見出し画像

「頼みの綱は想像力」 

<舞台裏>シリーズ No.20

かいのどうぶつえん 園長です。
貝の動物の制作現場では、毎日さまざまなエピソードが生まれています。

このシリーズでは、舞台裏の失敗談や内緒話、奇想天外な空想や徹底した“こだわり”などをチョイスしてみました。

第20回目は「頼みの綱は想像力」です。

擬人化した動物を主人公に、教訓や風刺をたっぷり織りこんだイソップ寓話は、「かいのどうぶつえん」にとって、ぴったりなテーマです。

これまで数多くの場面を制作してきましたが、『オオカミ少年』もそのひとつ。羊飼いの少年が暇をもてあまし「オオカミがきた」と叫んで、嘘をくりかえすストーリーは、広く知られています。

オオカミが来たぞー
食べられちゃう。怖い!
叫んでも、もう村人は来ない

イソップ寓話の制作は、毎回とても楽しいのですが、完成後に書く400字ほどの紹介文に、四苦八苦してきました。

『水辺のシカ』:水面に映る立派なツノに見惚れ、弱い脚を嘆いたシカ。
獅子に襲われ自慢のツノが枝にからみ一巻の終わり!

理由のひとつは、時代感覚です。寓話がつくられたのは紀元前6世紀。いまから2500年も昔のことで、キリスト誕生よりずっと以前、日本では稲作が始まった弥生時代のことです。

華やかな古代ギリシャ時代の文献やエピソードは山ほどあり、何を書くか選択に悩むほどですが、どんな時代だったかという平凡な臨場感が、なかなか実感できないのです。

『ネズミと牡蠣』:台所で殻をあけた牡蠣を発見。
無謀にも頭を突っ込み “身”にかぶりついたネズミ。
牡蠣は口を閉じ、ネズミはあえなく自業自得!

さらに厄介なのは、空間感覚です。イソップは奴隷身分で、サモス島で活躍しました。

『ゼウスとキツネ』:ゼウスが動物の王に指名したキツネ。
大好物のコガネムシを見ると、貪欲な本性をあらわして駆けまわり、王様失格!

地図をひらくと、アテネから約250km離れたエーゲ海東部で、狭い海峡の対岸は敵国ペルシャ(現トルコ)。北方には、シュリーマンが発掘したトロイ遺跡など、名所旧跡にあふれています。

『アリとキリギリス』:夏、アリは働いて食料を蓄え、キリギリスは歌って過した。
冬、食糧を頼むと「夏は歌ったんだから、踊って冬を過ごしたら」・・・。

しかし、今は世界遺産のサモス島のどんな場所で、イソップが語ったのか?

聴衆は何人くらいで、拍手や笑い声が聞こえたか?など、現場の空気感がわからないのです。

『造船所のイソップ』:腕自慢の船大工から「話ばかりで何もできない奴だ」と
さげすまれたイソップは
「昔、ゼウスは大地の神に3回、海の水を飲めと命じた。
最初の一口で山々、二口目で平野が露出した。
もう一回飲んだら、お前たちの仕事なんてなくなるぞ!」

そして、奴隷から自由の身になったイソップはギリシャ各地をめぐり、寓話を語り続けます。当時の都市国家アテネは民主政で、生産は奴隷に依存、市民12万人、在留外人3万人、奴隷8万人という人口構成でした。

イソップはアテネに行ったのか?訪問地で、誰に語りかけ、どんな話術で聞き手の心をとらえ、どの話が好まれたのか?そして、なぜ殺されたのか?など、あれこれ気にかかることばかりです。

400話をこえる寓話を読むほどに、謎が深まるイソップの世界。
これからも、想像力の翼を大きく広げて、「イソップシリーズ」の充実にチャレンジします。つづく 

貝は「割らない。塗らない。削らない」のスッピン勝負

   イソップ寓話 『オオカミ少年』  〜成分表〜
少年:タマガイ/イガイ/スガイ/ヒメキリガイダマシ/
     マクラガイ/ヒメカノコ他
ヒツジ:タマガイ/スガイ/コウサギガイ/ニセコザクラガイ/
     キサゴ/ヒメカノコ他 
帽子:スズメガイ  ★丘(牧場):ヒラサザエ
:アカウニ    ★地面:マドガイ/ホタテガイ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?