川西拓実という波に呑まれた話

映画「バジーノイズ」観てきました。感想と、JO1の川西拓実くんについて。
全然まとまっていないけどいまここにある感情のことを残しておきたくて。
だからあえて、原作の漫画も映画のパンフレットも見ずに、映画を見たこの心だけでこれを書いています。

※映画の内容に触れている部分もあったりするのでネタバレ注意です。

いま、映画を観終わって興奮冷めやらぬ、も通り過ぎて一息ついている。

ふと思ったのは、清澄がかつての初ライブから逃げて、生活や人間関係や、そんなすべてからも逃げた先で、それでも手元に残していたものが音楽で良かった、ということ。
不器用だからこそそれしか残せなかったのかも、とか、いや、逆にそれを残すためにほかのすべてを排除したのか、とか、いろいろ考えていた。或いは清澄の中の一番底にあったものは最初から音楽だけで、それまで清澄を覆い囲んでいたものがあの初ライブの一件ですべて剥がれ落ちただけだったのかも。
なんにせよ、清澄がたったひとつ縋りつき、手に残すものとして選択したのが音楽でよかった、と思った。
清澄が音楽のことを呼吸と同等に思っているであろうことが垣間見えるシーンがたくさんあって、わたしは映画館のシートに座っている間じゅう、そのときどきの清澄の異様な気迫とか、純粋な心のきれいさとか、そういうものに惹かれつづけていた。

冒頭で一息ついて云々と書いていたけれど、余韻にはまだ浸っているし、清澄へのクソデカ感情に狂っているあいだのほうが記憶が鮮明で、あのとき映画館で感じたままの気持ちを残しておけるような気がして、結構焦りながら書いている。

「バジーノイズ」に出てくる登場人物は、才能を持つ者、持たない者、
自分にとってのたったひとつだけの「何か」を持つ者、持たない者、
に分かれていると思った。その対比が緻密に描かれていて、たとえば清澄とマザーズデイの洋介。たとえば清澄と潮。

清澄は、すべてを持っている側の人間なんだろう。
岬さんが言っていたように、世界が放っておかない作曲家なんだろう。
清澄が手掛けた楽曲でアーティストが有名になったり、AZURの初CDの注文が次々と来たり。
清澄を見ていると、音楽とは本当に「音を楽しむ」ことだなあと思う。
陸さんと初めて合わせて演奏したシーンを見て、ちょっと泣きそうになった。心から楽しいと思っている清澄の感情が伝わってきてめちゃくちゃよかった。

それ以上に、“才能“とは残酷なほど鮮烈な眩しさを孕んだものだなあとも思う。
清澄は才能の塊なのだ。他人と深く関われない、かかわって傷つけたり、傷ついたりすることをおそれているのがつよく見える。そんな清澄の生きづらさに寄り添いつづけたのが音楽で、レコード会社の防音室?に籠っていたときの清澄の雰囲気がそれを物語っているように感じた。

音楽は、清澄にとって不可侵領域だったんだと思う。
自分の中ですべてが完結されていて、そこに他人が入ることを許さない。他者からの評価も称賛も、きっと清澄には必要のないものだった。他者によって決めつけられた枠組みや価値観に自分の音楽が押し込められること、他者の意見が自分の領域に入り込むことに嫌悪感を抱く清澄、シンプルにめちゃくちゃ好きだと思った。そのひりついた清澄の感情で、一気にこの世界観に惹きこまれたので。

清澄がひとりで作り続けてきた音楽は、清澄だけが触れることのできる閉ざされた場所で鳴り続けていた。でも、その不可侵領域を打ち破って入ってきたのが潮だった。

“違うカタチだって 開けられないって 決めつけてた”
“閉め切っていた その心の 鍵がなぜか ほら ここにもあるよ”
──清澄「surge」

(清澄にとって潮があたらしい世界への入り口を作ってくれた存在だったように、終わりがけの、潮の生活が変わったシーンを見て、潮にとっても清澄があたらしい場所へすすむきっかけになったんだな、と思えたのがよかった。)

最後、あの防音室で潮が椅子でドアの鍵を壊そうとして、「今度はそっちから出てきてよ」って言うシーン。作ってる曲の音量を上げても上げても、しんと静かなはずのドアの外の3人の声が、心の声が、”うるさくて”騒がしかったんだろうなあ。そっちのほうがおおきく聴こえたんだろうね。だから清澄はドアを自分で開けて出てきた。最初のフライパンでガラス窓叩き割るところといい、天岩戸の話みたいでよかった。最後の最後にタイトルが出るのもすきだったけど、個人的にはこのタイトル回収はあのシーンだったんだろうなぁ、って思った。

たったひとつの何か。それさえ手の中にあれば、呼吸だって生活だって、ままならないものがなんとかなる。その感覚にすごく共感した。それさえあれば。だからそれを航太郎に否定というか、こうだろって決めつけられたときに拒絶したんだろうな。自分にとってそれは、唯一で、居場所で、自分のいる位置をたしかめるポラリスで、心臓だからね。だれかに侵されたくないよね。そういう、擦り切れるようないのちの瞬きが、うつくしくて、清澄の不安定な部分がめちゃくちゃささった。

ところで、話は変わって。清澄を演じているJO1の川西拓実くんを知ったのは、本当につい最近のことだった。JO1というグループについては名前とお顔が一致するかも、紅白に出ていてラポネ所属でINIの先輩。。。くらいの知識量で、気にはなっていたのだけれど何せINIの推し活に必死でこれ以上沼を増やすわけには、と躊躇っていた時期があった。非常にもったいないことをしたと思う。もっと早く推していたかった。JO1自体には今年の4月の始めくらいから徐々に沼落ちしはじめて、川尻蓮くんの魅力に惹かれ引っ張られ、完全に沼落ちしたあと、グループを知っていくうちにみんな可愛くてかっこよくて、これは沼が深すぎるということに気づいたけれどもう抜け出せず、推しを定められないままyoutubeの動画を見続けていた。川西拓実くんにハマるきっかけは何だったか、そうだ、「HAPPY UNBIRTHDAY」の作詞作曲をしたのが彼だと知ったとき、衝撃を受けたのがおそらく沼の始まり。めちゃくちゃ好きな曲調で、え、本当に川西拓実くんが作ったの? マジ? から、彼の音楽のセンスに心を奪われまくった。あと、はっきりとした顔立ちがシンプルにめちゃくちゃ好みでした。それで、わたし自身が推しの価値観とかをすごく知りたいタイプのオタクなので、彼の音楽性も含めて、川西拓実くんはどんな人なんだろう、どういう考え方をする人なんだろう、と気になって気になって、気づいたら調べ始めていた。

surgeが公開されてすぐに聴いた。映画を観るかどうか、まだ迷っていた。でも、映画が公開されてからSNSのタイムラインに流れてくる感想をながめていて、ふと、これは映画館できちんと(?)見なきゃいけないものなのではないか、と天啓のごとくひらめき、すぐに上映時間を調べた。

結論として、本当に行ってよかった、と思う。おかげで普段は「やばい」だけで終わってしまう感情をこんなに文字数をかけて消化することができている。でも、エンドロールが流れ終わり、劇場が明るくなった瞬間から数十分はほんとうに亡霊のようで、宙に浮いたような足取りで帰る準備をし、途中で降ってきた雨に傘をさしたときにようやく夢から覚めたというか現実にかえってきたような心地がしたのだけれど、それまでは「やばい」しか頭の中に言葉がなかった。それくらいやばかった。いやもう本当に。
そこまで心を奪われる映画に出会えたことが単純にうれしかった。あのとき、映画を見に行こうと決めたとき、大袈裟だけど、自分の中で映画を見るまえと見たあとで何かが変わるのだろうな、という予感があった。だから覚悟して観賞に臨んだのだけれど(大袈裟)、それ以上にやばかった。あんなにフラフラになりながら帰る羽目になるとは思わなかった。魂吸い取られたんちゃうかとさえ思った。何も落とさず、わすれものもせず無事に帰れたのが不思議なくらい。それほどささった映画だった。

上映中、最初は川西拓実くんの中の清澄をさがしていた。だけど、途中から清澄に夢中になってしまった。清澄=川西拓実ではなく、おそろしく似た価値観をもった別々の人間なのではないか、と。いやまあそれはそうなんだけど。この世界のどこかで本当に清澄という人間が生活していて、その人生の一部を切り取ってスクリーンに映し出されているのではないか。さがしたらきっと、AZURのEPもサブスクで聴けるのではないか。なんて。心がおかしくなってしまったみたいだった。清澄の“才能”に、川西拓実くんの“清澄の才能と苦悩を演じる表現力”に、心臓を灼かれてしまった。

わたしは理屈で証明できないような魅力や圧倒されるような至高の芸術、みたいなものがほんとうに好きで、魔法にかけられたようにそれに夢中になったり虜になったり、或いは囚われたりする瞬間が好きなド変態なので、川西拓実くんのそういう言葉にできない部分に無意識のうちに惹かれているのだろうな、と思う。どんなことを考えているのかわからない目をするときがある。その不思議な雰囲気が好きで、もっともっと知りたくなって、JO1の動画では川西くんを目で追ってしまうのだけど、直近で見た動画ではなんか恐竜のコスプレをしてチョコチョコ歩いていた。何だ? さすがに可愛すぎるのでは?

まだまだわたしは新参者のオタクで、こんなに語っていいのかわからないくらいだけれど、とにかくいま感じたことを残しておきたいと思った。まだわたしの知らない川西拓実くんのことを、これからもっと知っていきたい。あと清澄にもう一回会いたい。彼の持つ世界観に浸りたい。パンフレットも、原作の漫画も読んでみようと思います。

素敵な作品に出会わせてくれてありがとう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?