スズメの巣 第39話

※この物語はフィクションです。

第39話 夜明けはすぐに

チームの初顔合わせを兼ねた、平本の契約の日。
契約を終えた平本は、練習室で3人とともに早速麻雀練習に取り掛かった。

そこには、リラックスした4人がいた。
そんな練習室を眺めながら、金洗はこう言った。
「平本さん。もう馴染んでる!」
「やっぱホントなんだ。あの言葉。」
「なにそれうーみん?ウチのチームに入りたかったってヤツ?」
「そうそう。」
「まぁウチのチーム。他とは雰囲気とんでもなく違うもんね~。」
「こうしてよかったかも。」
「それは、そうよ!私もこのチームで良かったと思えるもん。」
2人は、満足そうだ。

「どうだ?」
声をかけてきたのは、愛田だ。
「見ての通りです。平本さんもリラックスしてます。」
「もう馴染んでるんですよ!すごくないですか?」
「確かにな。」
モニターを見ながら、会話する。

「いいことだな。あっという間だからな。開幕まで。」
「そうですね。」
「俺はちょっと離脱してたけど。お前の胆力には毎度驚かされるよ。」
「胆力?」
「お前は、行動もすごいしアイデアも出る。なんなんだ?」
「なんなんだって何ですか。バケモンみたいに言わないでくださいよ!」
「うーみんは、バケモンよ。」
「はぁ!?なんでさくちゃんまで?」
「だってそうじゃん!尊敬の意味も込めてよ。」
「嬉しくない!バケモンだなんて。一応女子だからパワハラで訴えることもできるんですよ!」
「褒めてるんだから、素直に受け取りなよ~。」
金洗は、笑いながら言った。
「じゃあ、あのカチコミはなんだ?俺と一緒に上司に行った。」
「カチコミって言わないでください!」
「フフッ。信頼してるぞ。じゃちょっと出るわ。」
「あぁちょっと!!」
愛田は笑って、オフィスを出た。

「カチコミしたの?」
「カチコミって言うか・・・。説得?」
「へぇ・・・。」
「引かないでぇ~。」
金洗は、引いていた。(笑顔で)

時は流れ、開幕前日。
沖村が皆でご飯が食べたいと、スタッフ・選手の8人でご飯をすることにした。
チームオフィスで、前日のミーティングを済ませた8人はそのままご飯屋さんへ。

「じゃあ・・・。橋口~乾杯の音頭やってくんね?」
「遠慮気味に・・・(笑)」
金洗は、思わず噴き出した。
あの光景がフラッシュバックした。

橋口は、忘れてるようだ。
橋口は、グラスを持ちスピーチを始めた。
「えー。これから2シーズン目に入ります。今回は1部昇格しまして。狙うはもちろんシーズン制覇。これを目指したいですが、よそはよそ、ウチはウチ精神で頑張っていきましょう!乾杯!」
「カンパーイ!!」
各々、飲み物をあおる。

平本がつぶやいた。
「すごいなぁ。さっき社長の前でも言えてたし。」
それを聞いた橋口以外のスタッフが、ビクンとした。
「なんでビクンとしてんの?」
布崎が突っ込んだ。

「あんま言いすぎもねぇ。」
「そうそう。」
「言いすぎるとアレだからさ・・・。」
スタッフ陣は、言葉を選んだ。

その様子を見ていた橋口は、察した。
「別に一言ぐらいなら大丈夫ですよ!!あの時は言いすぎたからアレしたんです。」
「アレって?」
沖村が入ってきた。

「えぇ・・・。色々ね?」
「寸止めだよな。」
「ちょ・・・。」
鳳が、ノリで言った。

橋口は、皆の視点を見た。
太平は、おびえた。
「みくちゃん。違うの!信じて!皆さん信じて!」
動揺が隠しきれない。

「でも、ここまで信じてきましたもの。そういう時もありますよ。」
「み、みくちゃん・・・。」
橋口は、涙目であった。

「GM!大丈夫ですか?」
「橋口ちゃんが泣いたね。」
「橋口。落ち着け!」
「一回ほっとけ。」
鳳は、冷静に反応した。

「どうにかなるから。」
「そ、そうですか?」
「うん。大丈夫大丈夫。」

そこから2時間。
誰かが笑えば、誰かが泣く。
そんなカオスな時間を過ごした。

「じゃあちょっとスタッフチームは打ち合わせがあるので。選手の皆さん。明日よろしくお願いします!」
橋口が、そう言ってお開きになった。

スタッフだけになり、打ち合わせというより決起集会を改めて。
「まず、寸止めの件言ったんですか?」
「あれはノリだ。何喰いたい?お詫びに今度差し入れしてやる。」
「ホントですか?たっかいケーキでも?」
「ああいいぞ!俺のイチオシのたっかいケーキおごってやるよ。」
「あざーす!」
「ケロッとすんじゃねぇよ!!アレ演技か?」
「演技じゃないです!」
「私たちもいいんですか?」
「お前たちは無しだ!」
「ケチ―!」
「ケチで結構。」
そんな話をしていても、ふと我に返ると金洗は緊張していた。

「にしても、始まるんだね。」
「1部昇格して初だもんな・・・。未知の領域だぞ?」
「どうにかなりますよ。このチームなら。」
「愛田さんの言う通り。自分らしく戦えばいいんです!負けたら負けたですよ。」
「そうだね。」
「いくら未知の領域だってな。挑まないとな。」
「鳳さんいいこと言うじゃないですか!」
「おい。舐めてんのか?」
「舐めてないですよ!尊敬してるだけです。」
「ケーキなしでもいいんだぞ?」
「なんで!?おかしいよぉ!それは。」

そんな話ができる。
それほど、このチームに秘めたる自信がある。かもしれない。

つづく。


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