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ラドゥ・ムンテアン『Întregalde』遭難したボランンティアから見る利他主義の限界

クリスマスに向けて田舎に点在する家々を廻ってお菓子などの物資を届けるボランティアの物語。インリカ、マリア、ダンの三人は物資の配送中に老人を見つけ、彼の言う山道に入って泥にタイヤを取られてしまう。しかも、抜け出そうと色々やっているうちに、老人は彼の目指していた製材所に勝手に行ってしまい、三人は別れて現状打破を目指すことになる。興味深いのはボランティアという三人の立場と考え方である。最初に物資を届けた相手は豚に手を噛まれた老女だが、可哀想にとだけ言って物資が必要かどうかや開けて並べるかどうかすら訊かずに出ていく。泥沼脱出作戦執行中に出会った親子が"俺らは物資をもらってないぞ?"と言えば、"渡す相手を決めるのは偉い人だから私たちには言わないで"と返す。極めつけは、ほぼボケていた老人を面倒だからと製材所に置き去りにし、事あるごとに見捨てようとすることだろう。本作品はそんな慈善活動の意義と利他主義の限界を"愉快に"暴き出しているのだ。ただ、明らかに矢数が少なく火力不足になっている感じは否めない。

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・作品データ

原題:Întregalde
上映時間:104分
監督:Radu Muntean
製作:2021年(ルーマニア)

・評価:60点

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