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キーホルダー

 母は3年前に亡くなった。

 実家で遺品の整理をしていると、母の財布の中から古いキーホルダーが出てきた。
 直径1センチほどの太鼓型のキーホルダー。その片面には華厳の滝が、反対側には陽明門が描かれている。
 それは今から50年ほど前、私が小学校6年生のとき、日光へ修学旅行に行った際のお土産として母に渡したものだった。
 キーホルダーの中には小さな鈴が入っていて、叩くと音が鳴った。

 小さい頃は母に甘えていた私も、思春期になるとその存在を疎ましく思うようになり、話しかけられても、ぶっきらぼうな返事しかしていなかったように思う。
 もしかすると母は、財布の中から聞こえてくる鈴の音で、息子との絆を確かめていたのかもしれない。

 今、そのキーホルダーは私の財布の中にある。

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