張替日記#22 遠方からの問い合わせ
マガジン「椅子と手のひら~張替日記~」
いつも通り、メールで送られてきたお問合せの椅子の写真を見て、御見積を返送する。
とある日、電話がかかってきて先日御見積を返送した方より、
「東京から行くので、(椅子の)座面だけ外して持って行こうと思ったのですが、どうも外れなくて…そのまま持ち込んでもいいですか?」
というお電話。
メールだけでは、どこにお住まいかなんて伺わないので、県内多くは近隣の市町村からの問い合わせだと勝手に思っているわけですが、まさかの東京から。
当店では、ご来店頂けるお客様もしくはご紹介によるお客様のご依頼しか承っていないので、
一応、
「東京にも椅子張り屋はたくさんありますが、当店で大丈夫ですか?」
とお伺いしたところ、実家の片付けで当店の近くをよく通るそうで、東京のどこかを探すよりも、よく通る知っている場所の方がいいとのこと。
それならばと、
「もちろん、本体ごとお持ち頂くことの方が多いので、そのまま持って来ていただいて大丈夫ですよ。」
と頂いた―メールで椅子の写真を確認する。
あ、・・・
自分もすっかり外れると思ってメールを返信してるやん!
お客さんはクッションのへたりが気になるので、生地は使えればそのまま使ってもらえればとおっしゃっていたのですが、
よくよく写真を見れば、不可能ではないけれど、張り替えを是非ともおすすめしたい構造。
クッションだけを直したいという方にも、
・クッション材だけ交換した場合
・張り替え修理を行った場合
の2種類をいつも御見積差し上げるので、
頂いたお電話で張り替えをすすめたい旨をお伝えし、快く張替をしてくださった先日の修理について。
回転式ダイニングチェアの座面のみ張替・修理
東京からの道中、丁寧に梱包され、運んでこられました。
パイピングを挟んでいる部分で、針で留めています。
この溝の針を抜くのを、椅子張り屋さんは嫌がることが多いです。
縁を傷つけないよう、細い溝に打ち込まれている針を抜くのは、なかなか神経を使うし、そんな専用の工具など売ってはいないので、私は改造して、自作のものを使っています。
先輩たちはある工具で四苦八苦していたので、
誰かに教えてもらったわけではなく、ホームセンターをまわり、何個か作ってみたり、使うたびに削ったりしながら改造。
(そんな工具の話はまた今度)
破れていなければ、そのまま引っ張り直してもいいと思っていましたが、前の方が少し破れていたので、交換することにしました。
新しいクッション材をのせ、
型だし、
裁断・縫製して、
張ります。
背面は問題ないので、張り替えていませんが、
同じ色の生地を探しながら、
お客さんと二人で、あっちかこっちかと、やっぱりこっちか?あれ?どっちだっけ?と笑笑しながら、何だか面白いひと時でした。
ということで、大変喜んでもらえ、遠方から来ていただいた期待にお応えできたかしら、うんうん、と思っています。
後日お電話まで頂き、何か不具合が??と思って電話を取ると、お礼の電話ですと。
「おかげさまで腰痛に悩まされずに過ごせています。」
とうれしい報告を頂きました。
私も腰痛持ちですが、座るって結構大事な、奥深い人間工学なのです。
古い椅子を張り替えて展示販売する「座と輪の古椅子展Vol.2」の開催を目指しています!