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3/30「あなたの頭の中のイメージ、当てます」ショートショート

3月30日 マフィアの日
1282年のこの日、「マフィア」の名前の由来となった「シチリアの晩鐘」という事件が起こったことから。


「今日はマフィアの日ということで、マフィアをイメージしてもらいます。いいですか、目をつぶって、頭の中でマフィアが高級そうな革のソファにどっしりと座っているところをイメージしてください。できましたか、ではあなたのイメージを今からわたしが当ててみせましょう。
あなたのイメージしたそのマフィア、葉巻吸ってますよね?」
「吸ってる!」
「うわあ。すごい」
「当たってる!」
「まふぃあ?いめえじ?」


ぱちぱちぱちと拍手が起こってオレは成功したことにほっとする。
こんなもの超能力でも何でもない。多くの人が連想するであろうことを言っているだけだ。

例えば魚を想像してくださいと言うと、たいていの人は魚の頭を左に尾を右にしてイメージする。図鑑に描かれている魚がこの向きなのと、右利きが魚をさばこうとすると、まな板の上に左に頭がくるように魚を置くためだ。そうすれば左手で頭を押さえてさばきやすい。だから、人は気づかないうちに左が頭で右が尾の魚の姿が脳にこびりついていて、魚をイメージしてくださいと言われると、それが勝手に頭に思い浮かぶ。


「では次に。あなたは一人で、とある心霊スポットに向かいました。そこは山奥にぽつんとある橋です。そこは失恋して橋から身を投げた女性の霊が出るとうわさがあります。あなたはゆっくり橋に近づいていきます。すると女性の幽霊のような影がぼんやり佇んでいるのが見えました。その影があなたに気づきゆっくりこちらに近づいてきます。そして今、まさにあなたの目の前に立っています。想像できましたか。ではあなたのイメージを見事当てて見せましょう。
あなたのイメージしたその幽霊、白いワンピース着てますよね?」
「すごい、その通り!」
「わたしも!」
「また当たった!」
「わんぴい?なんだそれ」
ん?


「では次に。
昭和のガキ大将をイメージしてください。
そのガキ大将、丸坊主で白のタンクトップ着てますよね?」
「着てる!」
「その通り!」
「しょおわ?さっきからなに言ってんだおめえ」
んん?


「では次に。
人魚をイメージしてください。
その人魚、髪長いですよね?
「長い!」
「当たり!」
「見世物小屋でみた人魚は髪なかったべ」
なんだ?


「では次に。
今日はあなたの誕生日。
目の前にろうそくが立てられた大きなケーキがあるところをイメージしてください。
そのケーキ、イチゴのってますよね?」
「のってる!」
「ははは、おもしろい」
「けえきてなんだ。ろうそくが立てられたけえき?ちょうちんか?」
誰だ?


世代が違うとイメージするものも違って成功しづらいけど。
なんか世代が違いすぎる人いない?
そもそもその人、生きてる?

おしまい

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