📖鍵のない夢を見る|辻村深月|直木賞
「あなたにそっくりね」誰かが少年犯罪の精神鑑定を解説するニュース番組を見つめながら呟いた。
扇情的に繰り返される報道は、あたかも稀有で猟奇的な出来事のようにあげつらう。私たちはあぐらをかきながら、私たちとは異なる世界のものであることを確認して批評しては、はりぼての此岸で安堵する。
犯罪は日常の延長線上に確かにある。登場人物は、本の中でなだらかに罪を犯してゆく。何が過ちなのかわからぬまま、気がつくと彼岸にいる。彼らは私達の友達かもしれない。親類かもしれないし慕った師かもしれ