ことごとくツンな幼馴染に落とされかけた。
あやめ:ねぇ、テストっていつだっけ?
〇〇:ん?ああ、来週の火曜から。
帰り道に同じクラスの幼馴染のあやめに聞かれ答えると、
あやめ:ふ〜ん。
素っ気ない返事が返ってきた。
〇〇:一緒に勉強するか。
あやめ:別に何も言ってないけど…
〇〇:え、じゃあ俺1人でするわ。
あやめ:いきなりひどくない?
〇〇:なんだよ、やっぱり一緒にしたいんじゃん。
あやめ:うるさい。
冷たい目は変わらずだが、完全には否定してこない。
〇〇:素直じゃないな〜笑
あやめ:川に沈めるよ?
〇〇:無理に決まって…
〇〇:え?
調子に乗った途端、突然小さな身体に持ち上げられそうになった。
あやめ:ふにゅーッ❗️
けど少しもこちらの身体は浮かず、ただ脇にあやめの腕がぶつかる感触だけしかなかった。
〇〇:ほらな、あやめじゃ力不そ…
〇〇:!
腕力じゃ敵わないと思ったのか、不意打ちでくすぐりをしてきた。
〇〇:ヒェヒェヒェー❗️
あやめ:だっさ、こんなんでやられちゃうの?
〇〇:く、くすぐるのは…アヒャヒャ!なしだろ!?
あやめ:そんなルールないし。
〇〇:や、やめ…ブホッ!?
足を踏み外して、危うく川に落ちかけた。
〇〇:はぁ〜、はぁ〜死ぬかと思ったわ…
くすぐり地獄から解放され、漸く一息つけた。
あやめ:薄情なこと言うからよ。
〇〇:んな、最初一緒にやろうって言ったじゃん。
あやめ:そうだっけ?
〇〇:え、怖…
あやめ:まぁ〜良いや。
あやめ:今日、〇〇の家で勉強させてもらうから。
〇〇:あいよ。
こうして物騒な会議の結果、俺の家でテスト勉強を二人ですることになった。
両親は出張で2週間以上家に居なかったので、しばらく家に帰っても一人きりだった生活が続いていた。
だからか、インターホンが鳴り玄関に向かいドアを開けると、
あやめ:来たわよ。
〇〇:お〜、入って入って!
自分からあやめの手を引いて、家の中に入れた。
あやめ;なんでそんなテンション高いの?
〇〇:いや、親が出張でずっと一人だったからさ、寂しくて。
〇〇:でも今日はあやめが来てくれたから、寂しくなくて良いなって。
あやめ:ふ〜ん。
あやめ:それ、言ってて恥ずかしくないの?
〇〇:全然。
あやめ:メンタルおかしいわ。
リビングの机に、それぞれの教材やノートを用意してテスト勉強を開始した。
あやめ:〇〇。
〇〇:ん?
あやめ:この問題解いた?
あやめが指差すページに視線を向けると、
「黒船来航を、以下の必要な単語だけを使って正しく説明しなさい。
ザビエル 鉄砲 ナポレオン マッカーサー ペリー ペルー スペイン コロンブス 刀狩り ゴーイングメリー号 」
と、歴史の問題が書かれていた。
〇〇:ああ、解いたよ。
あやめ:答え合わせしよ。
〇〇:おう。
正解を見る前に、それぞれの解答を見せ合った。
〇〇の解答「ペリーが鎖国中の日本に開国を求めて、黒船に乗ってやって来た」
あやめの解答「ペリーがゴーイングメリー号に乗ってやって来た」
〇〇:ぶぶっ!
あやめ:なんで笑うのよ?
〇〇:いやいや、ゴーイングメリー号って笑。
某有名海賊漫画を読んでいれば誰もが知っている船の名前を、あやめは知らなかったのだろう。
明らかなダミーのワードを、あやめはなんの疑いもなく解答に入れていた。
〇〇:絶対違うから。
あやめ:んなの分からないでしょ?
あやめ:だいたい、黒船って正式名称じゃないでしょ?それに使う単語の中に入ってないし。
〇〇:いやいや、黒船来航って聞かれているんだから普通入れるでしょ?
あやめ:いや、正式名称を入れるべきよ。
〇〇:だとしても、ゴーイングメリー号はないって笑
あやめ:じゃあ、賭けよ。どっちかが正解していたら、もう一方の不正解だった方になんでも命令できるって。
意地張っているのか、謎の賭けを持ち出して来た。
〇〇:面白。良いよ、乗ってやるよ。
それから、正解を見た。
正解例「ペリーが鎖国している日本に開国を求めて黒船に乗って来た」
しっかり、こちらが正解だった。
あやめ:カンニングしたな?
〇〇:してないから。
あやめ:絶対した。
〇〇:だからしてないって。
あやめ:はぁ〜、船に乗っていたら今すぐ〇〇を海に突き落としてやりたい。
〇〇:たかが一問の誤答で大げさ過ぎるだろ??
〇〇:さて…
あやめ:何よ?んなキモい顔して。
〇〇:俺が正解だったから…
あやめ:あんなくだらないこと、どうでも良いでしょ?
案の定、さっきの賭け事はなかったことにされた。
まぁ、これ以上しつこく言ったら本当に沈没させられそうなのでやめた。
あやめ:…
しばらく黙って勉強していたが顔をあげあやめの方を見ると、あやめの目がウトウトし始めていた。
あやめ:…
コクッ
目を瞑ったあやめの顔が揺れて、机にぶつかりそうだったので慌てて身体を抑えた。
〇〇:(ふ〜、危ない…)
あやめ:zzz
さっきまでのぶっきらぼうなのとは打って変わり、幼い子どもみたいな顔をして俺の肩の上で寝ていた。
〇〇:(おいおい、勉強するんじゃなかったのかよ)
けどそのレアな寝顔が見ていられると思うと、このままにしたくなった。
放置していると、時々あやめの口角がうっすら上がっている気がした。
〇〇:(男が絶対落ちる女の子の仕草、ナンバー1だなこれは。)
それから、あやめが起きるまでその寝顔を堪能していた。
多分、バレたら張り倒されるだろうけど…
fin.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?