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ある密かな恋①

サラリと風になびく髪、髪をかきあげる仕草、結わえる仕草、後ろ姿。
すべてが印象的で、自分の瞳にずっと閉じ込めていたい気持ちに駆られてしまった。
そこに居る他の男子が邪魔に思えた。
笑いかけている人がうらやましくてたまらなかった。
自分はそれをブラウン管に映るもののように感じ、まるで清純で触れてはいけないもののように思っていた。
触れればチョウチョの羽根のように繊細でつぶれてしまいそうな。
そんな気がしていた。

これは、僕の少年。主に小学校のときに感じていた密かな恋にも愛にも発展しなかった気持ちである。
こんな気持ちをほのかに打ち明けられずに持っていることは痛いことでもあった。
見るたびに、いや正確に言うと、目に入るたびに鼓動は高まり目は一点に集中してしまう。
今も思う。なぜ僕はあれほどまでに彼女に触れられなかったのかと。
あまりにも映る姿がまぶしく自分がみにくいものかのように感じてしまうようで。

彼女とすれ違ったり、目に入ったりすると嬉しいのだがコンプレックスを感じてしまっていた。
なぜこんなにじぶんはみにくいのだろう、なぜこんなに自分は弱いんだろう。なぜ自分はこんなに口下手なんだろうと。

特にクラスが同じだった頃。まるで異世界のようにそれを感じた。
同じ班になり、直接褒められたときは世界が輝いて暖かく感じたものだ。

特にコロナ以来、世の中全体が閉塞感をまとっている。同調圧力が支配して、ぬるくて、しかしだるい空気感が世の中を支配していると感じる。

しかし、あの日、あのときの感覚を手にすることができれば、一気にそんなことはどうでもいいものになるとさえ思う。

それくらい自分はあのときにときめきを感じていた。

形あるもの必ず無くなる。自分の肉体もそう。30代の肉体もいつかは朽ちる。
40歳を前にしていつまで生きられるのかなぁ。
そんなことを思う。

体と心が感覚を覚えているうちに、あの頃の記憶を書き綴ろうかなと思ったのだ。

少しずつ記憶を紐解いていこうと思う。

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