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バスを待つ

 この先、もっと年を取って、この田舎で車の運転ができなくなったらどのように生活しようかと思うと目の前が暗くなる。

 当たり前だが、車の運転をせず、バスを使ってそれが大して不自由とは思わない時代もあったのだ。
 
 そこは、この街よりもう少し大きな地方都市。

 アーケードの下にバス停があった。街頭放送は、いつも八代亜紀とカーペンターズが交互に流れていた。無限ループ・・・。

 バス停の前にバスターミナルビルがあって、今考えるとよく許されたなと思うが、小さな売店があり、その店先のマンガを立ち読みしたりして時間をつぶした。

 すごく待つことが判明した時は、ビルの地下へ向かう。そこにたい焼き屋があった。

 

 小さなブラウン管テレビに招き猫。三角巾をしたおばちゃんが、番茶を湯飲みに入れて出してくれる。大将はたい焼きを焼く。皮が薄くてカリカリ。あんこはあつあつで尻尾の先まで入っている。持ち帰りもできたが、店で食べるたい焼きは格別なのである。特に寒い夜などは。


 今は、アーケードも、ターミナルビルも、
               たい焼き屋もなくなってしまった。


「代わりに今は、スマホがあるじゃないですか。
          マンガだって、ドラマだって見られますよ。」

 それはそうなのだが、季節でも、時代でも、変わり目には弱い私である。