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ヤスミラ・ジュバニッチ監督『サラエボの花』ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が残した傷跡



<作品情報>

ボスニア内戦から10数年の時を経たサラエボを舞台に、戦争の犠牲となった女性の再生と希望を描いた人間ドラマ。女性監督ヤスミラ・ジュバニッチがメガホンを取り、デビュー作にして06年度ベルリン国際映画祭でグランプリに輝いた。母娘2人でつましい生活を送るエスマと12歳のサラ。シャヒード(殉教者)と聞かされていた父親の死に疑問を持ち始めたサラは、真相を話そうとしないエスマに反感を募らせていき……。

2006年製作/95分/PG12/ボスニア・ヘルツェゴビナ・オーストリア・ドイツ・クロアチア合作
原題:Grbavica
配給:アルバトロス、ツイン
劇場公開日:2007年12月1日

https://eiga.com/movie/53096/

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

おいしい水
大傑作『アイダよ、何処へ?』の監督ということで期待していました。そしてその期待に違わぬ秀作でした。とてもいい。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が残した傷跡を切実に描いています。シングルマザーの女性と娘を描いたシンプルな作品ですが、深い傷跡を観客にも残します。
内戦ものは辛くてあまり観ないのですが、本作は観てみるとちょっと違った視点です。母娘を淡々と映し、その背景に内戦が浮かび上がってきます。その視点が実に見事です。
こういうことが出来るのが映画だよなという作品でした。希望を残す終わり方も素晴らしい。『アイダよ、何処へ?』ほどではないがかなり気に入った作品になりました。

吉原
娘の修学旅行代を稼ぐために夜職をするシングルマザーと年頃の娘を描いた作品。紛争から数年が経っても尚、癒えない戦争の傷跡を描いています。
母親は序盤から急に怒り出したり、体調が悪くなったりと何かしらの不安定要素を孕んでおり、これが紛争によるものであることは途中途中で何となく想定がつくが、ハッキリと示されません。そのまま、周りの人間や娘との関係性も不安定になっていく様が観ていて痛ましかったです…
誰にも言えないような大きな悩みを抱えながらも生きていくしかない。彼女達に課せられた負担が大きいことに変わりはないけど、希望を見出せるようなラストで締めくくられたのが唯一の救いですね…

<おわりに>

 平和に生きることがなんと尊いことか…痛ましくもあたたかく戦争の傷跡を描いた作品です。

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