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20030330 水素自動車(2)

 水素自動車$${^{*1}}$$の続き。「地球環境にとって、自動車にガソリンをそのまま使うのが良いか、水素を使うようにした方がいいか」をどのように考えればいいか。

 例えば、一台のガソリン車を製造してそれを販売して何年か使って廃車にする、とする。この間にどれだけの化石燃料を使って二酸化炭素を排出するかを計算してみる。次に水素自動車の場合を計算してみる。双方の排出する二酸化炭素量を比較すればどちらが良いかはっきりする。

 ガソリンを1リットルを燃やすとどれくらい二酸化炭素が出るかは簡単に求まるので、計算自体は簡単そうである。少し考えればすぐ判ることだが、事細かに調べるのは物凄く面倒のようだ。

 自動車の部品は3万個ぐらい$${^{*2}}$$あるらしい。もうこの数を聞いただけで計算をしたくなくなる。それぞれの部品を作る時に排出される二酸化炭素の量を計算しなければならない。数式を解く訳ではないので、コンピュータのプログラムを組んで計算することも出来ない。各部品の製造工程でどのくらい二酸化炭素を排出するかをいちいち調べなければならない。

 ところが水素をそのまま燃やす水素自動車$${^{*3}}$$ならば、その構造はガソリン車と殆ど同じなので自動車自体を製造する時の二酸化炭素の排出量の計算はどちらも同じ様な結果になるはずだからわざわざ計算する必要はない。

 それでは燃料のガソリン$${^{*4}}$$や水素を自動車のタンクに入れるまでに排出される二酸化炭素はどうであろう。ガソリンならば、中東で原油を採掘、ディーゼルエンジンで動く石油タンカーで原油を輸入、石油精製で二酸化炭素排出と火力発電による電力の使用、ディーゼルエンジンで動くタンクローリーでガソリンスタンドまで輸送といった各場面で二酸化炭素が排出$${^{*5}}$$される。

 水素はどうであろう。水素スタンドがまだないから水素スタンドの建設が必要である。建材を作ったり建設工事をするには電力や石油燃料が必要である。水を電気分解して水素作るのならばまた電力が必要である。この電力を風力や水力、太陽電池のみで賄うのならば、今よりもこれらの施設を相当増設しなければならないだろう。その建設には電力や石油燃料が必要である。

 出来るだけ正確に計算しようとするときりがなくなる。水素スタンドの水素タンクを作るのにどれだけ二酸化炭素を排出するか、工場で作った水素タンクを水素スタンド建設予定地にトラックで搬入するのにどれだけ二酸化炭素を排出するのか、工場で水素タンクを作る人が家で使う電力やガスで発生する二酸化炭素はどれくらいか、と水素タンク一つとっても計算する項目が沢山出てくる。

 実際にこういった計算を水素自動車でやっているかどうか解らない$${^{*6}}$$が、化石燃料がないと水素自動車に完全移行することは不可能であることははっきりしている。どのみち化石燃料を使って二酸化炭素を放出するのである。化石燃料が水素エネルギーに全て置き換わった時、水素で得られるエネルギー供給量はかつての石油燃料で得られたエネルギー供給量と同等になり得るのだろうか。足りなくて、結局、石油を燃料として使わなければならないのかも知れない。

 地球環境を維持していくためには、人類の活動を停止するのが一番簡単で明快な答えだろう。

*1 20030329 水素自動車
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*3 BMW Japan BMW 750hL
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*6 燃焼と地球環境(1)

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