教師の「わかった」、子どもの「わかった」のちがい
1 はじめに
先生方に質問です。
授業をしていて、よくこんな場面ありませんか?
(T:先生、S:生徒)
T「これ。わかりましたか?」
S:「(元気よく)わかりました!」
T:「じゃあ、この問題の答えは?」
S:「〇〇です。」
T:「じゃあ、なぜその答えになるか説明してください。」
S:「え・・・っと。」
さて、このような場合、生徒が最初に発言した「わかった」は嘘だったのでしょうか。
ここには、先生が考える「わかった」と、生徒が考える「わかった」に違いがあるのです。
2 「わかった」のちがい
大人の場合、「わかる」と「できる」は区別できます。
わかる・・・意味・内容の理解
できる・・・手続きの習得
しかし、子どもにはこの2つの区別はあいまいです。
なので、先生の方が尋ね方を工夫しないといけません。
「やり方はわかりましたか?」
「訳はわかりましたか?」
のように尋ねるとよいと思います。
3 小学校低学年はどっちの「わかった」を重視する?
では、小学校低学年では、「わかる」と「できる」はどちらを先に実感させればよいでしょうか。
私は「できる」だと思います。
小学校低学年くらいでは、「できないからわからない」と捉える子どもが多いでしょう。なので、まずは「できる」ことを実感させた方がよいと思います。
ただし、ずーっと計算練習ばかりしていると、子どもたちの中で「正解すること」に価値が置かれるようになります。
そうなると、後述するように、小学校高学年以降の学習に支障をきたすので、適宜理解できているかどうか確かめる場面が必要でしょう。
4 小学校高学年以降はどっちの「わかった」を重視する?
小学校高学年から中学生くらいになると、「わからないからできない」と感じるようになります。
つまり、理解に重点を置くようになるわけです。これは、自我意識の発達が理由だと考えられています。
5 「わかる」と「できる」の間に前後関係はあるのか?
「できる」から「わかっている」というわけではないことを、銀林(1985)は次の問題で確かめられたと述べています。
生徒にこの問題を解かせたところ、(1)の正答率は97.8%だったのに対して、(2)の正答率は47.8%だった。
また、「わかっている」から「できる」かというとそうでもないようです。
1975年に小学5年生に実施された学力実態調査の問題と正答率です。
割り算の意味は理解していても、2けたの数で割るときに仮商の見当をつけるのが難しいのが見て取れます。
6 最後に
「わかる」と「できる」の間に前後間関係はなく、その両方が相補的に絡み合って、数学の学習は進んでいくと思います。
ただし、初等数学(特に小学校)では、「できる」ことばかりさせない。
中学校の学習では、「わかった」だけで終わらせずに、問題を自作させたりするなど、「わかる」という実感をもたせる必要はあるでしょう。上述したように、自我意識が芽生えると、「できる」だけでは満足できず、子どもでは判断留保というのも難しく、そこで学びが止まってしまうからです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
・参考文献
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