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Autumn days

秋季、季節感情障による悲しいときもあるけど、なかなかよく進んでいる気もする。

仕事以外は、アパートにいるまま、身体を縮めてひっそりと暮らしている。東京での一人暮らし生活。この生活は、幸福とは言えないけど、のんびりでなんとなく楽しい。少し淋しいのやら、いろいろ不備があるけれど、ひとりで自由に生きていけることが幸せだ。今日みたいに、なにも予定入れてない日もnoteを書けて楽しい。

10月に入り、バースデーパーティーを挙げた。といっても、ただ友達をピザ屋に誘っただけだけど。まぁ、楽しかったけどね。ニューヨーク出身のカップルと独身の俺という、いつもの三人組で盛り上がった。いろいろなこと話して、美味しいものを食べられた。

一人欠席したのは、曖昧な付き合いをつづけているMという子。友達にMを紹介したかった。誘ったは誘ったけど、なにか都合がよくないとか言いながら断った。英語が上手なMは、このサークルに絶対仲間入れになれると思ったけどな。それだけが、少し残念だった。

30代ってこういうもんなんだ。可愛がってくれるひと、面倒みてくれるひとは誰もいない。真面目なヤツは結婚して、子育てで忙しいとか、それともキャリアで出世してるそうだ。だけど、私は妻もキャリアもない。ニート経験者で、仕事が決まったとはいえ、最低基準の給料で、乏しい暮らしをしている。
 
「貴方には、双極性という病を患ってるから、しょうがないよ」

そう、叔母さんがこうかばってくれる。

「今やってるのが十分なんだよ。今だって頑張っているし」

叔母さんのやさしい言葉に感謝しているが、自分は自分がもっとポテンシャルがあることを分かっている。どうにか見込みを生かせる機会はないのか。もっと能力があるのに、能力が不要になってることが悔しい。もっと恩返しができなのも。


Mという女子と友達関係で進めている。

友達以上の関係は求めてない空気が感じてきた。メールはずっとつづけている。毎日はしないまでも、隔日の頻度にメッセージが返ってくる。相手は内定的で仕事が忙しいで、喋る時間は必ず短い。なおかつ、私と恋愛には要望してないことが鮮明になってきた。

「引っ越しの手伝ってくれる」

―こういうところが私の出番。笑えるな。Mは男性の知り合いが少ないから、私を要望したとしか考えられない。それにしても、私は文句言わずに引っ越しの手伝いにいった。黙ったまま、周囲のひとを助ける。それが男だ。

Mは田舎育ちより、運転が上手なんだ。レンタカーに荷物を乗せて、引っ越し先までドライブする。ハンドルを持ってアクセルを動作するMはきれいだった。

行先に到着してから、荷物を全部3階まで運んだ。二時間ぐらいで引っ越し作業は終わった。その後、両方とも疲れてベッドの上で横になる。

そこで、なにかが起こりそうだったが、何もしなかった。ただ、喋るだけだった。何かばかな話しをして、笑わせた。そうして一時間の末、たっぷり休んだこととして、立ち上がりお家へ帰る準備をしはじめた。Mは、玄関まで見送ってくれた。Mの疲れ気味の笑顔が可愛かった。

同時に、こんなこともあった。

休日に突然元彼女から連絡が来た。同じ業界で働いている彼女で、普通は仕事に関する質問がメッセージでよく来る。今回は仕事と関係ない話しだった。

「今日中、どっかで会える?」

行こうか行くまいか…相当一秒は悩んだ。

もちろん会える。なにもしてないし、君とはずっと会いたかったし。

まだ、恋のかけらが心のなかに残っているのだろう。

最後の出会いは一年以上前だった。渡したいものがあって、渡せなかった。去年の誕生日のために買ってあげたプレゼントはまだ私の棚に置いたまま。ムーミンのぬいぐるみだ。これは、小さいものでもなく、でっかいムーミンだ。床から腰まで背伸びるぬいぐるみ。この一年、ムーミンがいるアパートに慣れてきたが、プレゼントとして買ったものなので、今日でムーミンと別れることになった。

銀座で待ち合わせすることに決めた。改札口の前でムーミンを抱えて彼女を待った。彼女が現れたら、以前とまして美しい姿だった。片手で持っていたムーミンを無口で渡した。彼女は嬉しいとばかりに目を輝かせて抱っこした

銀座というオシャレな高級アパレル商店街で有名な町で、ムーミンぬいぐるみを抱えているなんて、驚いた人ももちろんいた。それを気にしなくて、彼女は悠々に町ぐるみ散歩した。

カフェにふらっと入って、3名のテーブル(大人2人・ムーミン1人)がすぐ用意してくれた。注文して落ち着いたら二人とも静かでいた。

久しぶりの再会とあって、いっぱい話しをするような予想をしていたが、話すことはあまりなかった。静寂で落ち着いた雰囲気を二人で創造した。
彼女の顔を見てはほっとする。そうだった。この恋はわくわく感ではなく、安心するほうの恋だったんだ。

Love shouldn’t feel like adventure, it should feel like home.
(ラブというのは、興奮するのではなく、安心を感じる方が真のラブだ)

コーヒーをゆっくり飲んで、双方とも思いついたことを気軽に話す。

音楽は最近、海外のアーティストより日本の曲を流しているな。あい〇ょんって知ってる?

ニュース集中して見てないけど、世界中にいろんな問題が起きてるって、心配しちゃうよね。

哲学にまだハマってるの?私はショーペンハウアーだったら多少なりとも知っているけど…

待ち合わせは午前中だったが、あっと言う間に夕方に転じる。そろそろ帰らなきゃという話しになった。カフェを去って、東京駅に向かっていたら、突然あともう一つやりたいことがあると彼女は言った。

「最後に、高層ビルの展望台で都市の夜景色を楽みたい。

City Skylineを見たい」

ムーミンと彼女と私でエレベーターに入り、最上階まで上がる。扉が開くと、そこが展望台だった。窓により距離を縮める。夜景色は確かに綺麗だった。灯かりが無数に光ってて、遠くから車は小さく見える。空は、薄黒の幕が下されて、東京タワーがやけに目立つ。

もう、帰らないと…

駅前まで彼女を見送った。こんな楽しい日、一年に何回あるんだろう?彼女とは不思議で特別な繋がりがあると感じた。愛情がある。本心からは逃げようがない。年下彼氏なんか求めてないといわれても、彼女の美しさと面白さに惹かれる。次、いつ会えるのか?来年か?数年後か?しばしの別れと分かってても、なぜか心重い。

じゃ、またね…

ひとり、ムーミン無しで、帰り道の電車に乗った。
 

振り返ったら、最近はただ楽しいことばかりではないかと思う。全て儚い幸せだけど、儚いなり儚い幸せでも価値観が生じるものだ。

バルコニーでタバコ一本吸いながら、夕暮れを眺める。明日は月曜日だ。仕事を頑張らないと。




(イメージはartofkaizaと名のインスタグラムのイラストレーターの作品です。是非、ページをご覧になってください)。

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