧さは、曖昧なままで存在しても良いのかも知れないと思う。

一年前に書いた「即興音日記#127 かたいひと」を聴き返しながら。
https://youtu.be/vSajaYc0trM

 
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アルバム『音楽と非音楽のあいだ=日常』を3月に配信リリース&CDリリースしました。
私が書いた11曲を収録、37分。全曲無料で聴いていただけます。ご自身の音楽環境によってプラットフォームを自由に選んでいただけますが、YouTube Music が聴き勝手が良いようです。
もしよろしければ、お耳をお貸しください。
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