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架け橋バラガン・コラム

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バラガン(בלאגן\בלגן)とは、ごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラング。 ここでは現地在住15年の現地スタッフが、様々な分野での最新イスラ… もっと読む
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記事一覧

いつもと違う、聖地の寂しいクリスマス

近年続いていたクリスマスへの歩み寄り・受容4年ほど前に『イスラエルのクリスマス事情』と題し、歴史的な反キリスト教的アレルギーを克服し、(ユダヤ系)イスラエリーの間でクリスマスへの歩み寄りや文化的体験といった動きが見られると紹介しました。 その後もユダヤ・アラブ人、ユダヤ・キリスト・イスラム教(+バハイ教)が共存するハイファでこの時期に開催されている「The Holiday of Holidays(祭りの祭)」は、近年ハイファや北部だけではなく、イスラエル全土から観光客が訪

広がる『イエスのパレスチナ人化』とイスラエル側でのイエスに対する再考

12月10日、駐日パレスチナ常駐総代表部がこんなX(旧ツイッター)の投稿をしました。 もちろん、クリスチャンをはじめ各所から「イエスはユダヤ人」とのツッコミが入りましたが、これはナラティブの戦いという戦場においてパレスチナがしばしば用いる極めて『古典的』な手法だったりもします。 そこで今回は『パレスチナ人イエス』の歴史と、それに対するユダヤ人/イスラエル側の反応を少し見てみたいと思います。 イエス=パレスチナ人には半世紀以上の歴史が1世紀のユダヤそしてガリラヤ地方を生き

父さん、ユダヤ人を10人この手で殺したんだ。誇りに思ってくれ!!― イスラエルが『10月7日の虐殺』のビデオを公開

背景イスラエル軍は現地時間の23日、海外メディアを中心とした約200人の記者をテル・アビブに集め、10月7日のハマスによるテロ攻撃・虐殺に関する、今まで公開されていなかった計47分間のビデオを公開しました。これらの映像はCCTVカメラやハマスのテロリストたちが付けていたボディカメラやスマホ、ハマスや犠牲者たちのSNS(*1)、犠牲者や生存者が撮影した映像や音声などが含まれています。 (*1 ハマスはイスラエル市民のスマホを取り上げ、SNSなどでテロ行為の発信などをしていた)

「兄弟の血の声が大地から叫んでいる」は、今のイスラエルに向けられた言葉

先週のパラシャに関して、ユダヤ教改革派の教授でコラムニストのロハマ・バイス氏が興味深いことを書かれていたので、紹介したいと思います。 1章27節を3つに分けると…このパラシャ「ベレシート(はじめに)」のメインテーマは、もちろん天地創造。そしてその創造の最終段階・クライマックスが、1章27節になります。 この1節は、上のように3つのパートに分けられます。 天地創造の総仕上げ+最も重要な核心部であることは、この3パート全てにおいて「創造した/ברא バラア」という動詞が

歴史的:イスラエル人選手がACLのためサウジでプレイ―

ACL(AFCチャンピオンズリーグ)では、日本はアジアの東地区になり決勝でしか当たらないので、あまり取り上げられないかと思いますが、昨日(22日)ACL西地区のプレーオフが行われました。そして、クリスティアーノ・ロナウド擁するアル・ナスル(サウジアラビア)が勝利し、ACL本選出場を決めました。 もちろんニュースとしては、「ロナウド所属のアル・ナスルが、アジアトップを決める大会に出場」という取り上げ方が普通なのですが、イスラエルではこのプレーオフをあるイスラエル人選手という角度

サッカーU20W杯でのイスラエル旋風―

アルゼンチンで行われているサッカーのU20W杯。 10人になったイスラエルにまさかの逆転負けし敗退するなど、日本にとってはほろ苦い大会となりましたが、逆転勝ちしたイスラエルはその勢いに乗りアジア王者のウズベキスタン、そしてブラジル代表も延長戦の末3-2で撃破し、なんと初出場にしてベスト4入りを果たしました。 この快挙はイスラエル国内でも大きく取り上げられ、10日後にはA代表の試合(ユーロ予選のベラルーシ戦)があるのですが、注目や期待度などで見ると「U20代表>A代表」とい

3000年前のイーストを使ったビールがイスラエルで発売される―

最近、イスラエルという土地の歴史をまさに凝縮したようなビールが発売されました。 ビールという事で、はじまりはバーでの会話 さかのぼること数年前、友人であるビール職人とヘブライ大学の歯学部教授があるバーでビールを飲んでいた時、こんな話になったのです― 古代のビールのつぼに付着したイースト菌を復元したら、古代のビールが復元できるのでは? 2人はその後「まさか~」となって、その場はそれで終わったのですが、歯学部の教授はその後同じ学部の微生物学者たちと話し合い、実験を行うこと

頻発する、ユダヤ教過激派のキリスト教への攻撃―

架け橋ニュースレター(紙版)の前号では、 『史上最も極右的な政権の出現』 と題し、イスラエルのメシアニック・ジューやクリスチャンに対して、吹く可能性がある向かい風について紹介しました。 そんな極右色の強い第6次ネタニヤフ政権が国家運営を始めて、現在2か月。クリスチャンへの向かい風は少しずつではありますが、すでに吹き始めています。 ① 歴史あるプロテスタント墓地への破壊―まずは政権樹立後わずか3日後(1月3日)に起こった、シオンの丘にあるプロテスタント墓地での破壊行動です。

エルサレムでの『異常な日常』

この週末(金~土)エルサレムでは連続で2件のテロが発生、イスラエル・メディアが見出しに付けたように、まさに「テロのシャバット(安息日)」となりました。 1度のテロで7人が死亡するという規模は近年見られなかったもので、インティファーダのような大きな波にならないかとも危惧されています。 さて連続テロが起こった(筆者も住んでいる)エルサレムの人口は、100万人弱。そして人口比率的には3分の2のユダヤ人、そして3分の1がアラブ人になります。今回テロを起こした2人も、ア・トゥルとス

野鳥を押収するつもりが、イエス時代の墓地を…

見出しを見ただけでは「・・・?」かと思いますが、イスラエルならではのニュースです。 ゴシキヒワの捕獲・密売を発見今日(12月16日)未明、オリーブ山の南にある東エルサレムの地区で、国境警備隊があるアラブ人住民の家を家宅捜索しました。希少野生動物に分類されているゴシキヒワ(スズメ目)を、捕獲・密売しているという情報が入ったからです。 ゴシキヒワ(写真上)は姿形がよく、住んだ美しい声でさえずることから、歴史的にも愛玩鳥として飼われてきており、イスラエルでは野生のゴシキヒワが

内務省、滞在1時間でイスラエル人メンタリティを『堪能』

さて昨日の朝、家族で1時間ほどエルサレムの内務省に行ってきました。そこで感じたことをドキュメンタリー的に紹介したいと思います。  住所変更だけのはずが…まず最初の目的は引っ越したため、一時在留(滞在)者である筆者の住所変更でした。妻(イスラエル人)の方はインターネットで住所変更できたのですが、私の方は『政府系システム』のホームページにログインはできたものの住所は変更できず。そのため3日前に内務省に行ったのですが… 担当職員から「IDカードの期限がもうすぐ切れるから、IDを更