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【ドイツ留学】ミュンヘンに暮らすと、人は朗らかになるのかも。

ゼロから言語を学び、複雑な手続きをこなし、南ドイツ・ミュンヘンの町に留学に来て早8ヶ月。

ゴールデンウィークを使って遊びに来てくれた母と祖母を空港で見送り、帰りの電車のWi-Fiに繋いで少し書いてみようと思った。


臆病、人見知り、ネガティブ思考。
高校生までの私を表すのにこれほど丁度良い三拍子は無いと思う。


新しいことを始めるのを極端に嫌がり、興味関心を行動に移せる3つ下の妹を横目に、高いプライドだけは傷つけまいと自分は何にも興味がないフリ。
知らない世界がひたすら怖いのと、
他人の目が気になるので、なりふり構わず何かを始めた時にどんな風に思われるか不安だったのかもしれない。
自分から進んで始めた習い事は、大学のサークルを辞めたことで中途半端に終わってしまったダンスくらい。
思えば祖母の家に1人で泊まりにいくことすら怖くて、その初めても妹に先を越されるような臆病だった。

重度の人見知りで保育園では友達が1人しかできず、それ以来なんとか周りに合わせることは覚えたものの、自分から他人にアプローチすることを避けてきた。
公共の場でも同様、初対面の人間と打ち解けられないのでみんなの遊具で遊ぶことができない。店員さんに話しかけれないので、おつかいに行っても売り場が分からなければ手ぶらで帰ってくる。
高校でも、やっと友達と言えるくらいに心を開いた頃には次の学年のクラス替え。
ダンス、そろばん、ピアノ、水泳、など沢山させてもらった習い事でもろくに他人に話しかけられなかった。

追い討ちをかけるのが、ずっと引き摺ってきたネガティブ思考。
目の前の物事に最悪の可能性ばかりを模索して、その場合の確実な対処法を思いつかないと始められない。
他人の目も人一倍気にしていたので、尚更失敗した先のマイナスなイメージが膨らむ。
高校受験のときも、大学受験のときも、留学を決めるための語学試験や面接のときもそう。「きっと受からない、落ちたときのためにあれこれ準備しておかないと」→「あれ?受かってた」の繰り返しで、ろくな成功体験として残らず自信にも繋がらない。
何かを始めるにも「ダメだったらどうしよう」「失敗したらダサいと思われるかな」が付きまとい、
人に話しかけたり助けを求めようにも、応じてくれない可能性が見えた途端絞り出した言葉は喉の奥に引っ込む。


こんな風に生きていると、人はどうなるか。

何もかもに怯え、周りの人間を避け、自分のマインドを負の方向へばかり導くような生き方は、自ずと表情にも表れる。

知らずしてマイナスの感情が膨れ上がり、未来への漠然とした不安ばかりに気を取られて目の前の楽しみが見えず、「どうしよう」が口癖になっていた。
だから今までの私は、四六時中ずーっとしかめっ面をしていた。
スマホの画面やトイレの鏡、バスの窓にうつる自分の、口角が下がり眉間に皺を寄せた怪訝な顔を見て、慌てて表情を和らげようと努力していた。



ところが最近ふとした瞬間に目にする自分の顔が、以前より上機嫌に見えるのだ。

意識して表情を作っていないのにすごくにこやかで朗らかな顔をしていて、なんでもないのにどこか楽しそう。
こっちで過ごすほとんどは一人の時間なのに、最近よく笑っているような気がする。

なぜだろう?
自分の顔にこんな疑問を抱くのもおかしな話かもしれないが、その気になったので少し考えてみることにした。


ドイツ人は温かい。

ドイツ人に限った話ではないが、こっちの人たちは見ず知らずの関係でも距離が近い気がする。
重い荷物を持ったお年寄りをスマートに助けてあげる、とかだけでなく、
電車がトラブルで止まったら「おいおいまじかよ~」みたいなのを皆で共有するし、
レストランではウェイターが「きみドイツ語上手だね!」と陽気に絡んでくるし、
同じエレベーターに乗った人とは挨拶を交わすことが多いのも、すごくいいなと思う。
すれ違いざまや電車などで他人と目が合ったら何もせずに逸らすのが日本だが、こちらの人々はニコッと微笑んでくれるのも、私が好きなところ。
つまり、他人と打ち解けるハードルが遥かに低くて人の温かさを感じやすい。

最近は、困ってそうな人がいたらフランクに話しかけられるようにもなったし、カフェの店員としてお客さんとスモールトークを楽しめるようにもなったし、慣れなかったアイコンタクトにも笑顔で応えられるようになった。
それが普通になりつつあって気付かなかったが、昔の人見知りの私からすれば別人のようで今驚いている。
だから一人でいるようで実は、些細なきっかけで他人と笑顔を交わしているのかもしれない。


ドイツ人は人の目を気にしない。

ヨーロッパの中では生真面目で気難しいと位置づけられがちなドイツ人だが、実際はもっと大雑把に生きていると知った。
服装に気を遣わない、化粧をしない、雨でも傘を差さない、など見た目に無頓着な彼らは、自身だけでなく他人のこともさほど気にしていないように感じる。
年齢や体型に関係なく好きな色や形の服を着ているところからも、「いい歳して…」「あの太さで…」などと他人の見た目にいらない節介を焼く気など微塵もないのだとわかる。
だから私も服装から行動まで、人の目をまったく気にしなくなった。だって皆見ていないから。
この“他人に厳しくない”というのも、さっきのドイツ人の温かさの大きな一つだと思う。

ちなみにオードリーの若林さんが彼のエッセイの中で、「他人の目を気にする人は〝おとなしくて奥手な人〟などでは絶対にない。心の中で他人をバカにしまくっている、正真正銘のクソ野郎なのである。」と言っていた。
今となっては、本当にそうだと思う。
だって昔の私がそうだったのだから。

そしてこれが要因かは分からないが、全員が各々の時間軸で各々のしたいことをして生きている。
働きたい人は就職活動に励み、勉強をしたい人は(何歳からでも)勉強をし、旅がしたい人は旅をし、ギャップイヤーが欲しい人は周りを気にせずこれをとる。人生の王道やこう生きるべきだと言う基準が無いので、みんな好きなように将来を決めている。
米・英・墺という英語圏三大留学先につぐ世界第4位の外国人留学生数を誇るドイツだからこそ、いろんな国の人の人生が見られてとても勉強になるなと思うし、日本の就活システムの異様さも感じたり感じなかったり・・・

ちなみに一昨日母がミュンヘンの街中で、大声で歌いながら自転車を漕ぐおじさんを引き気味に見ているのを見たとき、私は彼を「楽しそうでいいなあ~」と温かい目で見守っていたことに初めて気づいて驚いた。
結構な音量だったし顔もお酒で真っ赤だったが、その様子をすごく微笑ましく見ていた自分がいたのだ。
ドイツに来る前の私は確かに、ああいう人を“ヤバい人”認定して蔑視していた。だから母が間違っているとは思わない。
でももしかしたら、過去の私は目立った行動をすると他人も同じように自分を見るだろうと心の中で思い、何をするのも怖い臆病な人間だったのかもしれない。
そしてもしかしたら、私も最近外で鼻歌を歌うことが増えたのかもしれない。


ドイツには自然が多い。

芝生と木々に囲まれた寮では、窓を開ければ緑の匂いを部屋いっぱいに取り込むことができるし、自然を駆け回る子供や犬の姿をぼんやりと眺めることもできる。
街の中心部の大学近くには、原っぱと森とベンチしかないだだっ広い公園があり、何かを考えたいときも、何も考えたくないときも、とにかくそこで風に吹かれながらぼーっと時間を過ごしている。
たまには近所のお店のコーヒーを片手に持ってみたりもする。

緑が多いということはすなわち、野生の動物にもたくさん出会うことができる。
公園の池には鴨や白鳥がいて、最近は春なので子育てをする彼らに出会える。一昨日なんかは、鴨の雛が親鳥をよちよち追いかける横で、白鳥が卵を温めていた。
寮では時々リスに出会う。どうやら裏の木に巣をつくっているらしい。
人間以外の動物が息づく様子をみるのはやっぱり心がときめく。

ビル街がほとんどないので建物は低くて少なく、日本よりも圧倒的に空が広い。
日の出や夕焼けを何にもさえぎられずに見ることができるし、夜には簡単に星を見つけられる。

そうやって生きていると不思議なことに、考えてもどうしようもない不安や将来への憂いなどが、心なしか薄まっていくように感じる。

調べものが好きで昔調べたことがあるのだが、自然の中で暮らすと都市部で暮らすよりも、ストレスを受けると分泌される脳内物質・コルチゾールの値が低くなるそうだ。
このコルチゾール値はうつ病の人に多いらしく、冬季鬱が心配だった私にはミュンヘンの自然がよく効いたのだろう。ここを留学先に選んで正解だった。
とにかく、自然が人の体にいい影響を及ぼす気がするのは、気のせいではないらしい。
ミュンヘンで暮らして散歩が好きになり、外で深呼吸することが増え、それを大いに実感している。


なんてぼんやり考えていたら、そろそろ駅につく時間。

知らずして、ここミュンヘンの地が私に合った安らぎを与えているのかなと考えると、最近の私の上機嫌にも納得がいく。
ここを離れる日のことを考えると今から胸が苦しいが、いつか何かの形で戻ってこられるかなぁとふんわり考える。



昨日は少し雨が降ったけれど今日は眩しいほどの晴天なので、少し手前のバス停で降りて歩いて帰ろうと思う。

家に帰ったら、母と祖母が持ってきてくれた大量の日本食がある。今日のお昼はふりかけご飯にでもしようかな。


最後に、昨日撮ったミュンヘンの写真を2枚ほど↓

母たちに案内した大学前の道
夜の市庁舎

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