翻訳の研究について ~translation studies の入り口【断想】
翻訳(translation)は、外交、貿易、布教、統治、文化・思想・学問・技術の伝達や受容など、多種多様な場面で、様々な担い手によって行われてきた。歴史上常にその実践が先行してきた翻訳は、必ずしも研究の対象として重要な位置を占めてきたわけではない。
もちろん翻訳の議論の萌芽は確かに古代にまで遡ることができる。
ミカエル・ウスティノフの翻訳史を筆頭に、翻訳学の入門書において近代以前の研究史を扱う際、精神的な始祖として必ず言及される人物は、キケロー(前106-前43)とヒエロ