"女の子紹介する"の価値

僕は結婚してから2年以上になる。
そこから"女の子紹介する"ができなくなったし、してもらえなくなった。







もちろん変な意味じゃなく漫才の話です。
この2年、ユニット掛け持ちなどもありそれなりの数の漫才を書いてきたがそこで初めて"女の子紹介する"がとても便利だったことに気づいた。

絶対的7%というコンビを組んでいた頃、よく作っていた形の漫才で"相方の行動を人づてに聞いている"という状況が必須のネタがあった。
存外、大人が大人に人を紹介する場面というのは世の中にそう多くなくて「美容院」「マッサージ店」「知り合いのやってる飲食」などの"お店系"、そして場所だけ変えればなんとでもなる"デート系"の2つが殆どになっていた。

結婚前、この事は少し考えていて"女の子紹介する"はもう二度とできひんくなるんかぁ と思い、ちょっと本気で結婚を伏せることも考えた程だ。
"紹介される"ならまだしも"紹介する"は別にいいのでは?と思われるかもしれないが既婚者だと知ってる人にとっては「お前に女友達紹介した時…」から始まる漫才、なんかちょっと浮気の匂いするし。
かといって「お前にウチの嫁の友達紹介してあげた時…あ、僕若手やのに結婚してるんですけど。」から始まるのもうるせぇ。
だから迷ったけどまぁでも結婚したからこそできるテーマもあるやろし普段のエピソードに奥さんや子供を登場させられないのも面白くないか、と思い直した。
このことに対してはなんの後悔もないし(結局結婚4ヶ月後に絶対的7%は解散してるし)良かったと思っているが、既婚者として2年間漫才をちょいちょい書いてみて結婚するまで気づかなかったちょっとした漫才における難点を書いてみる。
結婚を視野に入れてる芸人と推しが既婚者漫才師のファンの方は ほーん と思ってくれたら。

まぁまずは先述にもあった通り女性絡みの設定自体はかなり厳しい。
容易に想像できるところで言うと「合コン」「マッチングアプリ」「彼女」である。
これらを直接的女性起因設定とする。
マッチングアプリなんかはなかなか惜しまれる。合コンに近いものは何かしら飲み会なりで代用できる可能性とあるが、"知らない人と顔を合わせずやり取りをする"等は他には代えがたいレア状況である。
それでいうと「彼女」は「奥さん」で代用出来るのでは?と思われるかもしれないが色々と感覚が違ったりする。
例えば「彼女の家」って概念が無くなるし(同棲していない夫婦がいることを変だというわけではなく!)「メンヘラ行動」的なムーブは夫婦でやるにしてはなかなか難しいだろう。
この手の設定はまぁその分結婚してるからこそ出来る設定も増えることを加味したらトントンだと思えるので問題無しやし予想の範疇だった。
問題は次からだ。

次に挙げたいのが間接的女性起因設定である。
これは女性の存在が大事な訳では無いけれど男女関係が流動的であるからこそできる、そこから起因する行動等の設定である。
例えばだが"かなり落ち込んでいる"という状況が欲しい場合、励まし方でボケたかったとして、「おばあちゃんが亡くなった」は重すぎる。茶化すな!がさすがに茶化すな!過ぎる。
「お金騙し取られて…」ではその経緯が気になるし「財布落として…」では悲しいより悔しいが勝ってしまう。
みんながその辛さを通った経験が割とあるかつ最短の説明で落ち込める。ギリ茶化せる範囲であり、本人的にはかなりキツいが後から笑えるみたいなのが世間のベースとしてある。これの嬉しいバージョン(最近彼女できてん!ではしゃぐ等)も含め、こういう脚本上の便利なツールとしての"女性関係"が間接的女性起因設定である。

そして最後に、これが1番想像ついてなかったし使えなくて不便だなと思うのが、副次的女性起因設定である。
これは実在でもない、まだ見ぬ女性に対してのパートナーがいないからこそ使える設定のことである。
簡単な例で言うと「モテたいから○○始めてみようと思って」。
そして今回の本題、「女の子紹介する」である。
「女の子紹介する」は直接的女性起因設定でもあるがほかの意味でも使えない。
僕はあまり使った事がないが何か相方に無理を通す際「お願い!今度かわいい女の子紹介するから!」「しゃあないなぁ」はかなり万能な交渉材料である。
これの代わりになるセリフはかなり難しい。
なぜなら僕たちは売れていないので金や(金に換算できる)価値のあるものを持ちえない。
持っていたとして金で何か無茶をお願いすると笑いにくいし、かといって金に準ずる何かの時、
なんでそんな価値あるもん持たざるやつが手放せるねん
が来てしまうし、
例えば「今度高級寿司おごるから!」では
なんでこいつそんなん奢れる余裕あるねん
が働く。
よって「○○あげるから△△して」はかなり設定として通しづらいのだ。
つまりここで必要な交渉材料の条件とは

①売れてない芸人が持っていて(持っていてもおかしくなくて)

②かつその人にとっては有用性が無い可能性があり

③相方にとっては非常に価値があり

④アホらしい(金のように生々しくない)

これを満たすのが"女の子紹介する"である。
①は繋がりという金に替えられないかつ誰が持っていても不思議じゃないという点でクリア。
②は自分にとって減るものじゃないのと、そこに更に「お前のことタイプって言うてる女の子」であったり単純に「巨乳の女の子」等の属性が乗っかるとなお良い。
自分のタイプじゃなかったり、俺は向こうのタイプじゃないから付き合えないがお前なら付き合えそう で理屈が通る。
③④は言わずもがな。
激アツ話やし、食いついてる姿がアホらしく映る稀有な素材である。

この副次的女性起因設定が僕の中で1番使えなくて不自由してるなぁと感じる部分である。
あくまで無限にある設定の1要素なので誤差ではあるのですが!!
1番変わったなと思う部分なので記事にしてみました。
「独身は気楽でいいねぇ🧔🏻‍♂️」な最悪おじさんの超絶亜種お笑い版みたいな話でした。

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