見出し画像

仕事の受注方法

元同僚のジム仲間と仕事の受注に関する話をしていたときに改めて気付いたことがあるので、珍しく仕事の話をしようと思う。

ベルリンでフリーランスを10年やってきたわけだが、10年やってこれたのはそれ以前にベルリンの制作会社で社員を10年やってきた経験があるからだと思っている。会社で一体何を学んだのか、ということを考えたときにまず思い浮かぶのが以下の点だ。

・基本的な仕事の受注方法

取引先は主に日本の制作会社だったわけだが、2002年の段階ではまず電話で問い合わせが来ることがほとんどだった。口頭である程度、ロケの内容やスケジュールを聞き、社内のスケジュールを確認した上で受注できそうな場合には必ず書面で先方の希望をまとめたものをもらう、というのが初めの第一歩だった。

そこから先方のプロジェクトの予算内でリサーチのボリューム、ロケの規模、必要となるロジやスタッフ、機材などあらゆるものを調整したり確認したり、といった作業に移行するわけだ。そこで結局一番大切なことは先方の予算内でプロジェクトが遂行できるか否か、の判断だと言っていい。

ひとつのロケを遂行するのに規模が大きいものになると日本側からスタッフが何十名、ドイツ側のスタッフが何十名ということになったりもする。それに付随するコストというものもロケ期間が長いと膨大に膨れ上がる。プロジェクトを始める前に必ずある程度の見積もりを出しておいて、それで先方の了承を得て初めてプロジェクトが進行できる、ということになる。ただし、見積りは多めにだしておかないと後々帳尻を合わせるのに苦労することになるのでその辺の判断も必要になってくる。

こういう手順を何度も踏んでいれば、フリーランスとして個人で仕事を受ける場合でもまずクリアにしなければならないのが先方の提示金額と業務内容の擦り合わせという作業になるのは自然なことである。この先方の提示金額というのがこれまた曲者で業界の相場というものをある程度把握しておかないと痛い目にあうわけだ。

ところが周りの話を聞いていても、これが意外にできていない人が多い印象を受ける。まず、雇用側と被雇用側とで擦り合わせて納得していない状態で仕事を引き受けてしまうとどうなるだろう。おそらく現場で不満が続出し、双方とも気分良く仕事ができない、ということになるのではないだろうか。

とはいえ、ロケの現場でも予想外のトラブルなんてしょっちゅう起こる。道が渋滞していてアポに間に合わなかったり、発注していた機材が日本のものとは違っていて発注しなおす必要に迫られたり。インタビュー相手がドタキャンをしたり。悪天候が続いてしまったり。

アクシデントに見舞われるたびになんとかみんなで知恵を振り絞って乗り切るのもチームでする仕事の醍醐味なのだが、稀にダメなディレクターやプロデューサーがいたりすると、現場の雰囲気はお通夜のようになってしまう。これも場数を踏まないとなかなか難しいのだがそうならないように先に釘を刺したり、立ち回る必要も出てきたりするわけだ。コーディネーターは日本側とドイツ側の関係者の間で板挟みになったりもするわけで非常にめんどくさい。しかも悪天候までコーディネーターのせいにされることすらある。断っておくが、私は晴れ女ではあるが天照大神ほどではない。

何が言いたいかというと、「仕事」となれば雇用側と被雇用側という関係性になるのだからクリアにしなければいけないことは事前にできるだけ確認作業をしてクリアにしてから始めるといいのでは、ということに尽きる。そして、仮に現場で「こんなはずじゃなかった」ということが起きても、その都度双方で意見交換をして最適解を見つければいい。実は単純な話なのだけれど、それがなぜかなかなかうまくいかないのが人間の難しいところだよなぁ、と思ったりもするわけなのです。







サポートは今後の取材費や本の制作費などに当てさせて頂きたいと思います。よろしくお願いします!