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『パラダイスの夕暮れ』

ごみ清掃業者の男ニカンデル(マッティ・ペロンパー)がスーパーマーケットの女イロナ(カティ・オウティネン)に恋をした。

まず、マッティ・ペロンパーという役者は目で話す。言葉は添え物でしかない。この人物の目を見ていれば何を感じているのか、どんな言葉を飲み込んでいるのかが想像して楽しめる。そしてカティ・オウティネンもしかり。

ごみ収集の仕事を終えスーパーマーケットでレジにいたのがイロナ。睨むように見つめるニカンデル。イロナも睨み返す。そんな二人が恋に落ちた。

ここにも言葉はない。内気なニカンデルが奮闘し、イロナと船に乗り込み旅立つだけの「なんてことのない」物語。なのにどうして3ヶ月毎日繰り返し観てしまったのだろう。クレイジー。

「なんてことのある」日々を送っていると思っていた自分が、「なんてことのない」日々を送っていた。

ニカンデルは夕食を終え外を眺める。物思いにふける。はぐらかし、恥をかく。上司の死を受けがむしゃらになる。同僚に助けを求め救われる。ひとを愛する。そんな作品に救われた。

(1986年 フィンランド 80分 アキ・カウリスマキ)

見てくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。