見出し画像

正反対のものに、心惹かれることがあります。

スペイン陶芸が表現する 色鮮やかさとは、対極にあるもの。

雨降る 七夕の日に、笹の葉を生けて 星空を想像したくなるような、そんな作品たち。

--------------------


もう、5〜6年前になるでしょうか。

陶作家の 若杉聖子さん の講演会に足を運んだのは。


物静かで 思慮深い空気に包まれた 若杉さんが語る言葉は、
ひとつひとつ、大切にして、放たれる。


まるで、若杉さんの 生きる時間を感じられたような、そんな講演会でした。



真っ白な作品ばかりを創る 若杉さんに、ある方が質問をしました。

「彩色しようと思ったことは ないのですか?」


--------------------


「金色は 特に、使いたくない。

簡単に 華やかさを 出せてしまうから。」


若杉さんの表現は、潔い。

泥漿鋳込み(でいしょういこみ)の技法を用いて、
いのちを感じるような 柔らかなフォルムを、白磁で表現する。

加飾は、一切しない。

透明釉さえも、かけない。


画像1


真っ白な作品には、光と影の表情を映し出して、
その力をも取り込み、神々しさを感じ入る。

肌の質感はしっとりとして、やんわりとした空気がある。

仕上げるまでに、何度も何度もヤスリで磨く工程には、
黙々として、祈りを感じる。



過去の一時、割れる表情を作品にしようと、
作品(だったか?石膏だったか?)を、何回も何回も投げつけたことが、あったそうです。

「神々しい静寂さ」を放つ、現在の作品にたどり着くまでには、
大胆で荒々しい側面もあったのだなと、
いまの潔い表現に対する、必然性と納得感を得た気がします。


画像2

花香奉

静かに音せぬ道場に 仏に花香奉り 心を鎮めてしばらくも 読めばぞ仏は見えたまふ

(静かな道場で仏に花や香をお供えし、落ち着いた心で法華経の読経を行えば、仏はその姿を現すのである)



若杉さんの作品に、再会できて嬉しい。


於 兵庫陶芸美術館

開館15周年記念特別展
「No Man’s Land-陶芸の未来、未だ見ぬ地平の先-」

※会期は終了しています


▼若杉聖子さん▼


画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?