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ワープ(闘病仲間との隠語)

乳がんサバイバーずこちです。
浸潤がん/ホルモン感受性 なし/HER2 3+/Ki67  40%
腋窩リンパ節転移あり
2021年手術、放射線治療
2022年 分子標的薬完走
現在は経過観察中。



【これからワープしてきます!】

闘病ブログで、あるいは他のSNSでこんな言葉を見つける時がある。

ワープはがん闘病仲間での隠語。
全身麻酔を使った手術を意味する。

私もがんになってから知った。

全身麻酔するとタイムワープしたかのように一瞬で意識が飛ぶ。

「ワープしてきます」とは
これから手術に向かう人が
「これから手術室に行きます」
と言っているのだ。

そういう書き込みにはたくさんの応援が集まる。
文字による声無き応援だ。

経験者の人からは
「一瞬だからね。待ってるよ」
「抗がん剤よりずっと楽だから」

これから手術を控えている人は
「私も続きます。戻ったら色々教えてください」

あとはもう
「行ってらっしゃい」
「待ってます」
が、たくさん書き込まれる。

少しはリアルの知り合いもいるのかもだけど
多分、ほとんどの人たちは顔を知らないのだ。

この書き込みを見るたび、私は胸が熱くなる。

手術の準備も終わって、本当にこれからという時に
スマホから打たれたであろう
【これからワープしてきます!】
という力強い言葉。

前向きに明るいけど
その奥にはさまざまな想いがこもっているだろう。

がんはとてもデリケートな病気だと思う。
ずっとネットで応援していた
自分と同じ種類のがんだった人がいなくなってしまう時もある。

その人が亡くなってしまったことも悲しいし、
自分に重ねて不安にもなる。

治った人は「治った」と言いにくい。
がんには再発があるから。

5年経ったら治ったなの?
10年経ったら治ったって言えるの?
いやいや10年以上経ってから再発した人もいるし…

でも、治療が一通り終わると
特に発信することもなくなるので
がんサバイバーたちは「がん」ではない内容で発信をする。
あるいは、発信をやめてしまう。

私も治療が終わって、経過観察だけになったら
ブログの更新頻度が減った。


ただ、今こうして書いているのは
自分がある日突然、がんと宣告され
あまり知識もないままに抗がん剤治療が始まり
人に「ありがとう」「ごめんね」と言うばかりで
誰からもありがとうと言われなくなった。

社会から切り離され、
友達とも距離ができた。

そんな中で
言ったらいけないことで胸がいっぱいになってしまう時もある。

たとえば
「朝から晩まで痛みがあるって本当にツライ」
って、思うけど口には出せない。

もっとツライ痛みと戦っている人もいるだろう。
自分のために色々なことを我慢している家族にも言ってはいけない気がする。

でも、押さえつけていることもつらくて胸から出してしまいたい時もある。

そんな時、ネット上で文字にする。

そうすると
もう自らは発信していない「先輩」たちや同じ思いで苦しんでいる人に受け止めてもらえることがある。

さらにさらに
「私は闘病中ではないけれどいつも読んでいます。
いつも応援しています。」

なんて言っていただけると
「自分なんていないほうが」←出たマイナス思考

なんて思っている私には
同じ病気でなくても読んでくれる人がいるんだ〜!!
って、感謝で溢れる。

社会から切り離され、
孤独と不安でいっぱいだった自分が
あたたかい気持ちになれる。

インターネットのある時代でよかった。

今日もきっとインターネットの海のどこかで
「ワープしてきます!」
という書き込みがされるだろう。

私の子供たちが大きくなる頃には
がんが治る病気になりますように。

ではでは

最後までお読みいただき

ありがとうございました😊

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