見出し画像

挨拶ができる人は、何でもできる。

さて、4月になった。
ご入学やご入社された皆さま、おめでとうございます。
自分は特に変わらなくても、新鮮な気持ちになれるこの季節は背筋が伸びる。
曲がりなりにも社会を経験した者として一つだけアドバイスするなら、「誰にでも挨拶をすること」だろうか。
これにに関して思い出したことがあったので、書いてみようと思う。

私の人生のモットーは「当たり前のことを当たり前にすること」である。
その基本中の基本が「挨拶」である。
難しい勉強や仕事はできなくても、挨拶なら私でもできる。
だから、挨拶だけは必ずすることにしていた。

そんな私が出社する時、毎朝すれ違う清掃のおじさんがいた。
年齢は60代くらいだろうか。いつも帽子を被っているので顔はよく見えない。恐らくビルメンテナンス会社の方だろう。
私は毎朝「おはようございます」と挨拶をした。

だが、おじさんからは返答がなかった。

私「おはようございます」
おじさん「…(無言で足早にすれ違う)」

毎日こういった具合だ。
あれ?と思ったが、こういう人なんだろうと思うことにした。
だが、自分が挨拶をしないのは気持ち悪いので、毎朝空振りのおはようございます、は続いた。

ところがある日、そのおじさんが私以外の人に「おはようございます」と挨拶をしているのを目撃してしまった。
相手は恰幅のいい50代の男性で、私の上司だ。
私はムッとした。
おじさんは、相手によって挨拶するかしないのか決めていたのだ。
私は30代の女性で、見るからに会社で役職に就いているようには見えない。
だから、挨拶を返してくれなかったのだ。

「ちくしょー!なめんじゃねーよ!!!」と心の中で叫んだ。

そこで私は決めた。
相手の反応に関わらず、挨拶をし続けると。
来る日も来る日も、「おはようございます!」とおじさんに挨拶をした。
だが返事はない。
もはやイラっとすることもない。

そんな空振りの挨拶をし続けて7か月ぐらい経ったことである。
出社して、私はいつも通りおじさんとすれ違う。

「おはようございますー」
すると
「…おはよございますー」

!!!??????
おじさんが…ついに…挨拶を返してくれた!!!!!!!!!!!!!!

びっくりした。めちゃくちゃびっくりした。
きっとこういう時、「とっても嬉しくて、今までのことなんて忘れちゃいました☆世界は優しい!!」などと言えた方が見映えはいいのだろう。
だがごめんなさい、それよりもびっくりしたという気持ちが先に出た。
そして、何だか偉業を成し遂げた気になった。
私がおじさんを、挨拶のできる人間に育てた、そんな気持ちになった。

そして、なんだか、勝った気持ちにもなった。
チャンピオンベルトくらい欲しい気分だ。

それ以降、そのおじさんはぱたりと見かけなくなった。
退職したのか、異動したのか分からないが、もうずっと見かけていない。

もしかしたら、最後に挨拶を返してくれたのか?
いや、それなら最初からしてくれよ。
けどまあ、よかった。気付いてくれたから。
でもね、おじさん、今度はちゃんと全員に、はっきりした声で挨拶した方がいいと思うよ。
年下の女から言われるのは不服かもしれないが、それだけは伝えておきたい。

「当たり前のことを当たり前にする」、それだけで人生は変わってゆく。

いただいたサポートは今後の活動のため、とっても大切に使わせていただきます。