見出し画像

「サバイバー」と「逃げ切り隊」〜【長時間労働の是正】にブレーキをかける者たち〜

 教員の「長時間労働の是正」に向けた中教審・特別部会の審議内容については、「不十分」「本格的に議論を深める必要がある」との批判が集まっている。

 しかし、「長時間労働の是正」に向けた取組が「不十分」で、「本格的に議論を深める必要がある」のは、一部の学校現場についても同様だろう。特に現職の校長のなかには、この問題に対して十分に向き合おうとしていない者がいると言わざるを得ない。

 そうした校長のなかに多いのは、自分自身が「長時間労働」を乗り越えて、学校運営・授業研究・部活動などで実績を残してきたというタイプである。このタイプの校長が異口同音に話すのは、次のような内容だ。

「子育てと仕事の両立は大変だったけれど、私はそれを乗り越えてきた」
「苦しかったけれども、そこにはやりがいと学びがあった」
「私ができたのだから、あなたたちにもできるはずだ。いや、やったほうがいい」

 しかし、これは一種の「生存者バイアス」に過ぎないのではないだろうか。

 この校長たちは、「長時間労働」からの「サバイバー」だと言えよう。だが、それは20年前だからできたことで、今では難しいことかもしれない。また、配偶者や実家からの強力なサポートがあったことを本人が自覚していないだけなのかもしれないのだ。

 こうした「サバイバー」には、
(自分は運がよかっただけなのかもしれない)
 という視点が抜け落ちてしまいがちである。


 もう一つのタイプは、現状維持を第一に考えて「長時間労働の是正」のために何かを止めたり縮小したりすることを躊躇する校長たちである。

 これまでの取組を止めたり縮小したりすることによって、教育活動の質が低下したり、学校の安定性に影響を及ぼしたりすることを懸念しているのだ。そもそも、何かを変えようとするよりも現状維持のほうが確実だし楽なのである。

 悪く言えば、教員の「長時間労働」には目をつぶって、自分が転勤か定年退職するまでは現状維持のままで逃げ切りたいのだ。このタイプの校長たちを「逃げ切り隊」と名付けたい。

 ・・・こうした校長の「本音」について、私自身の経験も踏まえて書いたのが次の記事である。

 このような「サバイバー」や「逃げ切り隊」がいると、その学校における「長時間労働の是正」は遅々として進まないことだろう。

 ・・・さらに質(たち)が悪いのは、こうした「サバイバー」や「逃げ切り隊」のメンバーにはその自覚がなく、
「それなりには『長時間労働の是正』に取り組んでいる」
 と思い込んでいることなのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?