天下の大将軍を狙う猫
よく、ここまで伸びるもんだな…と思う。猫って実は長い。
ただ、この長さが出るようになったのは、ここ最近の話。
我が家には2人の人間の兄妹と、その下に2匹の保護猫がいる。
人の方は私から生まれているので、出所も年齢もはっきりしている。
猫のほうはどちらも路上出身者なため、種類・年齢ともに不明だ。
だけれど、彼らにそれをどうこう思うそぶりは全くない。
今では4兄弟とも、悠然と我が家のリビングを使って伸びている。
ただ、一番下の信ちゃん(しんちゃん・オス:キングダム・信より命名)は、我が家に来た当初は、全く違った。
誰とも全く目を合わせず、小さくなって、隙あらば脱走を狙っていたのだ。
今思えば、突然、見知らぬ家に連れてこられ、不安だったのだろう。
それに、先住猫の零くん(ゼロくん・オス:名探偵コナン・降谷零から命名)のことも、相当に恐かったのだろう。
そんな中、下僕の少年から天下の大将軍になりあがる、『信』という壮大なキャラクターの名前を、そのまま付けられた「信ちゃん」は、何よりもご飯が大好きになった。
朝はご飯がもらえるまで、あの手この手で母を起こす。『ネバーギブアップ』と言う言葉は、信ちゃんのためにあるのではないかと思うほど、しつこい。
いい加減、根負けして4時頃にはご飯を出すのだが…
家族が起きてくる6時半ころには、『朝ごはんまだですかー?』的な顔で無言の圧をかけてくる。朝の記憶はどこへやら…
将軍を目指すため、過去にとらわれず、常に今を見るということか。
第2回目の朝ごはんが終わっても、絶対に、ご飯皿は片付けさせてくれない。
少しだけご飯をキープしておくのが彼の好みなのだ。
お皿ごと片付けられてしまうと、「俺の好みに合わねぇ」的な不満げな顔で迫って来る。
将たるもの、いついかなる時も、食料の確保を怠ってはならない、ということか。
だから、ご飯スペースの近くを通るたびに、『お残しのちょい食べ』をするのが彼の日課となり、その結果は如実に彼の腹まわりに現れている。
信として大将軍になる前に、メタボになりそうな勢いである。
実は我が家に、ここまで食に対する執着があるメンバーは他にいないので、信は割と異色の存在である。
そして、この『食への執着』という本性をさらけ出すようになった頃から、信は本領を発揮するようになってきた。
あれだけ恐がっていた兄猫、零君に対しても、しつこく絡んでいく。
今では猫パンチを食らっても、負けない。
兄猫の零君は、手足を伸ばすと体長1m近くある、かなり大型の猫さんだからして、信より一回りは大きい。
だから、零君の猫パンチは、風邪を切るビュンッという音と共に、かなりの破壊力がある。さながら王騎将軍の鉾のごとき、一撃なのだ。
そんな、王騎将軍の一撃にも屈せず。
場合によっては、王騎将軍の食べ残しをコッソリつつきながら。
今日も、お気に入りの段ボールでまったり昼寝する信ちゃん。
こいつは、本気で我が家の大将軍を狙っているのかも、しれない。
そうしたら、私は台所番くらいにはしてもらえるだろうか?
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