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出版人一年目のインプットまとめ(2月〜3月編)

さて、早いものでもう社会人2年目とやらになってしまったらしい。
正直ほんのさっき生まれたばかりなのに、という気持ちだ。それは嘘か。
でも、まだ大学生みたいな気持ちなのは間違いない。

1年でどれだけ成長できたのかは分からないけれど、
目まぐるしい環境の変化のなかで、
良くも悪くもそれなりに自分は変わったように思う。
個人的な目標だった「連載の立ち上げ」も、実は一年目のうちに叶えることができた(今も入念に打ち合わせを続けてますが)。

目まぐるしい日々のなかで、摂取はどんどんおろそかになってしまうけれど、なんとか怠惰に負けずに習慣づけたいなあという気持ち。
2年目の目標は、それですね。
慣性で以て、力を使わずに動き続けたい。

体力がないとか気力がないとか、そういう個体差や私の能力不足もきっとどうしようもなくあるんだけれど、それに悲観しすぎず、するーっと頑張るのを当たり前にできたらいいなあと思っている今日この頃です。

映画

『PERFECT DAYS』(2023)
『LIAR GAME The Final Stage』(2010)
『ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』(2024)

『夜明けのすべて』(2024)
『落下の解剖学』(2024)
『海がきこえる』(1993)
『14歳の栞』(2021)
『デッドデッドデーモンズデテデデデストラクション 前編』(2024)

太字は特に気に入っているもの

今期、1冊も小説読んでなかった______。
まあ仕方ない。
2月はこの社会人一年目のなかで最も忙しい月だったから……(残業時間70時間超)

でも、映画館には毎週のように足を運んだ。
LIAR GAME以外は全部映画館で観た。
今期はいい映画が比較的多かった気がする。

「PERFECT DAYS」は、役所広司の目が凄く好きだった。自然と人間の営みをまるごと慈しむかのような目。
早朝に起きて植物に水をやり、やり甲斐の感じる仕事を昼すぎまで行い、それから銭湯に浸かり、行きつけの居酒屋かスナックで酒を少し嗜む。帰ったら本を微睡むまで読んで、日付も変わらぬうちに眠る。
限界社会人からしたら羨ましい限りの生活だった。
ただ、Twitterで「中高年男性版なろう系」的なことを言われていたのも確かに納得はできる。主人公は特に周りの人間関係に首をつっこむことはないのに、あれよあれよと巻き込まれ、若い女性にキスをされたり、姪が訪ねてきたり、スナックのママの元夫に「あいつのこと頼むよ」と言われたりする。
自分の世界を静謐に守っている中年男性に、日常をかき乱されるようなイベントがそんなポンポン起きるわけないのだが、だからこそこの作品は退屈せず観ることができたともいえる。
この作品のメッセージ性は全然見えてこなかったけれど、「なろう系」という評価は私にとっては悪口ではない。「なろう」もしくは「異世界転生」といったジャンルは、概ね現実に疲弊した人間に対する逃避=救いであり、むしろこの作品はそれを目指しただろうから、そう言われるのはむしろ光栄なくらいではないだろうか?
(トイレ掃除という労働を美化しすぎという批判は、それはそうとも思うが、世間から白眼視されないような定職につき、やりたくない業務を長時間こなし、年齢とともに責任を背負うという、この社会の規範から脱線したいという欲望はみな持ってしまうものではないか)

「ハイキュー!!」はまさに「魂の叫び」という言葉が相応しい映画だった。スポ根はこうでないといけない。オタクが、あるいは広義の現代人が、スポ根にハマるのは、この既に燃やし方を忘れた己の魂を、他者(キャラクター)によって代わりに燃やしてもらう点が大きいのだろう。おっさんがプロ野球や甲子園に熱狂するのと同じだ。
私はシンプルにスポーツの好みとして、バスケのようなノンストップなゲームの方がテンポが良くて好きなのだけども、でも最後の一人称視点の演出は映画館ならではの沈黙と没頭で良かった。

「14歳の栞」はものすごかった…!見たことがない映画だった。物語ではなく、ほぼドキュメンタリーではあるが。
配信予定がなく、映画館でしか観れないというのも納得の生の14歳の感情がそこにあった。
編集しようと思えば、いかようにも美化することができただろうけど、そういったご都合主義を一切排して、クラスメイト35人の感情を限りなくありのままに伝えている。
例えば、「人と仲良くなるための手段として『いじり』を使う陽キャ男子」の子がいて、そういうコミュニケーションをする人って社会にいっぱいいるんだけど、自分とは違う人種だからこそ、「ああ、彼にはこういう論理があるんだな」と知ることができる。それを理解できるか、受け入れられるかは別にして、創作をする私にとって、人間を作り出す人間としては、自分と違う行動原理を35人分知れるというのはこのうえない贅沢な資料だった。
大人になれば、時間が経てば、簡単に子供の頃の悩みって忘れてしまうし、「なんであんなことで悩んでたんだろう」みたいに、過去の悩みを矮小化したくなるんだけど。でも、自分がかつてそうだったように、子供は何歳だろうが真剣に生きていて、真剣に悩んでいる。それを思い出させてくれる良い映画だった。
隠しカメラとかでもないのに、ここまで「生」を、心がざわっとするくらいの生の感情を映せたのは本当にすごい試みだなと思う。

あ、あともうひとつの気づきとしては。
この歳くらいの子どもって、ほとんどの子が「大人が求めている綺麗な言葉」を使うってこと。
「みんなと仲良くする」とか「勉強して良い学校に行かないと」とか、そういう話題を口にする生徒のあまりの多さに驚いた。
それはシンプルに、普段話さない映画スタッフのような"大人"にインタビューされた時に、大人に教えられた「きれいな言葉」しかぱっと出てこないということでもある(∵友達と話すときの自然な語彙が封じられる)と思うんだけど。
子どもの心って「固まる前のコンクリート」みたいな比喩を『ミステリと言う勿かれ』で見たけど、だから簡単に大人や周りの環境に影響を受けてしまう、と。だから「14歳の栞」は子供を映す映画なんだけど、子供のやわい心の痕を見て「あ、こんな言葉や考えを周りから言われて育ったんだな」という風に子供の取り囲む環境を映す映画でもあったんだな、とその時思いましたね。
だから、意外とみんな同じことばかり言ってしまうんだよね。
同じことばかり言われて、同じ考えが正しいと言われて、それを内面化していくから。
それが悪いことでは別にないんだけど、なんか「こんなに性格も境遇も違う子供たちなのに、みんな言うことは同じなんだ」と少し面食らってしまった。まあ、多数派でいた方が安心なのは親も含めて皆そうだからね。
14歳。自分も人の真似事ばかりしていた頃だったな。パクリみたいな音楽を沢山作っていた。そこから彼ら生徒が、社会と適切な距離を置きながら、自分らしく育っていけばいいな、と勝手ながらに願う。

アニメ・ドラマ

『ダンジョン飯』(1話まで)
『Angel Beats!』(2話まで)

『痛ぶる恋の、ようなもの』(全4話)

全然アニメ見てなくて笑う。
継続して見続けるっていうのがもうだめかもしれない。
MCが一時的にニノに抜擢された「だれかtoなかい」というバラエティだけは毎週欠かさず見ていたんだけれども。

なんか、仕事が忙しくなって、昔ほど「毎週の楽しみ」みたいなものを作るのが難しくなっている気がする。
だって一週間って一瞬だから。

というより、なんか最近「なにかを楽しみに生きている」みたいなlook foward to的なものが全然ないな。コナンの映画くらいかな。
好きなまんがの新刊も、買うだけで溜めちゃったりするし。
多分精神的にとてもよくない気がするので、なにか心のオアシスが欲しいですね。ひとり旅とかしようかな。

…はい、という訳でアニメドラマの感想は割愛します。

漫画

とよ田みのる『これ描いて死ね』(5巻)(ゲッサン)
屋宜知宏『ヒトナー』(読切)(ジャンプ+)
本田三五『ピアス』(読切)(ジャンプ+)
クワハリ/出内テツオ『ふつうの軽音部』(13話まで)(ジャンプ+)
戸部じろ『カシコイ』(1巻まで)(モーニング)
MOTO『お姉様のVな事情』(1巻まで)(まんがタイムきらら)
いちのへ瑠美『きみの横顔を見ていた』(2〜3巻)(別冊フレンド)
竹屋まり子『あくたの死に際』(2巻)(裏サンデー)

薄場圭『スーパースターを唄って。』(2巻まで)(ビッグコミックスピリッツ)
園山ゆきの『ブレス』(1巻まで)(少年マガジンエッジ)
こだまはつみ『この世は戦う価値がある』(1巻まで)(ビッグコミックスピリッツ)
ヤマシタトモコ『違国日記』(3〜11巻)(FEEL YOUNG)

矢沢あい『天使なんかじゃない』(全8巻)(りぼん)
伊藤一角『8月31日のロングサマー』(3巻まで)(モーニング)
末次由紀『ちはやふる』(1巻まで)(BE・LOVE)
入江亜季『北北西に雲と往け』(1巻まで)(青騎士コミックス)

今期は、面白いまんが多すぎた!
正直もう遠い過去すぎてあんまり詳細な感想を覚えてないんだけど、とにかくアツいまんがにたくさん出会えた。

でも、今期ナンバー1を挙げるとしたら「違国日記」かな~。
これはね、疑いようがなく傑作です。
映画化もするし、アニメ化も決まったし良かった~。Twitterでは変な揶揄をされないか心配される声も散見されるけど、でも、もっと多くの人に知ってもらう必要がある作品だと思う。

作品としては、ずっと「わたしと他人は違う」という話をしていて、だからこその「違国」なんだけれども。
時に違う言葉をしゃべっているかのように、違う文化・違う考え方・違う行動原理で生きている人がわたしの身近にはいっぱいいる。

ある日、両親をなくした15歳の朝は、叔母であり小説家の槙生(まきお)に引き取られる。基本的にはこのふたりの生き方の違いがメインになるわけだけど、ときに朝は友達と分かり合えなくてぶつかったり、進路に悩んだり、「わたしって何だろう」という問いを抱えたりする。
本当に普遍的な漫画なんだ。でも、抽象的という訳ではなく、キャラクターは皆まるでドキュメンタリーのように実在感がある。ここまで誠実に「人間」を描いている漫画は初めて見たかもしれない。
特に、小説家の槙生さんの考え方・感じ方のリアリティは異常。作者本人がモデルでないとこれは描けないだろう…と思うが、天才作家なら描けるのかもしれない。それくらい他のキャラクターもまるで生きているようなのだ。

漫画らしいテンプレートや物語の予定調和というものが、この作品には存在しない。1話ごとにざっくりとしたテーマはあるけれど、それはその場限りのものではなくて、何話か跨いで同じテーマを繰り返したり、とにかくわかりやすい縦軸みたいなものが用意されていない。
(まんがを読み慣れていない人は少し厳しいかもしれないが)それなのにするすると読めて、かつページをめくる手が止められないというのは超絶技巧である。

編集者は作品の良いところを盗んで、何かしら担当作家との打ち合わせに生かそうと考えたりもするが、これは常人が真似したり参考していい作品ではなかった。

映画やアニメでどんな風に描かれ、人々がどんな受け止め方をするのか、今から楽しみである。


あとは「スーパースターを唄って。」「ブレス」「この世には戦う価値がある」などアツい話が良かった。
人によって「アツい」の定義は違うと思うけど、私にとっては「主人公が自分らしさを懸けて戦う話」くらいの意味だろうか。もっと端的に「己の存在理由を証明する話」と言ってもいい。
要するにアイデンティティの話が好きなのだ。

だから、「これが俺の生きる理由なんだよ」と何かに打ち込む話が私は好きだ。「生き延びるためにこれが必要なんだよ」だと尚いい。

そして、その好みは多分、自分がそうした物語群の主人公になりたいという根源的な欲求から来ているんだろうなと思う。
こうした話が無限に読みたい。本当に。切に。

「何者でもない人間が何者かになる話」に私は、これからずっと励まされながら/呪われながら、何者かになろうともがいていくんだろう。





おわりに

さて、いつの間にか「出版人一年目」とかいうタイトルが使えなくなる季節になってしまいました。(出版人ってなんだよと思いつつ)
なんならもう5月ですね。書き始めたのは4月頭とかだったのにな。

「二年目」とタイトルを変えて続けるかはちょっと考え中なのですが、
インプットはどのみち続けなきゃいけないなと思いますし、
報酬系を刺激するためにインプットを記録・公表するというのは悪くない方法だと思ってるんですが、う~む。

シンプルに大変!(おい)

あとは単純にこの作業にも慣れて、あんまり役割を果たしていない気もするので、ひとまずはここでおしまいにしようかな~。
ここには書いてないけど、雑誌のバックナンバーとかもっと読まなきゃいけないし・・・。むしろそっちから目を逸らしている感すらあるし・・・。


何より、時差があると鮮度が落ちたり忘れてしまったりするので、本当に語りたい作品はリアルタイムで感想を書いた方がいいに決まってるんですよね~。作者名・掲載雑誌名を調べて書いたのは、意外と仕事に役立つかも…とは思ったんだけど。

まあ、どうなるかは全然わかりませんし、誰もそんなことに興味はないと思いますが、2年目、全然自覚ありませんが頑張っていきたいと思います。
もうすぐGWも明けますね。
5月病で苦しんでいる未来が見えます。

仕事ももちろん頑張りたいけれど、
創作もしたいな~という機運が春風によって高まっております。
「創作大賞2024」出したい!

締め切り7月までらしいので、頑張って漫画原作部門出したいな~!
その時は応援よろしくお願い申し上げます!!



という訳で、今回はこの辺で。
皆さんよい5月をお過ごしください。





追記

あと、最近のアウトプットの宣伝です。
よければ聴いてやってください。


『浮遊惑星』


『キョムキョムキャンパスライフ』


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未だに醜くも何者かになろうとしておりますが、
まだあがきたいんです。



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