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自分が言いたいことを短くまとめて、インパクトを出す手法について

昔、勤めていたコンサルティング会社では、自分が読んだ本を発表するという場があった。

その時、一番むずかしいな、と思ったのが、「その本を読んだことのない人に、どうやってその本の内容を端的に伝えればよいのか」だった。


読書会などであれば、基本的には参加者がその本を読んできているので、意見を述べるときに、自分の感想から入っても問題はない。

あるいは、webで書評などを書くときであれば、その本がどのようなものなのか、ネットで調べればすぐにわかる。


ところが「発表」という場では、そういうわけにはいかない。

時間は5分程度と限られているし、その本について、あるいはその本が扱うテーマについて、まったく無知の人もいる。
その場で「ネットを見てください」というわけにもいかない。

だから、「本の内容を一言で説明すること」に心を砕かなければならなかった。


最初の1ページで説明する

コンサルティング会社で働く前は、大学の論文やレポート同様、報告書や調査書などは、さぞかし部厚いものが好まれるのだろうと思っていた。

だが、実際は全く逆で、分厚いものは敬遠された。
というより、文が長い、話の長いヤツは無能とみなされた。

とにかく端的に、結論を、短く、だが、過不足のない説明を求められた。


それと同様に、提案書や企画書なども、「最初の1ページ」で、短く説明することが求められた。

企業経営者は忙しい上に、短気な人も多く、冗長な説明は好まれない。

したがって、要点だけをかいつまんでプレゼンテーションし、YES/NOを素早く判断してもらわねばならなかった。


これらは、場合によっては大変なストレスだった。
というのも、「言いたいことを一言で」は、想像以上に難しい行為だったからだ。


「あらすじ」と「言いたいことを短くまとめてインパクトを出す」は似て非なるもの

このように言うと、例えば本では「あらすじでしょ?簡単だよ」と言われる方もいる。

あるいは、報告書や論文も「要旨(=アブストラクト)」を書くようなものでしょう?と仰る方がいる。


だが、それは見当違いだ。
「言いたいことを短くまとめる」と、「あらすじ」や「要旨」は似て非なるものだ。

一体何が違うのか。

それは「あらすじ」や「要旨」が、主として「内容の理解」を優先したものであることに対し、「一言にまとめる」は、「行動させる」「感動させる」を目的としたものである点だ。


目的が「内容の理解」ではないが故に、「言いたいことを一言でまとめる」技術は、要約の技術ではない。

行動させたり、感動させたりするためには、「全体を説明する」のではなく、「インパクトを出す」ことに主眼が置かれる。

そのための技術が、「一言でまとめる」だった。


「行動させる」「感動させる」表現の例

だから、理解を目的とした表現と、行動や感動を目的とした表現は、まったく異なる。


例えば「本」の紹介をするときに、「あらすじ」を説明することと、「その本を読みたくなる」ように仕向けるときでは、まったくやるべきことが異なる。

あらすじは、物語の要点を、本の前から順を追って紹介しなければならない。

だが、それに対して「読みたくなるような紹介」は、聴衆のニーズに合わせて、順序も要点も変化する。


例えば「ビブリオバトル」をご存知だろうか。
ビブリオバトルとは、書評を述べ合い、一番「読みたくなる紹介」をした人物が勝つというゲームだ。

<ビブリオバトルとは>
「ビブリオ」は書物などを意味するラテン語由来の言葉で, 「ビブリオバトル」とは,立命館大学情報理工学部の谷口忠大教授が考案した,ゲーム感覚を取り入れた新しいスタイルの「書評合戦」です.ビブリオバトラー(発表者)たちがおすすめ本を持ち合い,1人5分の持ち時間で書評した後,バトラーと観客が一番読みたくなった本,「チャンプ本」を決定します.

ポイントはそのルールにある。

ビブリオバトルは、レジュメや資料などを配布できず、5分のプレゼンテーションのみで、紹介する本の面白さを伝えねばならない。

<ビブリオバトルのルール>
ルールはとてもシンプルです.
ビブリオバトラー(発表者)はそれぞれお気に入りの本を持ち寄ります.
ビブリオバトラーは読んだ本について、スライドやレジュメは一切使わず,自分たちの言葉で5分のプレゼンテーションを行い,本の面白さを伝えます.
プレゼンテーション終了後は2~3分間,他のバトラーや観客から質問を受け、本の内容や発表者の思いについて理解を深めます.最後に会場にいるバトラー,観客全員で「どの本が読んでみたくなったか?」を基準に多数決 し,一番読みたくなった「チャンプ本」を決定します.

これはなかなか難しい注文である。
本の「面白さ」を伝えきるのに、5分はあまりにも短いからだ。
無論、あらすじを追いかける時間はない。

では、どうやって本をプレゼンテーションするのか。

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