マガジンのカバー画像

11
運営しているクリエイター

記事一覧

詩|綺麗事

詩|綺麗事

死ぬまで愛すよ、とか
何があっても君を守る、とか

そういう歌は好きじゃない

人間なんて汚くて
それでいて脆くて中途半端で

自分のことしか愛せない生き物なのに

薄っぺらな美しさを歌うなんて馬鹿馬鹿しい

でも今はそういうのが聴きたい

今は、綺麗事に縋らせてほしい

詩|そんなのとっくに

詩|そんなのとっくに

人の脆さが恐ろしくなる

『人間不信になりそう』

頭をよぎった言葉に絶望した

人を信じるなんて
とっくの昔に辞めたはずなのに

詩|咲き永らう鳳仙花

詩|咲き永らう鳳仙花

最低点の計画で
小さな今朝の憶測で

君を歌えれば染まった
声だけ携えていた

屍の糸は準透明なら
消えないものが良かった

何も出来ないのに今日が終わる

最低点の計画で
小さな今朝の憶測で

点描を抱える逢引
愛など考えていた

屍の先は極楽苑
夜勤が見かねて後楽園

供えた狭間で覗いて群がる

彼は「めでたい」と笑うようになっていた

彼は「もういい」と咲き永らう鳳仙花

詩|酔い夜

詩|酔い夜

街灯に揺れる僕の化身は
ゆらりふわりと思考をさらい
醒めぬ頭で彷徨う言葉は熱を帯びる

酔っているのは酒のせいか

それとも、その瞳のせいか

詩|散る花一華

詩|散る花一華

卓上の茶封筒

右手に花束

左手に現実

今日は一等星が見える

今日は一等星しか見えない

いつも一等星しか見えない

散る花一華

詩|醜い塊

詩|醜い塊

青木待ちの少年少女

いいね狩りのインフルエンサー

目立てばそれでいいのだと

柔い自分を隠して蔓延る

銀色の折り紙で作った宝石を

愛でては捨ててを繰り返す

大袈裟な包帯を巻いたヒロインと

そこに群がる偽善者の猫

傷を舐めれば滲みていく

仮面を外せばのっぺらぼう

詩|秋が鳴る

詩|秋が鳴る

五線譜を彩る革靴と踵の潰れたスニーカー

季節の訪れを感じる風に首をすくめれば
カシミヤが擦れる柔らかな和音

霞んでぼやけて天井が見えない

泣きたくなっちゃうな、こんな朝は

ピアニッシモの白い月

詩|生きた屍

詩|生きた屍

前ならえ

休め

全体進め

一瞬のズレも許されず
はみ出た者は愚か者

誰かも知らない人たちに羽交い締めにされ
蝕まれていく言葉たち

ナイフを喉元に当てられているような

銃口を額に突き付けられているような

ハサミが線を選んでいるかのような

あんたも僕のことなんて知らないだろ

放っておいてくれよ

蔓延する正義の生贄

酸素が足りない

詩|屍の一歩前

詩|屍の一歩前

午後6時57分のホーム

透明の花びらが舞って

骨と魂が散った

仮面を剥いで

鎧を外して

衣服を脱いで

心臓をえぐり取る

マスクを取って

肩パッドを外して

プライドを捨てて

胸の奥をえぐり取る

真っ黒になった僕の右手は

正義に震えて

溢れる水滴と滲んでふやけた

真っ赤に染まった眼前の景色は

現実を映して

流れる幸福と混ざって溶けた

もう、いいや

さようなら世界

もっとみる
詩|「好き」と「嫌い」は表裏一体で不自由で

詩|「好き」と「嫌い」は表裏一体で不自由で

ついこの前まで好きだった人を

ほんの少しの違和感に気づいた瞬間から

あっという間に嫌いになったり

好きでいたい人のことは嫌いになってしまうのに

嫌いになりたい人のことは嫌いになれなくて

いっそ全てを壊したい衝動に駆られたり

本当は全ての人を愛していたいのに

世の中そんなに綺麗なものではなくて

他人への勝手な感情に踊らされている自分が

愚かに思えたり

悲しく思えたり

滑稽に思え

もっとみる
詩|今日の満月はあの日の君に似ている

詩|今日の満月はあの日の君に似ている

空の缶ビールを片手に散歩した夜の神楽坂

ふと夜空を見上げて淡く微笑んだ君

栗皮茶色の君の瞳は何を映すのだろうか

君が映す世界は何色なのだろうか

何が君の言葉を作るのだろうか

暗い夜空に穴を開けた満月と空き缶の凹み

今日の満月はあの日の君に似ている