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オンラインで繋がるということ

先週の水曜日から世の中が一変してしまったが、まだ1週間しか経っていない。だが、すでにもう1週間も経ってしまったともいえる。状況が好転する兆しは全くない。

Facebookでモスクワ在住の友人の動向を追っていたら、尊敬する友人がキエフの地下鉄の写真を上げているのを見つけた。なぜ彼は今、よりにもよってキエフにいるんだろう。

天才肌の彼のことだ、何か思うことがあって現地に向かったのだろうか。投稿やコメント欄を追うだけでは事情がよくわからない。とにかく友人たちは一様に「状況を随時知らせて!」と心配の声を上げていた。当然のことだ。

直接声を掛けることもできず、オンライン上にいるグリーンのサインを見て安心するよりほかなかった。「よかった。まだ繋がっているんだね。」

ただもう1週間になる。物流も途絶えているし、これからより一層現地は過酷な状況になっていくはずだ。思い切ってまずはモスクワの友人に、メッセージを送ってみることにした。メッセンジャーが機能するかどうかハラハラしたが、こちらはどうやらまだ機能しているらしい。

「落ち着かない日々を過ごしている。人々はプーチンの邪悪な意志の人質となった。 友人はキエフに閉じ込められていて帰れない。奇跡のような平和を待ち望んでいるよ。」

こんなメッセージを受け取った。彼の友人がなぜキエフにいるのか、と尋ねると、ちょうど叔母の葬儀に参列するためにキエフに滞在中だったという。なんというタイミングだろう。声をかえてあげてくれ、と頼まれた。

今、この状況下でキエフにいる友人に何を言えばいいのだろうか。悩んだ挙句、そのままの気持ちを伝えることにした。メッセンジャーだが、こちらも思いのほか早く繋がった。

やり取りをしていると、突然こんなメッセージが入ってきた。

Сейчас был сильный взрыв. Но все ок
今、大きな爆発が起こった。でも大丈夫。

オンタイムでリアルな状況が入ってくるのだ。生き延びてください、としか返しようがないではないか。ベルリンでただ座っていることしかできない、と言ったら、それは世界中の人がそう思っているはずだよ、と返事が返ってきた。

とにかく、モスクワにいる母親に会いたい。でも、キエフから出たいとも思わない。友人はそんなふうに今の気持ちを伝えてくれた。

キエフから出たいとも思わない。

この一言が爆発の様子を伝えるメッセージでさらに重みを増す。

彼はユダヤ系のロシア人でモスクワ出身だが、親戚がキエフにいる。そんな人はいくらでもいるはずだ。親戚が住んでいる街に自分の国が爆弾を落とし、侵攻している状況というのは一体どういうことなのだろう。

モスクワに帰りたい、でもキエフに残りたい。

そう言った彼の一言は忘れずに記憶に留めておこう、そう思ってこのnoteを書いている。

早く日常のたわいのないことを書き綴れるようになりたい。


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