さかなの読書記録【2020.05】

そらとぶさかなです。
今月も自粛の月でした。行ったことのないお店がテイクアウトを始めたのでせっかくだしと買ってみたり、オンライン飲み会で飲み過ぎたりしながら暮らしていました。
5月下旬になると休業していた近所のお店が再開したり、日本人観光客がちょこーっとだけ戻ってきた感じでした。全体的になんとなく「さて6月からどうしよう?」「そろそろ外出ていい?」というソワソワした空気があったように思います。

創作の方はなんとなく「今書いてる場合なのかなあ」と思ってしまって、どちらかというと小説の勉強に集中(逃避?)していました。でもどういう理由であれ勉強した事は無駄にならない気がします。
あと、イベントではテキレボEXが開催されていましたね。お祭りのような盛り上がりに圧倒されつつ、気になっていた本が買えたので良かったです。テキレボはこの明るさというか賑わい感が素敵だと思います。

さて、今月は5冊でした。
書いていないですが読みかけて積んでる本もあったりしています。カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」など。面白いのですが長い…!
今月もいつも通り、本の情報とひとこと感想です。(ひとことに収まってないですが…)

■砥上裕將「線は、僕を描く」
…読む前は「メフィスト受賞…才能の塊…まぶしすぎる…!」と卑屈な心のせいでだいぶためらってたのですが、どうしても面白そうすぎたので読んだところ、数ページでこれは好きだ…となりました。(単純)
ストーリーも文章も非常に優しくて丁寧な感じです。何かに陽光が当たってまぶしいような白さ。飾らない文章がテーマによく合っている気がします。心の箱の表現はめっちゃ共感してしまう。オススメの作品です。
あと受賞時からの改題が完璧だと感じました。このタイトルすごくいいと思います。

■小川洋子「妊娠カレンダー」
…小川洋子さんが物凄く好きです。小川さんの作品には、救いのないつらいお話も多いと(勝手に)思っているのですが、この作品はそうだろうな…と思ってこれまで読むのをためらってました(またか)
結局はどちらにも当てはまるようなお話だった感じがします。女性の変質と、それにかかわる者たちの感情を凄くくっきりと描いている感じがする。ラストは終わりの始まりのような気もする。
食べる描写がたくさん出るのですが、生々しいという感じではなく、本当よりも誇張して本当らしい、という感じがするのが面白かった。

■今村夏子「むらさきのスカートの女」
…ひたすら怖かった。ふつうでまともな人間が、ある社会の中に入ってしまえば、どうしようもなくおかしな人にさせられていってしまうみたいな…とにかく怖かったです。あと、むらさきのスカートの女以上に、主人公の恐ろしさがだんだんわかってくる。
ぐぐってみたら解釈として「実はむらさきのスカートの女は主人公の妄想ではないか」というのがあって、面白い見方だなあと感じました。
個人的には「こちらあみ子」がめっちゃ共感できる話だったので、今作は少し雰囲気が違うなあと感じました。

この辺で「きらくに明るい話が読みたい…」となったので、ここできらくなラノベを。(そこまで明るい訳でも無いけれど)

■西条陽「天地の狭間のランダム・ウォーカー」
…一作ずつは中編くらいのボリュームなんですけど、そんな短めの中で非常にうま~く構成してインパクトのある展開にしてるのと、主役コンビのキャラが良いのが本当に好きです。そして最終話の過去編が、こう胸に迫るような感じがあってとても良かった。
シリーズ全体としてそうですが、こういう作品には珍しく、西洋っぽい雰囲気だけじゃなくて和物やアジアンな世界もしっかり描かれているのが凄いなあと思います。
シリーズいったん最終巻だそうで悲しい。じゃあなんで発売してすぐ読んで読者アンケートも送ってないのかと問い詰められたらつらいのですが…。有名なレーベルの好きなシリーズは自動的に永遠に続くもの、という先入観があるようです。せめて番外編とか出ないかな…二人のセントラルでの日常とか…!

■向田邦子「思い出トランプ」
…直木賞受賞作が入った短編集。テンポの良い文章で、短い作品のなかに巧妙に人生が描き出されているのを感じました。人生の悲哀、やるせなさ、男女の分かり合えなさ等。とてもつらい。悲しくなってくる。夕焼けのような印象。年を取ってから読んだら印象が変わるような気がします。
短いのに密度が濃いのが凄いです。ストーリーはそんなに無くて、情景をつなぎ合わせるような感じですが、そんな発想があるのか…と驚く事ばかり。個人的には「かわうそ」が、うすら寒くなる切なさがあって特に印象的でした。

そんな感じです。
なぜか最近、暗かったり重かったりする本を選びがちで、読書しては気が滅入ってばかりなので、明るくて気楽でギャグもあって楽しい本も同じぐらい読みたいですね…。オススメがあればぜひ教えてください。
六月は少しずつまた小説を書いていきたいと思います。新刊作らないと…!


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