赤いリンゴのぼうし
娘が日本語の補習校で書いたという詩を読んでくれた。
始まりはこうだ。
日本に帰ったときにコムサで見つけて一目惚れした赤ちゃん用の帽子。赤いリンゴに見立てられた帽子をかぶった写真を娘に見せたことがある。
「かわいいな、このぼうし。絶対捨てたらあかんで。」
その小さな赤いぼうしをかぶった赤ちゃんの写真を見ながら娘はそんなことを言った。
それを詩の題材に選ぶ日が来るとはなぁ。かわいい帽子をかぶって笑っている自分の赤ちゃんのときの写真がよほど記憶に残っていたのだろう。
確かに自分の赤ちゃんのときや子どものときの写真で心に残っているものが少なからずある。父親がたくさん写真を撮っていたからだ。そして、小さい頃はよく男の子に間違えられたという話を母親から聞いた。母親がそのときから女の子だからといって、ピンク系やひらひらした服を着せたりしなかったからかもしれない。
息子がまだ小さかった頃、小さな私が川で釣りの真似事をしている写真を見せたら、「あれ、これってれいくん?」と自分の写真だと思い込んだくらい面影がよく似ているものがある。
息子には赤いりんごの帽子のようなお気に入りはなかったが、甥のお下がりをもらったズッカのストライプのパンツは丈が短くなっても何年も履いていた。それこそお尻に穴があいていようがお構いなしにパジャマ代わりにしていたのだ。あのパンツを履いた写真がどこかに残っていればいいなぁ。そういえば、息子は初めて乗った四輪車をブッパーと名づけ、いつもキックバイクで爆走するお姉ちゃんを必死で追いかけていたような気がする。一度、ブッパーで走っているときに、歩道が盛り上がったところでバランスを崩し、顎をざっくり切って大惨事になったことも。土曜日だったので、そのまま救急病院へ駆け込んだ。
そんな子どもたちの成長もあっという間。気がついたら赤いりんごの帽子も全くサイズが合わなくなり、ブッパーも普通の自転車に取って代わっていた。娘も来年は15歳、息子も12歳になる。
いろいろと難しいご時世だけれど、生きる力のようなものを身につけて好きなことをしてほしいな、と思っている。
まだ詩は続くんだけれど、今日はこの辺で。みなさん、良いお年を!
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