1月の語学学習まとめ:5教科バランスよくとはいかずとも

昨年末から自分の勉強時間を study plus というアプリで計測していた。現在5つの外国語を同時に取り組んでいる状態なので、勉強時間の管理としていいかなと思ってのことだ。1月の学習時間の割合はこんな感じになった。

ロシア語とフランス語がメインでこの二言語は毎日やり、英語、ドイツ語、ポルトガル語がサブで三日に一回ずつ交替で学習するというのが自分で決めた基本的なスケジュールだった。各言語ごとの学習をこれから振り返って二月の学習の展望としたい。

A ロシア語

昨年11月から7年ぶりに再開したロシア語も、気づけば3カ月経ってしまった。

やっていたことは先月とあまり変わらず、以下の三つ。

1 『ロシア語一日一善』の訳読
2 『罪と罰』を多読
3 音声教材の多聴

1 『ロシア語一日一善』の訳読

この本は文豪トルストイが集めた警句集から短いものを選り抜きして日本語訳と注を載せたもの。箴言集なので、短い言葉のなかに深遠な思想が込められており、じっくりと読解するのに適している。これは12月から一日一篇、ほぼ毎日やっていたので、すでに50篇以上は自分で訳したことになる。note 上では読解のプロセスを書いたり、箴言に対して自分の思うことをつらつらと書いたりした。ロシア語の勉強としてだが、思索を深めるいい機会になっている。こういう箴言集をじっくり読解するのは他の言語でもやってみたいところだ。時々、トルストイの考えていることに少しずつ接近できているかななんて思ったりもしている。

2 『罪と罰』の読書

12月から読み始めたドストエフスキーの『罪と罰』を引き続き1月も読み進めた。毎回一章ずつのペースで読み進めていって、現在はこの小説の第六部(最終章)に入って、いよいよ物語の終盤に来た。2月中には読了できるだろうが、この取り組みについての総括は読破したときに改めてやりたい。

しかしまあ、半年くらい前にやりたいと思っていたことが今実現していると思うと感慨深い。

3 音声教材の多聴

音声での学習として、先月も言及した Универ Новая общага を毎回一話ずつ見ていった。

基本的には見ながら内容理解に努めるが、気に入ったフレーズは何度も繰り返して発音したりもして、意識的に口を動かしている。時々まったく分からないフレーズにもぶつかるが、話の筋は想像しやすいので飽きずに取り組めている。ただのくだらないコメディなのになぜこんなにおもしろいのか、いまだによく分からない。

4 おまけ

ロシア語に関しては、最大の目標である『罪と罰』の原書読破が射程圏内に入ってきたので、2月は優先度を落とそうと思う。1月はこの小説を毎日読みこんでいたので、ドストエフスキーの思想が気になりだして、『罪と罰』と同じく五大長編のひとつ、『悪霊』を手に取ってしまった。

語学学習という観点からは、これは悪手だった。そもそも『罪と罰』を原書で読んでいるのと並行して別の長編を読むという行為が、ドストエフスキーの過剰摂取に他ならず、1月の後半は自分の生活がドストエフスキーによってだいぶ侵食されてしまった。『悪霊』を邦訳で読むだけでも、厖大な時間とエネルギーをもっていかれる上、この作品の重たさはドストエフスキー随一といっても過言ではない。作品が持つパワーに圧倒され続けて、他のことが考えられなくなるし、分析や批評や考察を片っ端から聞きたくなって時間が過ぎていく。おかげで三日くらいフランス語のルーティーンをさぼった格好になり、再開初日にボロボロになった自分のフランス語を呪うことになった。原書を読んでいる以上、ドストエフスキーの沼を避けることはできないのかもしれないが、それにしても代償が大きすぎた。まあ、だからこそドストエフスキーは世界文学の巨人なんだけどね、そして私をロシア語に向かわせた要因でもある。


B フランス語

11月の半ばに始めたフランス語。12月末時点では、第16課まで進めていた『ニューエクスプレス フランス語』とDuolingoと発音動画を見ていたくらいだが、さらに文法知識を積み上げるためにもう少し本格的な勉強をした。やっていたことを三つにまとめる。

1『NHK出版 これならわかるフランス語文法 入門から上級まで』の通読
2 オーディオ動画を「読む」
3 動画視聴ルーティンの構築

1『NHK出版 これならわかるフランス語文法 入門から上級まで』の通読

さすがにこんな網羅的な文法書は早すぎるかなと思ったが、「入門から上級まで」のラベルに違わず、初心者には豊富な例文とともに解説が丁寧に目に入り、上級者には別枠で詳しい文法説明を盛り込むなど、全レベルの学習者に向けて施された工夫が見られ、とても使いやすい。口コミの評価が高いのも頷ける。最初から通読していき、現在は第17章まで終わった。知識不足で正直まだピンとこない部分もあるにはあるのだが、いったん通読する価値は十分にあり、これから何度も参照することになると思われる。2冊目の教材としてはいささか背伸びだったが、今の段階で文法を体系的に整理できてるのはかなり嬉しい。

2 オーディオ動画を「読む」

文法と平行してフランス語に触れる量を増やさないといけないため、いきなりだが文学に取り組んだ。といっても実際に本を読んだのではなく、youtube にあったオーディオ動画でだ。

この動画ではアルフォンス・ドーテの『最後の授業』がテキスト付きで朗読されているので、多読教材として使用した。『最後の授業』はざっくり言うとアルザス地方のとある学校での話で、この地方が戦争によってプロイセンの領となり、そのために最後になってしまったフランス語の授業風景が描かれる。邦訳も読了済みだし、短編ということもあって比較的読みやすく、けっこう簡単に最後まで読んでしまった。完全に理解できたわけではないが、自分が満足できるレベルで二回通り読んだ。もう少しフランス語の力がついたら、自分で訳読してみようかなと思っている。

3 動画視聴ルーティンの構築

フランス語の初学者である私は基礎の反復を粘り強くやっていく必要があったため、毎日最初に発音や数字、重要動詞の活用を収録した聞き流し動画を視聴していた。これには先月も紹介したふら塾さんの動画を活用した。

この種の動画は大変ためになるのだが、これだけではちょっときついので、月の後半はフランス人の youtuber の動画も毎日の動画視聴ルーティンに組み込んだ。フランス語学習者に向けたネイティブによるチャンネルもたくさんあり、Français avec Nelly というチャンネルもその中の一つだ。

例えばこれはフランス語の慣用句を紹介した動画。学習者の興味のありそうな話題を扱っているので内容もつかみやすい。たった2カ月しかフランス語をやっていない私でも、フランス語の字幕があれば、なんとなく内容が理解できるように工夫されているのがすばらしいと思った。もっとも、私の趣向に合ったチャンネルに偶然巡り合えたといった方が正確かもしれない。

これらの動画は毎日のルーティンにしていたので、動画によっては30回以上見ていることになる。しかし何度も見ていると、脳が同じ情報として認識してしまい、内容の吸収を拒むというデメリットもあるので、興味を持てそうな動画を見つけたら、見飽きた動画をプレイリストから削除し、翌日からはその動画をルーティーンとして見るというふうに回した。もっとも発音や動詞の活用は飽きたもクソもなく反復しなくてはいけないので、それらの動画は削除せず歯磨きのように毎日やるのである。この動画視聴ルーティンはバラエティーも考慮しつつ2月でも続けるつもりだ。先日、フランス国歌の解説動画を見つけたので、学習の最初にこの動画を毎日聞いてから勉強を始めるのもいいかなと思っている。勉強になりそうな動画はとりあえずプレイリストに突っ込んで、その都度全体の尺を調整して単調にならない工夫としたい。

今年はパリオリンピックもあるし、それまでに歌詞に親しみがもてるようになれたらいいよね。

4 現状の実感

フランス語は先月一番勉強しており、70時間以上学習したので「長足の進歩を遂げている」といったところだ。今はフランス語の音声と文字のすべてが、初見では「ちょうどいいかんじに分からない」状態(自分のなかでは意味が確定しないけどこういう意味なんじゃないかなという類推が絶妙に機能する段階、分からないなりにも興味が持てる段階)にあって、辞書を引いて時間をかければ意味はだいたい分かる。ここからはなかなか進歩を感じることのできない中級の壁にさしかかると思われるが、初級の突破は目前にあるという感覚だ。2月はもう少し読む量を増やしたい。

C ポルトガル語

ポルトガル語も先月とやっていたことは変わらず、ジョゼ・サラマーゴ『見ること』の訳読と、ポルトガル語のニュースを教材にしていた。サラマーゴの方は、一文を訳すのに1時間とかかけているので、あいかわらず進まないし、文法的にどうしても分からないところがでてきて悪戦苦闘しているが、少しずつ速度は上がってるし、読解も深まるようになってきているのでこれはこれで満足している。ニュースに関しては、内容によって興味の度合いが異なるので、発音をコピーするレベルで聞きこんだものもあれば、一読して終わりというものもあった。メインの言語ではないので、このくらいのスタンスでいいかなという気持ちだ。

1月ということもあって、正月の不摂生からどう立ち直るかというこの動画がけっこうおもしろかった。ポルトガル人の風俗が垣間見えるFala Portugal には今月も良質な教材を提供してもらった。ちょっと違う角度からヨーロッパが見えるという意味で、Note上でポルトガルのニュース紹介を始めてみてもいいかもしれない。

D ドイツ語

12月は漫然としか勉強していなかったドイツ語だが、結局というか、自然の流れというか、文法を最初からやり直した。教材はこの一冊。

これは学生の時に買ったもので、この度12年くらいぶりに復習したが、意外と文法の概要は記憶に残っていて、難なくやり終えた。2月はもう少し中級者向けの教材で勉強しようと思う。CDを無くしてしまったので、音声で勉強できなかったのは惜しかったが、この際「文法は文法、聴解は聴解」のようにやることを分けてやったのが逆によかったかもしれない。文法以外の勉強は、LingQという言語学習用プラットフォームに行って、自分の興味がありそうなテキストをひたすら読んだり発音したりした。ドイツ語もやはり読む量が足りないと感じているので、なにか文学作品を読んでみようかなと考えている。ドイツ語はひと月で16時間くらいしか勉強できなかったが、不思議と成長を感じられている。かつての知識が戻りつつあるのかもしれない。2月はメインの学習言語にするつもりだ。


E 英語

英語も先月とやっていたことは変わらない。安藤貞雄『現代英文法講義』の写経とユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス』の英語版を多読の一環として読んでいるだけだ。

『現代英文法講義』の方は完了形のところに入って、「完了・経験(存在)・継続」の三つの意味があるというふうに習う完了形を共起する副詞句や動詞の意味的な範疇によって分類しようとする。どういうときに継続の読みになり、どういうときに完了の読みになるのか、ということが細かく分析され、読んでてとても楽しい。正直何回も読まないと分からないところも多いのだが、「文脈による」のような逃げを打たないで徹底的に英文法を解明しようとする姿勢に感銘を受ける。著者がこの本をライフワークと呼ぶだけある。
一度に3~5ページくらいしか進まないので、読破はもう諦めているが、毎回新鮮な発見があり、英語に触れることは少なくなっているのにこの本に対する興味は衰えないままだ。このレベルの分析は他の言語ではなかなか望めないということもあるだろう。なんというか、英語という一つの外国語の枠を超えた、言語そのものの仕組みを解き明かそうとする著者の野望が、同時並行的に複数の外国語を勉強している自分には刺さるのかもしれない。英語はあくまで実例に過ぎないというわけだ。
『ホモ・デウス』の方はPart 2 まで読み終わって、残すはPart 3 のみとなった。話題となった「データ教」も含め、テクノロジーの進化が人類の未来をどう形成するのかを展望する一番わくわくするところだ。AIの発展がめざましい2024年においても、2016年時点で書かれたこの本の未来予測は興味深いものがある。

2月の予定

いくら無職で時間があるとはいえ、5か国語同時に勉強できるものなのかと思って実験的にやってみた1月だったが、ドイツ語でさえ成長しているという実感(時間の経過による忘却の量が勉強することによって得た知識の量よりも少ないと感じる)があるので、現状はおおむね満足している。各言語課題はいろいろあるし、理想を言えばきりがないが、ひとまずは「進歩している」という主観が継続のモチベーションとしては一番なのでよしとしたい。一番の目標にしていたロシア語の『罪と罰』の読破ができそうなので、これらの外国語のなかで初級レベルにあるフランス語とドイツ語の優先度を上げたい。英語、ポルトガル語、ロシア語に関しては現状維持に努め、何かその言語でどうしても読みたい作品が現れた時にいつでも読めるようにする、という状態の維持を目標にする。3月からはおそらく働きに出て語学の時間は取れなくなるので、2月でフランス語とドイツ語の初級をなんとか突破をしたい。具体的には辞書を引き引きでいいから簡単な本であればあらすじをつかめるようになるくらいか。せっかく基礎が完成したのに「仕事をするようになって知識をキープする時間が作れず、すべて忘れてしまって最初からやり直し」が一番もったいないから、少しのメンテナンスで知識をキープできるくらい(現在のポルトガル語のように)知識を詰め込みたいところだ。
2月も学習しているうちに見つけた語学の小ネタをnoteに書く、ようにしたいが結局1月はなにも書けなかった。自分の語学学習の計画に沿ってやるだけで一日が終わってしまう毎日なので、2月もあまりnoteは書けないかもしれない。週に一回は語学をやらない日にするつもりだったが、少しはやらないと気持ちが悪いと感じるくらいにはなっているので、無理にやらないということもないかなと思う。語学をやらない日を作っても、だいたいその日は一日日本語の本を読んで終わるような日が多く、結局noteを書こうという気持ちにはならなかった。読みたい本も死ぬほどあるし…早く分身できるようにならないかしら。なにせやりたいことは多すぎるし、時間は少なすぎる。現在ニートという可処分時間が人生で最大の時なのにどうしてこんな悩みが発生するのか、という感じだ。自分を封じ込めてやりたいことを探さなければ人生は長く感じるが、やりたいことに少しでも目覚めてしまうと人生は短すぎる。2024年も12分の1が過ぎた。死んでしまう前にやりたいことをひとつひとつやって行こう。


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