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「続かない」ことを恐れすぎずに

無視しきれない身体の重たさに怯えて最近、有酸素運動を始めた。
やっているのはフィットボクシング、泣く子も黙る任天堂の、ボクシングと音ゲーを組み合わせたようなエクササイズゲームである。
だいたいストレッチ含めて25分コース、気が向いたら35分コースのボクササイズを、週に5〜6回。

といっても初めてやるゲームではない。
このゲームを買った3年ほど前は絶賛ダイエット中で、筋トレも併用しながらそりゃあ真面目に取り組んでいた。
そこから何かの拍子でそれが途絶えて、そのうちちょこっと始めたり、また途絶えたり、を繰り返している。直近だと今年の7月にもちょっとやってたんだけど、始めた途端にコロナにかかってうやむやになって、だから今回の「再開」は4ヶ月ぶりか。

うーん、全然習慣づいていない。自分でも少しあきれてしまう。
今回は健康診断の結果、というお尻を叩いてくる要因があるので、ちょっとは続くはず。

で、こうやって久しぶりにニンテンドースイッチのコントローラーをフィットボクシング仕様に握って身体を動かす、というイベントが起きると毎回新鮮に驚くことがあって、それが「私、意外と動ける」ということである。

3年前に初めてこのゲームをやったときは、音楽に合わせてパンチを打ったり攻撃を避ける動作をしたりする、ということがびっくりするほどできなかった。

言い訳をします。そもそも前に向かって素早く拳を突き出すなんて動作、人生の中でやったことがないのだから、身体の使い方がまったくわからなくって当然ではございませんこと?
そう、私は筋金入りの運動音痴。ボクササイズ中はテンポのいい音楽に合わせて足でリズムを取りながら左右の拳を繰り出していくわけだけれど、やればやるほど足と手の動きがもつれて、どんどんばらばらになっていく。膝を曲げて攻撃を避ける「ウィービング」の動作を華麗にキメているはずなのに、なぜか見ている夫が爆笑する。我が家のリビングで起こっている悲喜こもごもに頓着せず、ゲーム機から一定のテンポで流れる洋楽ヒットナンバーの陽気さが哀しい。

それでもだんだん慣れてきて、高得点を取れるようになった(パンチを打つタイミングの良さをゲーム機が計測して、採点してくれるのだ)。

そこから前述の通りなんだかやらなくなっちゃって、また再開して、というのを繰り返しているわけだけれど、再開した時はいつも、ブランクの割にリズムよくパンチを打てることにびっくりする。一度乗れるようになった自転車の乗り方を忘れないのと同じように、身体が動きを覚えているらしい。
もちろんすぐに息が切れてしまったり、翌日筋肉痛に苦しんだりはするけれど、初めてゲームをしたときのように手足がもつれてそもそも動けない、という惨状にはならない。ぜぇぜぇ言いながら、少し自分を見直す。

そんなわけで、今日も今日とて仕事終わりに虚空へパンチを喰らわせていた。再開して2週間くらいたつので、だんだん息も切れなくなり、足やお腹の筋肉の動きにも注意を払えるようになってきている。
私の中には「フィットボクシングをやったことのある私」がいるんだなあ、とふと思った。こうして4カ月ぶりに運動を再開させようとしているわけだけれど、「再開」って当たり前だけど、「ゼロから」じゃないんだなあ。

もちろん、3年間欠かさず運動を続けてきた私というのがもしいるなら、その私の方が間違いなく素敵だ。でもそんな人間はこの世にいない。それならそれで、3年前には確実に持っていなかった「ボクササイズのための感覚」が身体にある程度定着している私、途切れた運動習慣をもう一度再開させようとしている私というのも、なかなか素敵じゃありませんこと?

高校生や大学生の頃の潔癖な私なら、こういう考え方のことを、欺瞞だ、と断じていたと思う。やると決めたことを途中でやめちゃうなんて、そんでそんな自分をなあなあで認めてあげるなんて、大人としてどーなの。

33歳の私はというと、まあ細かいこと気にせんと、と思っている。だって「やると決めたことができなかった、もうだめだ」と言って二度とやらないよりは、身軽にもう一回やる気を出せるほうがよくない? そのために自分にちょっと甘いことを言うくらい、別にいいんじゃない?

明日も多分、運動をする。在宅勤務の予定だし、仕事もそんなに立て込んでいないから。
でももしこの先、繁忙期やその他なんやかんやでまた身体を動かすことから遠ざかってしまったとしても、それで自分をダメな奴だと思って悲観しすぎるのはやめようと思う。

続けられなかったことそれ自体よりも、「どうしたらまた、再開するためのやる気を出せるか」に目を向けるのが、ふてぶてしさを備えてきた年ごろの大人にはきっとふさわしい。


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