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アフリカゾウの“マオ”をママに~日本初のアフリカゾウの人工授精に挑戦~

〇日本の動物園のアフリカゾウの飼育状況
 
2023年1月現在、アフリカゾウは国内の14の動物園で25頭(オス4頭、メス21頭)を飼育していますが、2013年の出産を最後に繁殖が完全に停止しています。また、過去10年間に16頭のアフリカゾウが死亡しており、今後の飼育展示の継続が危惧されています。過去の繁殖の多くは海外から野生の個体を導入したペアによるものですが、野生個体を導入することはワシントン条約によって困難な状況が現在も続いています。繁殖を目的としたアフリカゾウの国内移動もこれまで10回以上行われてきましたが、妊娠したのはわずか1ペアのみです。また、妊娠経験のないメスは生殖器疾患により妊娠しない例や排卵が停止している例が多く、性成熟したメス個体が10~15年繁殖しないと子宮疾患のリスクが増大するため、排卵があるメス個体は個体数維持や疾病予防の為にも妊娠を図る必要があります。当園の“マオ”は今年21才となり、性成熟してから14年目ですので、早急な妊娠が望まれます。

アフリカゾウのメス“マオ”(21才)

〇盛岡市動物公園のアフリカゾウの飼育状況
 
当園は1991年に海外より野生個体を導入し、オスメス各1頭で飼育を開始しました。2001年にメス“はなこ”が妊娠しましたが、死産、難産のため母子共に死亡しました。2006年に新たなメス“マオ”を東京都多摩動物公園から導入し繁殖に取り組みましたが妊娠には至らず、2018年に慢性肺炎によりオス“たろう”が死亡しました。
 
〇ゾウの人工授精とDr. Hildebrandt
 
国内での実例はありませんが、海外では30年以上前からゾウの人工授精の試みが始まっています。1990年代前半までは全て失敗に終わっていましたが、Dr. Hildebrandt(ドイツ,ライプニッツ研究所動物園野生生物研究センター) は2000年に人工授精による繁殖に成功し、その後、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエルで、50以上の妊娠例(アジアゾウとアフリカゾウの事例は約50%ずつ)の実績をもつ、ゾウの人工授精における第一人者です。
2018年12月よりDr. Hildebrandt に相談し、日本初のアフリカゾウの人工授精の取り組みに向けた準備を進めてきましたが、昨年2022年までは、新型コロナウイルス感染症の影響のため入国が難しい状況が続き、事業を進める事が出来ませんでした。昨年末より海外からの入国が可能となったことを受け、2023年3月に、当該事業の経費を負担する盛岡市の事業として実施するための協定を、盛岡市と動物公園を運営する当社(株)もりおかパークマネジメントが締結しました。
また、6月にDr. Hildebrandtと事業を行う為の契約締結を行っており、9月下旬から10月上旬に人工授精の実施を目指しています。実施に当たっては、他のアフリカゾウ飼育園のご協力を頂くと共に、人工授精技術の共有も図りたいと考えています。
 
〇他の動物園との協力体制について
 
 秋田市大森山動物園と仙台市八木山動物公園と共に東北3園アフリカゾウ繁殖プロジェクトに取り組んでいます。年2回の東北3園アフリカゾウ繁殖検討会議を開催(1月31日に第11回目の会議を実施)しています。またアフリカゾウ飼育園館とも密に連携し、マオの帰属先である東京都多摩動物公園と協力して事業を行っていきます。

アフリカゾウ担当 竹花・丸山