見出し画像

Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【9月27日㈬~10月3日㈫】

♪ 秋の風が吹いて~舟をたたむ頃~ 秋の気配を感じると頭の中に流れてくるメロディです。長かった夏がいきなり去って、朝晩はもうすっかり秋。うっかり窓を開けっぱなしにして寝てると、朝方寒くて目が覚めてたりしてしまいます。けど、気候変動のせいなのでしょうか、ここ最近の日本の春と秋は異常に短くて、エアコンいらずの過ごしやすい陽気の日はほんの何週間かしかなく、すぐに暑くなったり、寒くなったり。今年の冬もきっとすぐに来てしまうのでしょう。短い秋、皆様におかれましては、どうぞ満喫して下さいね…、などと今週はオーソドックスに時候の挨拶から入ってみました。(冒頭の歌詞、誰のなんという曲か分かる方は、1950年代~60年代前半生まれの方でしょう。カラオケご一緒したい。笑)。

“芸術の秋”。映画館通いにも精を出さなくては、ということで、先週末は『ロスト・キング  500年越しの運命』を観に行ってきました。ふとしたきっかけで歴史上の人物リチャードⅢ世にハマった一般女性が、独自の調査で500年行方不明になっていた王の墓を発見してしまう、という実際にあった出来事を映画化したドラマ。監督は『クィーン』('06)、『あなたを抱きしめる日まで』('13)のスティーヴン・フリアーズ(私的には『グリフターズ 詐欺師たち』('90)がベスト!)。久しぶりに正攻法というか、正統派なイギリス映画を堪能させてもらった感じ。サリー・ホーキンス扮する主人公の、リチャードⅢ世へののめり込みぶりにめちゃめちゃ共感してしまったこともあって(私にも“推し”がいるので、我が身を重ね合わせてしまいました。照)、年間ベストテン入り候補の1本となりました。

珍しく他社さんの映画について長めに書いたのには、実はワケがあります。上記の文章が、いわゆる“ステルスマーケティング”にあたるのか、あたらないのか、の実験です。この10月1日から、広告であるにも関わらず、広告であることを隠す、いわゆる“ステルスマーケティング”が景品表示法違反となり、罰則規定が設けられることになったのをご存知でしょうか?9月29日付の業界誌 文化通信に詳しめの記事が掲載されていました。デジタル・マーケティングに精通していて、配給も積極的に手掛けているフラッグさん(現在『ファッション・リイマジン』が公開中です)が「知らなかったでは済まされない『ステマ規制』の対策と注意点」というオンラインセミナーを開催したそうで、その概要がトップニュースになっていました。

“ステマ”というと例えばある有名人が、スポンサーからギャラをもらってやっているにも関わらず、偶然知ったかのように装って「この化粧水、すごく肌にやさしいわ。嘘だと思ったら試してみ」みたいな投稿(ダサい例。笑)をSNSでする、というのが一般的なイメージだと思うのですが(要は“やらせ”ということですね)、その記事によると、映画の場合も、インフルエンサーや一般の方を試写会に招待して情報を発信してもらう場合も、「試写会に招待してもらいました」といった断りを入れて投稿してもらう必要が生じるそうです。たとえ「感想を投稿して下さい」と依頼しなくても、口コミを目的に無料招待している時点で、事業者とインフルエンサーの間には特別な関係が発生していて、発信内容が規制の対象になりうる、ということみたい。これだけSNSが発達してくると、有名人と一般人の境界線もあいまいなワケで、前までは「この化粧水、すごく肌にやさしいわ」(しつこい)に注意していれば良かったけど、それだけでは済まない、ということなのですね。

そうすると、私の『ロスト・キング』評は規制の対象となるのでしょうか?答えは「ならない」ですよね?なぜなら配給のカルチュア・パブリッシャーズさんから利益を得ているワケではないし、試写会に招待して頂いて観せてもらったワケでもないし、「サイト上で褒めたら、ご飯をおごってあげる」と言われているワケでもない(笑)。

今後はプレス向け試写や一般試写でご覧下さって、SNS等にいち早く感想を投稿して頂く場合は、著名人、一般の方の隔てなく「試写で観た」という一言を入れて頂くようお願いしていかねばならない、ということでなのでしょうね。ちなみに“ステマ”と判断された場合は、事業者(広告主)には課徴金が課せられるだけでなく、消費者庁のホームページに違反内容が掲載されるため、企業の社会的信用やブランドイメージの低下につながる可能性もあるんだそうです。どんな事例が出てくるのか、注視してみたいと思います。

マ~リア~ 『オオカミの家』

さて。皆様の生の声、口コミによってここまで広がった『オオカミの家』ですが、有名人の方も自発的に劇場に足をお運び下さって、ラジオで語って下さったり、SNSに投稿して下さったり、“ステマ”とは無縁に、自然発生的に評判が広がり続けています。本当に有難い限りです。渋谷シアター・イメージフォーラムでの上映は、今週末10月7日㈯から8週目に突入!同日、川越スカラ座長野 上田映劇愛媛 シネマルナティックでの上映もスタートします。川越スカラ座では、15:00の回上映後、渋谷哲也さん(ドイツ映画研究・日本大学教授)と三枝桂子さん(表象文化論・日本大学文理学部ドイツ文学科助手)によるアフタートークも開催。お近くの方はぜひ!!

texte de daisuke SHIMURA


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?