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新しい君と往くステージを

 今日も変わらずsumikaを聴いている。彼らの声とサウンドを導にやっとの思いで歩き続けて、どうにか今に辿り着いている。僕の高校生活、特に受験期を救ってくれたのは間違いなくsumikaだった。sumikaがいなければあの日僕は受験会場に向かうこともできなかったし、今もこの街で生活していないだろう。sumikaは、自信を持てる要素なんて何一つ持ち合わせていない僕が少しだけ前向きに生きる為の”主役変更ボタン”を差し出してくれる。sumikaの楽曲たちはいつだって僕の生活の一部だった。

 以前も書いたけど、国公立大学入試の前夜、僕の受験期に一番の心の拠り所でいてくれた存在の訃報が舞い込んできた。心からsumikaを信奉していて、愛していて、またsumikaに救われ続けてきたから、すぐには立ち直れなかった。それでもsumikaを聴きながら眠りに就き、sumikaを聴きながら会場に向かった。結果として、ちゃんと合格できた。これも絶対にsumikaのお陰だ。一生かけても返せないくらい、救われている。

 訃報を受けて、sumikaはライブ活動を休止した。仕方がない。受験期にsumikaのツアーに参戦したかったけど参戦しない方を選んだ僕は、もう二度と彼らに会うことができないのかと思うと、あの時無理にでもライブに行けばよかったと強く後悔した。帰ってきてほしいとは勿論思っていたけど、彼ら自身が望まないなら帰ってこなくたっていいと思っていた。それでも僕は、きっと変わらずsumikaを聴き続けるだろう、そんな確信があったから。

 だけど、sumikaはすぐに帰ってきてくれた。メンバーとスタッフ、そして一人一人のリスナー(住人)全員を、一つの住処を共有する”家族”として捉える彼らだからこそ、メンバーが一人欠けた状態でsumikaを続けることには少なからず躊躇いだってあったはずだ。それでも、こんなにも早く帰ってきてくれたのは、間違いなく住人の居場所であり続ける為だ。身勝手かもしれないけど、僕はそう思った。4月22日には新曲「Starting Over」をリリースし、4月30日の「ARABAKI ROCK FEST」や5月3日の「JAPAN JAM」のステージに立って再スタートを切った。「Starting Over」は活動休止よりも前に制作された楽曲であり、環境が変化する春特有の憂鬱を振り切って歩き出す為に背中を押してくれる前向きな応援ソングだ。それでいて、奇しくも今のsumikaの為に存在している曲であるかのようにも思える。sumikaの再スタートを象徴するようなこの曲を聴いて更に自分はsumikaが好きなんだって実感した。でも、フェスのセトリには「Starting Over」は一度も入っていなかった。

 そして5月14日。以前から予定されていた横浜スタジアムでの10th Anniversary Live「Ten to Ten to 10」が予定通り開催された。僕は結局、今回も参戦しなかった。いや、参戦したかったんだけど、名古屋に住み始めたばかりで、生活にも慣れないし予定もわからない状態で横浜に遠征する勇気は流石になかった。行きもしないのに何故かこの日が待ち遠しかった。それはきっと、自分の家族(sumikaとその住人)にとっての幸せな瞬間を願っているからだろう。Twitterを見ていると、全国各地から住人たちが集まり、地元のお土産や自作のグッズなんかを持ち寄って交流していた。そんな幸せな空間に居合わせることを選ばなかったことをまたしても後悔すると同時に、住人たちが幸せを感じていることがそれだけで嬉しかったし、見ているだけで幸せをお裾分けしてもらっている気分だった。披露宴とかに参加したら多分こういう感覚になるんだろうね。”雨天決行”で開催されたこのライブは4時間に渡り、全33曲(メドレーの曲も合わせると40曲)が披露された。セトリを見れば、sumikaというバンドの開幕を象徴する「雨天決行」に始まり、「Lovers」「ファンファーレ」「Shake&Shake」といった説明不要の定番曲から、住人から絶大な支持を誇る「透明」や「オレンジ」、更には「惰星のマーチ」「New World」「No.5」といった僕は大好きだけどハマスタで披露されるとは思っていなかった楽曲まで、どれも僕の大好きな曲ばかりだった。何といってもこのライブでは「Starting Over」が遂に初披露された。めざましテレビでその様子は見たけど、サビ前に花火が打ち上がっていたりして演出が盛大だった。参加した住人の感想やレポなんかを読んでいるとより一層無理にでも行くべきだったという後悔が募っている。僕が今ここに書いていることは全て伝聞と妄想に基づくものなので、ライブについてちゃんと知りたい方は、こんな文章じゃなくて実際に会場に足を運んだ住人の皆様のレポを読んでいただきたい。

 ライブ後、会場では怒涛の情報解禁があったらしく、ライブを終えてすぐに公式から夥しい数のアナウンスが出された。その一つが「Starting Over」のMVの公開だった。ずっと待ち望んでいたけど、期待を裏切らなかった。序盤で映し出される3人になってしまったsumikaの姿にはやはり少し喪失感が残る。でも、彼らは停滞するつもりなんてない。彼らが掲げる旗の下に年齢も性別も背景も異なる人々が集うシーンは、一人一人の住人にとっての居場所(住処)を目指すsumikaの変わらない姿勢を投影している。きっと彼らにとって、sumikaが代替のない居場所なのだ。sumikaはこの先もずっと、”sumika"を必要とする全ての人の為に存在してくれる。新しいsumikaのスタートを表徴する最高のMVだった。

 そして同時に、新しいツアーの開催も発表された。

SING ALONG

 名古屋にもちゃんと会場がある。しかも3回も。やっと、大好きなsumikaに会えるかもしれない。今回こそ絶対に申し込むことに決めた。まだ当選もしていないのにもう既にsumikaに会えるような気でいる。延期になっていたドキュメンタリー映画の公開日程も発表されたし、それも必ず見に行かないと。相変わらず僕の生活の中にはsumikaが溢れ返っている。

 sumikaが与えてくれるのはいつだって何よりも優しくて暖かい居場所だ。日常の一つ一つのフェーズに寄り添って、マイナスの感情も全部肯定して迎え入れてくれる。理由もなく憂鬱な朝も、後悔ばかりが募って自己嫌悪に陥りそうな夜も、心の内側からそっと摩ってくれるような、唯一無二の暖かさがsumikaというバンドの魅力だ。「Starting Over」もまた、一人一人が抱える憂鬱に向き合ってくれるような、sumikaにしか描けない暖かさと力強さを共存させている。

 "歩き出すのさ 未だ見ぬストーリーを"。
 少し遅れたけど、sumika10周年おめでとう。
 どうやらこれからも、sumikaに救われ続ける毎日になりそうです。

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