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石川県能登半島地震そして全国つながる地方医大の仲間たち  医師が語る

 私の母校があり、ふるさとである石川県そして富山県に多大なる被害を与えた元日の地震。現地の報道や災害医療に取り組んでいる友人からの情報ではその惨状はすさまじいものです。遠く離れた地にいる私はただただ祈ることしかできません。これ以上の被害が出ないよう、皆様のご安全をお祈りしています。


■返礼品からその土地のことに興味を持つ


ふるさと納税のサイトを見ると、返礼品の紹介ばかりでなく、地域の説明やイベント情報が出ていることに気づけます。入り口は返礼品ですが、その返礼品を通して地域に目を向けるようになるのは、ふるさと納税の仕組みのいいところといえます。

私は地方医科大学医学部でしたので、全国津々浦々から学生が集まっていました。高校までのある意味閉塞感ばかりの世界から、大学生になって一気に世界が広がった感じでした。

母校に入学したときのこと。「石川県ってさー。横浜と比べたらテレビ東京とかTVKがないから寂しいよね」と言えば、「バカ言うなよ。俺の地元なんて、NHKと民放一つしかないんだぜ」なんて言われて、これまでの常識が通用しない世の中があるんだと知りました。

そして、「「笑っていいとも」が土曜日夕方なんだ‥」と、今の奥さん、当時の彼女にそう言われてビックリしたのでした。

■地方大学だからこそ、色々な出身者が集まっていた


ある友人に、「うちの島は、砂浜に出るとウミガメが出迎えてくれるんだぜ。ウソだと思うなら、来てみろよ」と言われたことがあり、飛行機と船を使って行ってみると、その言葉が真実だとわかりました。

綺麗な海。それに人も少ないから、ウミガメも人を警戒しないのかもしれません。こんなきれいな場所で生まれ育った彼が羨ましく感じたものです。

しかし、こういった場所には、こういった場所なりの問題があります。この島には高校がありません。だから高校に通うために、彼は本島にあった祖父母の家に住み、そこから高校に通っていたそうです。しかし、高校在学中に、この島にいた父親が病気のため亡くなってしまいました。

この島にないのは高校だけではなく、病院も医師もいなかったのです。そんな経験をした彼だから、自分がこの島の医師になるんだと決め、猛勉強の末、私と同じ大学に通い始めたのだと聞きました。

私の大学では、大学卒業とともに、ほとんどが生まれ育った地元に帰ります。学会などで会わなければ、二度と会わない同級生がほとんどです。ただ医師の仕事を続けていると、今はネット社会ですから、情報は嫌でも入って来ます。

たとえ二度と会えなくても、かけがえのない同級生。活躍している噂を聞けば励まされるものです。この島出身の彼とも、そんな感じで繋がっています。

■ふるさと納税の特産品を見て、その土地に住むかつての同級生を思い出す


ふるさと納税のサイトを見ていると、医師としての噂だけではなく、大学当時に出会っていた友人たちのことを思い出すきっかけにもなります。

例えば、「さつまいも」。鹿児島県産のさつまいもを見れば、鹿児島県出身の彼の姿を思い出しますし、彼が鹿児島は天気予報で晴れとか雨とかだけでなくて、火山灰情報がやっているって言っていたことまで思い出せます。

他にも、長野県産のリンゴ。長野県と言えば、また別の彼の姿を思い出します。この前、学会で会ったけど、だいぶ老眼キツくなったって言っていたよなぁ。学生時代めちゃくちゃモテていたのに。

なんて、つい大きな一人ごとを言いながら見てしまうのです。これはふるさと納税の別の楽しみ方かもしれません。

そういえば、先述の島の彼のところに遊びに行ったときは、船酔いで吐いてしまい、夜はカエルと虫の音がうるさくて一睡も出来なかったこともありました。ネットで調べたら、その島のカエルと虫の音は都会のパチンコ屋より、うるさいと書かれています。そんな場所で、寝れるほうがおかしいというもの。などなど思い出はとまりません。

たとえすぐには会えないけれども同じ空の下でお互いに頑張っている。その思いだけが今の私を支えてくれています。


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