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2021年 私的年間ベストアルバム 50

さて、SNSに生息する音楽好きにとって最も楽しい?時期がやってきた。そう、年間ベストアルバムの季節だ。例年と同様、今年も既に複数の音楽媒体が各々の年間ベストを発表し、また、各個人も思い思いの年間ベストをSNSで晒しまくっている。いや、楽しいね。これだけ年間ベスト文化が盛んになったのも、SNSとサブスクリプションサービスの恩恵だ。

ということで、自分も年間ベストを作成してみた。ただ、今年は適宜、気に入ったアルバムの感想をnoteに記録していたので大半は記録済み(こちら)、順位だけが新しいみたいな状況なので、コメントは短めでいきたいと思います(というか語彙が枯渇・・・)。



50. Junes K / Depaysemann

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日本のFlying Lotus?はたまたJ Dilla?そこまで言うと褒めすぎ?いやいや、前作「SILENT RUNNING」も素晴らしかった福岡のビートメイカーの新作は、これまたコラージュやサンプリングを駆使した極上のビート集。「Donuts」のようなぶつ切りインストヒップホップにFlying Lotus的ジャズ・エレクトロニカな要素を加えて調理したような感じで、起伏に富んだ展開があり、音色も多様なため飽きずに楽しく聴ける。

49. PDP III / Pilled Up on a Couple of Doves

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NYC音響作家であるBritton Powellがベースとなるトラックを作成し、ご存知Huerco S.と前衛チェリストLucy Railtonが肉付けしていって作られた音響アンビエント。電子音、環境音、ノイズを駆使して、最初から最後まで音に釘付けになるような、緊張感のある硬質なサウンドスケープが続く。M4「Walls of Kyoto」は瞑想的なサウンドから全てを飲み込むようなノイズに変わっていく様が圧巻。

48. Ross From Friends / Tread

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Brainfeederからロンドン拠点のRoss From Friendsの2枚目はまさにモダンなエレクトロニックダンスミュージック。ポストダブステップ、UKガラージ、ローファイハウスといった要素からは新世代感を感じるが、90sレイヴカルチャーなカラフルなシンセがまぶされることでどこかノスタルジックな気分にもなる。また、前半のダンサブルな展開から、後半のアンビエント的なトラックまで、空間を広く使った音作りは家聴きにとてもフィットする。2010年代前半のMount KimbieやSBTRKTといったポストダブステップ周りやFour Tet、Floating Pointsが好きな人にはおすすめ。

47. 99LETTERS / IBUKI

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大阪のトラックメイカーのアルバムでTwitterで知りました。最初はMeiteiと同じように日本の古き良きエッセンスを注入したエレクトロニカっぽい音楽を作る人なんだという印象だったけど、どちらかというとローファイハウスを代表としたダンスミュージックの方がバックボーンとして強そう。こういうロウでアンダーグラウンドな音質、大好物なんですよね・・。

46. Silk Sonic / An Evening With Silk Sonic

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Bruno MarsというポップスターとAnderson. Paakというドラマー兼ラッパーが組んだスーパーユニットのアルバムは70年代のソウル/ファンクを最大限にリスペクトした最高にスウィートな音楽だ。こんなにポップな音楽、みんな好きになるでしょうという出来で、Bruno Marsの十八番のようなドラマチックな激甘バラードでも根幹にはファンクがあり、その辺はPaakの参加が影響しているのかもしれない。メジャーなポップアルバムはほとんど聴かなかったけどこれは別腹。まるでデザートのよう。

45. Chihei Hatakeyama / Late Spring

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休日の15時くらいのまどろみタイムにとてもお世話になったアンビエント。Late Spring=遅い春ということで、北国の雪解けの季節をイメージしながら聴いてた。とにかく音が柔らかく暖かいので、聴いてると自分の凝り固まった心や頭が溶解していくような音楽で良かった。Chihei Hatakeyamaは今年5枚くらいアルバムをリリースしているようで、すごい創作意欲。

44. The War On Drugs / I Don’t Live Here Anymore

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大きくなったなぁ。インディーとメインストリームを全て包み込むようなThe War On Drugsの5作目は、まるで80年代な煌びやかさを纏ったことで、スタジアムですら似合うようなバンドになってきた。そして、ますますBob DylanやBruce Springsteenといったアメリカンロックの伝統を受け継いできたことを実感する一方、郷愁を誘う粒子の細かいキラキラしたギターサウンドを聴くと、これがある限りはThe War On Drugsはどこまでいっても信頼できるなと思う。

43. Sons of Kemet / Black To The Future

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怒りと闘争のアフロフューチャリズムジャズ。この音楽を聴いていると「戦え!戦え!(進撃の巨人)」「心を燃やせ!!(鬼滅の刃)」などの今年ホットだったワードが頭に浮かんでくる。抑えきれない腹の底から湧き上がってくるエネルギーを感じるアルバムという意味では今年のナンバーワンなのではないか。ライブ観てみたい。

42. Dos Monos / Larderello

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Dos Monosは良いというより強い。どの作品でもその熱量、情報量に圧倒されてしまう。アンダーグラウンドな匂いと知的でアートな匂いをプンプンさせながら、ガンギマリしたトラックに3人のMCがそれぞれの特徴をふんだんに披露するラップは軽快で痛快。今作の楽曲はテレビ東京の「蓋」という番組とリンクする形で制作・発表されたらしく、どんな番組だったのか気になるところ。

41. 折坂悠太 / 心理

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土着的な感覚がなんとなく町田康の小説を読んでるような気分にさせられる。今年のPino Paradino & Blake Millsのアルバムにも影響を受けたというジャジーで温かみのあるサウンドにのせて、市井の人々の心と生活を丁寧に紡ぐ唄の数々は、やはりグッとくるものがあるでしょう。日本のSSWとして信頼できる者の一人です。

40. Nas / Kings Disease II

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前作に引き続きHit-Boyをエグゼクティブプロデューサーに迎えたニューアルバムは「やっぱNasかっけええええ!!」と言いたくなる出来栄え。Eminem、EPMD、Lauryn Hillとゲストはめちゃめちゃ豪華なんだけど、それが成り立つのはやはりNasの存在感があってこそ。タイトにライミングを決める様からは自信と貫禄を感じるし、今また再び充実しているように思える。Hit-Boyのソウルフル、ジャジー、キャッチー、そして締めるところは締めるトラックが個人的にはまた好み。

39. Pasocom Music Club / See-Voice

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前々作、前作の「DREAM WALK」、「Night Flow」からは、人口減少が宿命づけられ衰退の足音が聞こえてくる郊外の風景や住宅街、そこを疾走する青年たちの刹那的な瞬間を切り取った光景が浮かんだが、本作からはコロナ禍で全てがストップした社会の中で、ある青年が海を見つめながら今一度自分を振り返っているシーンが浮かんだ。やっぱりみんなここ1〜2年で少し身の振り方を見つめ直してフラットになったと思うんだ。パ音さんの新譜は派手さはないけど、一旦地に足をつけて落ち着こうと呼びかけられているように感じる。今一度、内なる声に耳を傾けたくなる一枚。

38. Tomu DJ / Ambient 2

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今年の頭にBandcampで見つけて以来ファンになったTomu DJ。アルバム「FEMINISTA」も良かったけど、個人的にはこちらのEP以上アルバム未満なアンビエントテクノ集にやられた。ジュークやフットワークっぽさも感じるエレクトロニックミュージックからは、内省的な態度と控えめながらも芯の強さを感じ、コロナ禍のホームリスニングアルバムとして絶大な信頼を置くことができた。

37. Joy Orbison / still slipping vol. 1

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上述のRoss From Friendsと同じく、UKダンスミュージックシーンの新世代感を感じるJoy Orbisonの新作。今年は、Bicep、Overmono、DJ Seinfeld、Basic Rhythmなども続々と良質なLP、EPをリリースしているが、それらも引っくるめてポストダブステップから脈々と引き継がれた最新のトレンドはこのJoy Orbisonのアルバムに含まれているような気がする。というかシンプルに一番好みだった。本人がこれはアルバムではなくミックステープだと言うように、良い意味でラフな部分があるのが良かったのかも

36. Sault / Nine

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Infloは昨年に引き続き、今年の顔だったね。Jungle、Little Simz、Cleo Sol、Adelのプロデュースをするなど、至る所でInfloの名前を見たように思う。それくらい時代の音を鳴らしている・・・。というよりInfloの作る音楽が時代の音となったという方が正しいか。ソウル、ヒップホップ、アフロ、ディスコをごった煮にしてから削ぎ落としたようなポリリズミックなサウンドは人間の本能に訴えかける迫力を持っている

35. Wiki / Half God

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Navy BlueプロデュースのWiki(検索しにくい)のニューアルバムが良き。どちらかというと甲高い声質で、Navy Blue、Earl Sweatshirtなどとはまた違った雰囲気。なんとなくKendrick Lamarっぽさも感じる。ニューヨークのストリートの風景が浮かんでくるような洗練されたサンプリングループがとても心地よい。この界隈の音楽は一聴すると地味で同じような音楽に聴こえるかもしれないが、よくよく聴くと毎回違った表情を見せるし、本当に奥が深い。

34. Sufjan Stevens & Angelo De Augustine / A Beginner's Mind

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やっぱりSufjan Stevensは良い曲を書く・・・。Asthmatic Kitty Records所属のAngelo De Augustineとコラボレーションし、キャビンで見てた映画にインスパイアされてこの14曲を作ったという(それぞれの曲がどの映画にインスパイアされたかはWikiに載ってる)。エレクトロニックなアルバムも面白いけど、Sufjanは「Carrie & Lowell」のようなシンプルな編成と美しいコーラスで聴かせる歌が一番好きだ。聴けば聴くほど味わい深くなってくるスルメ盤。

33. KMRU / Logue

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昨年アンビエントアルバムである「Peel」が大絶賛されていたケニア出身KMRUの2017〜2019年の楽曲を集めた編集盤で、フィールドレコーディングや電子音による柔らかなレイヤーが施されたサウンドスケープと多彩なビートからなるアンビエント/テクノ集である。主に前半にダンスミュージックが収録され、後半にアンビエントトラックに移り変わっていく構成。元々ダンスミュージックを作っていたというKMRUのルーツが垣間見えるとともに、アフリカの大地と電子音楽の融合のような音楽は、確実に傑作「Peel」へつながる何かを放っている。

32. Navy Blue / Navy's Reprise

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ニューヨークを中心にその勢いがとどまるところを知らないアブストラクトヒップホップ界隈。今年もこの辺から良質なアルバムがたくさんリリースされたように思う。Armand Hammer、Wiki、MIKE、Medhane、Mach-Hommy・・・そしてシーンのトップランナーであるNavy Blueの新作も当然の如く気持ちの良い出来。フックなしでひたすらバースのみの構成がこのジャンルのお決まりだけど、抑揚のないバースとレトロでジャジー/ソウルなトラックとの組み合わせが最強すぎる

31. JPEGMAFIA / LP!

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JPEGMAFIAさんは自分の中ではヒップホップなんだけどヒップホップの枠は完全に飛び越えていて、今作はもはやエレクトロニックミュージックの亜種のような印象で聴いていた。なんせトラックが奇天烈で面白い。ひたすらに自由、かつ楽しく刺激的。喜怒哀楽がごちゃ混ぜになって一気に吐き出すようなセンス・オブ・ユーモアには脱帽。そして、また素晴らしいメロディセンスも持ち合わせており。それがこんなに奇天烈な音楽にも関わらず多くの人を惹きつける理由なんだろうと思う。

30. Leon Vynehall / Rare, Forever

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前作があまりに傑作だったのでそれと比較してしまうと少し物足りない感は否めないが、初期のアルバムのようなダンサブルな曲から前作で見られた素晴らしきドローン・アンビエントの世界まで、普通にクオリティの高いエレクトロニックミュージックを堪能できます。やっぱハズさんね。もっと評価されてもいいように思う一枚。

29. Emeka Ogboh / Beyond The Yellow Haze

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ナイジェリア出身アーティストによる素晴らしいレフトフィールドダンスミュージックレコード。ナイジェリアの都市ラゴスにおけるフィールドレコーディングと、ベルリンミニマルからの影響を感じさせる実験音楽とを融合させた音はとても刺激的で、全然聴けてないけど今年のアフリカからの音楽で個人的No.1。

28. Pino Palladino & Blake Mills / Notes With Attachments

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このアルバムは話題になったね。特に自分のTLでは絶賛の嵐だったように思う。ソウルクエリアンズのレジェンドベーシストPino Palladino初となるリーダー作では、盟友Chris Daveや創作意欲の塊Sam Gendelといった凄腕ミュージシャンたち、そして昨年自身のソロアルバムやディランのアルバムへの参加などで話題を呼んだBlake Millsが抜群のセンスを持って楽曲を構成し、室内楽的な温かみと、ジャズならではの即興性により拡がりのある展開が繰り広げられる。ここで鳴る一音一音はすべて、愛でるように聴き続けたい

27. Jorge Elbrecht / Presentable Corpse - 002 

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「うわ〜なんて爽やかなポップソングだ!?ん?あれ?なんだこれ?なんかドロドロしてるしおかしくない?え?実はホラー?ホラーなの?そういえばジャケもなんか不気味だし・・・いや、ポップなんだけど・・・60sサーフポップの皮を被ったサイケお化け・・というのがしっくりくるか。うーんやばい。ハマってきたぞ。これは完全に中毒になりそう。もう一回聴こう」(以下、無限ループ)

26. betcover!! / 時間

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漂うローファイ、スモーキー、ダブといった感覚に荒れ狂うギター、そしてヤナセジロウのやるせないボーカル。ゆらゆら帝国やフィッシュマンズ、中村一義などの偉大な先人たちの空気感を踏襲しながらも、隠しても隠しきれない「ヤナセジロウの色」からは新しい才能の登場を強烈に実感し、と同時に自分が歳をとったことをしみじみと思わされてしまった

25. Armand Hammer & The Alchemist / Haram

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ジャケがグロすぎてなかなかSNSでシェアすることが躊躇われるが、中身は間違いない。Armand Hammerの二人はアブストラクトヒップホップシーンの最前線を走るのは俺たちだ!と言わんばかりの貫禄のあるラップと緊張感を示し、そしてThe Alchemistのトラックはソウル・ジャジー、スモーキーでMadlibに負けないレベル。ただただ、かっこよかった。

24. Sam Gendel & Sam Wilkes /  Music for Saxofone & Bass Guitar More Songs

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 一聴してそれとわかるSam Gendelの哀愁漂うストレンジなサックスをSam Wilkesの温かみがありメリハリの利いたベースが包み込む。サイケデリック、ミニマル、アンビエントといった要素が盛り込まれ、現代的な空気感を纏った至福の28分。この二人の作品は前作も素晴らしかったが、これも最高。それにしてもSam Gendelはワーカホリックだ。大量のリリースにはとても追いきれていないし、この年間ベストにもこれまで折坂雄太、Pino Palladino & Blake Mills作品に参加。これからも至るところで彼の存在がクローズアップされるのだろうな。

23. Silent Killa Joint & dhrma / DAWN

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まず、J Dilla、Madlib、Moodymannあたりが大好きなんだろうなという加古川出身のdhrmaによるトラックが本当にかっこいい。あえて音を濁らせてアブストラクトにしたサウンドによるズレたビートはヒップホップのトラックにはもってこいだ。そしてYoutuber兼ラッパーで淡路島出身のSilent Killa Jointは、刑務所上がりらしいということで強面系かと思ったら全然マッチョな感じではなく、むしろdhrmaのトラックにバッチリハマるクールなライミングがかなりドープだった。

22. James Blake / Friends That Break Your Heart

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聴けば聴くほど味わい深いJames Blakeのボーカリゼーションと美しいメロディには涙ちょちょ切れる。ポストダブステップの申し子としてシーンに登場し、時には気負いが感じられるなど相当なプレッシャーにさらされながらこれまで作品を作り続けてきたんだろうけど、今作はそんなしがらみから最も自由になり、肩肘張らず、シンプルな音楽を作ることを心がけたんじゃないかと思う。こんな社会だからこそ、分断や混乱に飲み込まれず、地に足をつけて自分であり続けるために努力すること、そんなことの大切さを想う。とにかくラスト4曲の美しさ、神々しさ、慈悲深さにはやられた

 21. Squid / Bright Green Field

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今年はblack midi、Shame、Dry Cleaning、Black Country, New Roadなど、UKポストパンク勢が良質なアルバムをたくさんリリースしたので、その辺りのシーンが好きな人にとっては特に楽しかったことでしょう。その中でも自分に最も刺さったのがSquid。他のUKポストパンク勢に比べてジャズ、アンビエント、ドローン的な要素が盛り込まれており、自分のツボが百万回押されました

20. J.Cole / The Off-Season

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貫禄&貫禄。J .Coleは今作が初聴きというなんとも恥ずかしいリスナーですが、真っ向勝負でぶん殴ってくるような王道っぷりには完敗。オールドスクール〜ブーンバップ〜トラップとヒップホップの歴史を横断し完璧に咀嚼してアウトプットされたハイクオリティトラックに、己の存在感一つで勝負する様はかっこいいとしか言いようがない。漫画Beckの千葉くんだ。

19. Pendant / To All Sides They Will Stretch Out Their Hands

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Brian LeedsことHuerco S.のオルターエゴ、Pendantによる不穏なダブアンビエントアルバム。アブストラクトなモコモコ感は彼の特徴の一つでこのアルバムでもその性質は遺憾無く発揮されている。なんだろうな・・・全然チルではなく、腹の底がザワザワする類のアンビエントなんだよな。自分の根底に眠っている人間の汚い部分を暴かれるような・・・。

18. Foodman a.k.a. 食品まつり / YASURAGI LAND

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銭湯に行ってのんびり湯船に浸かって、風呂から出たら一杯のビールを飲む。これが平凡なサラリーマンにとっての最上級の幸せだ」と誰かが言ってたような気がする(多分気のせい)。サウナに行って「整う」とか宣っている諸君、そんな日常の中にある非日常のためのサウンドトラックに本作はいかがでしょう?まさかのHyperdubからのリリース作品は、熱くもなく寒くもない、独創性に溢れた唯一無二のエレクトロニックミュージック。そして、なんと全編ベースレスですからね。Hypredubからベースレス作品とかイカれてる。

17. Low / Hey What

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アンビエント〜シューゲイズを行き来する鉄板のデジタルノイズは傑作「Double Negative」から引き続き健在なんだけど、そこに厳かで歌心のあるメロディーが乗っかることで生み出されるカオス・・・。このアルバムを聴いていると自分が真っ二つに分裂する気分を味わえる。なんでこんな音楽になったのか、意味がわからない。天国と地獄はいつだって隣り合わせなのだ。

16. Madlib / Sound Ancestors

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Madlib×Four Tetという組み合わせで勝利は約束されていた。Madlibの煙たいビートの細部をFour Tetの繊細さでコーティングした、なんとも上品かつワイルドなビート集。M6でYoung Marble Giantsをサンプリングしちゃうあたり流石のセンスだし、古今東西の音楽を再構築し一貫性のあるビートミュージックに仕上げる妙技はもう彼のお家芸だ。MF DOOMやJ Dillaといった盟友に捧げられたアルバムだとも思っている。

15. Makaya McCraven / Deciphering the Message

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ブルーノート音源のリミックスといえばMadlibの「Shades of Blue」が思いつくけど、それとはまた異なるマカヤのブルーノート音源のリミックスアルバム。1953年〜1969年の楽曲をサンプリングして作成されたというこのアルバムだが、単なるリミックスではなく、ジャズの自由さとヒップホップのループ間をうまく融合したような新鮮なビートミュージックとして楽しめた

14. Jayda G / DJ-Kicks

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このJayda Gのミックスを聴いたら、コロナ禍でクラブに行けなかったクラバーも思わずニッコリ。きっと、自分の部屋の中で腰をくねくね、体をゆらゆら、そして飛び跳ねるなどしちゃったことでしょう。前半のジャジーで緩いファンクナンバーから徐々にハウス等のトラックを増やしてピッチを上げていく展開は私の家聴きMix CDとして完璧に機能。好きだ!

13. Skee Mask / ITLP09 Skee Mask - Pool

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本作が2枚に分けて1年おきのスパンでリリースされていたら、どちらも絶対もっと上位にしていただろう。アルバムを通して聴きたい派の自分にとって100分超えのアルバムは長すぎるが、それでもこの順位にしてしまうくらい個々の楽曲のクオリティはとんでもない。「現代で最も素晴らしいアンビエント・ブレイクビーツを作り上げる人」という自分の中での認識はさらに強固になった。Bandcampのみのリリース。

12. Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra / Promises

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Floating PointsとPharoah Sandersの文字を見ただけでは、こんなに重厚で繊細、そして優雅なオーケストラアルバムになっているとは想像していなかった。アルバムトータルで聴くと起伏に富んだ展開に耳を奪われ、安らぎと興奮の間を何度も往復することになる。言葉はいらない。一音一音を決して逃すことなく正座して聴くべし

11. Little Simz / Sometimes I Might Be Introvert

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いつの間にこんなに人気に!!??と思わずにはいられなかったUKラッパーLittle Simzのニューアルバムはこれまでの作品と比較しても相当にパワーアップ。イントロの豪華なストリングスでやられた人も多かろう。SaultのInfloやCleo Solといった面々の力を借りることで、ソウル、R&B、アフリカンの要素を踏んだんに盛り込み、ヒップホップの枠を完全に飛び越えた傑作に

10. UNKNOWN ME / Bishintai

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七尾旅人とのRollin' Rollinが多分最も有名なやけのはらだけど、「今はユニットでこんな新感覚アンビエントやってるのか!」と驚いた。空間を意識した立体的なサウンドが非常に未来的である一方、どこか懐かしい、親しみやすさもあるという、聴いていると優しい気持ちになれるアンビエント/ニューエイジで良かった。

9. Yu Su / Yellow River Blue

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アーティストのアイデンティティが垣間見える音楽は、なんとも魅力的なものだ。中国出身、現在はカナダのバンクバーで活躍するYu Suのアルバムはまさにそんな作品で、彼女の歩んできた人生が音に反映されているように感じる。良質なテクノ、ダブ、アンビエントをベースにオリエンタルなテイストを盛り込んだ内省的なエレクトロニックミュージックには思わず拍手。アジア系エレクトロニックアーティストのアルバムでこんなにハマったのはYaeji以来。

8. Lana Del Rey / Chemtrails Over The Country Club

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シンプルに削ぎ落とされたプロダクションにラナ様のエモーショナルで深淵な歌声が染み渡る。前作と比較するとインパクトは薄いのかもしれないけど、気づいたら再生ボタンを押してたし、気づいたら口ずさんでいた。「良い曲が入ってればそれだけで強い」という当たり前だけど困難なことがこのアルバムでは成し遂げられているように思う。M1「White Dress」で見せる新境地的な歌唱はマジで痺れる。

7. Lost Girls / Menneskekollektivet

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多分、舞台は霧が深い森の中だろう。何故だかわからないが、神秘的で不気味な自然環境の中で、北欧の精霊となったJenny Havalが本能に響く多彩なパーカッションの上で軽やかに舞う姿が目に浮かぶ。冒頭で「In the beginning, there is no word, and no 'I', In the beginning, there is sound」と始まるように、クラウトロックやディープハウスを行き来する珠玉のサウンドにただただ意識を傾け、自分自身を開放する。そうすることで見えてくる世界があるのです。

6. KIRINJI / crepuscular

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年間ベストの選定は11月末までのリリース作で選ぼうかなと思っていたんだけど、これは例外として入れてしまった。堀込兄貴初のソロプロジェクト体制で作成されたニューアルバムは聴いた瞬間に恋に落ちる超ハイクオリティなジャパニーズポップス。キャッチーでダンサブルなM3「first call」、大貫妙子のヨーロピアンアルバムのようなM4「薄明」、このアルバムでは異質で強烈なAwichとのM8「爆ぜる心臓」、そしてコロナ禍のみんなの想いを代弁するクラシックM2「再会」・・・、と一曲一曲感想を述べていきたいくらい素晴らしい曲で溢れている。Tame Impalaあたりを意識したというソフトサイケな音像も今の気分にピッタリだ

5. The Weather Station / Ignorance

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オーウェンパレットによるストリングス、ジャジーなアレンジとTamara Lindemanの控え目のようでエモーショナルなボーカルの妙よ。フォークをルーツとしつつもオルタナティブなタッチと繊細な音響感覚を武器にこの1年間ずっと私のライブラリで絶えず稼働しておりました。抑制から徐々に解放していく展開とかたまらない。どの音楽媒体でも高評価だったと思うけど納得。

4. madteo / Head Gone Wrong by Noise

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イタリア生まれのニューヨーク在住DJ/プロデューサーの新作は、UKガラージ、ミニマルテクノ、エクスペリメンタルなど、なんと形容したら良いかわからないが超カッコいいエレクトロニックミュージックで溢れている。こういうザラついた質感は本当に大好物だし、M4やM6はRicardo Villalobosを彷彿とさせるし、ボイスサンプルの使い方や左右のチャネルに振り分けられた実験的な音の数々はMoodymann「Black Mahogani」みたいだ。これはアンダーグラウンド精神に溢れた傑作だと思う

3. Otagiri / The Radiant

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大して聴けてないけど日本のヒップホップ作品で最も喰らった作品。というかこれはヒップホップと呼んでいいのか??本能に訴えかけるような乱れ飛ぶパーカッションと、ポエトリーリーディングとラップの間を自由に行き来するライミングが相当癖になった。ダンスミュージックとして聴いても秀逸だし、グローバリゼーションに対する反抗のような音楽でもある。Otagiriは今年KID FRESINOのアルバムにも参加。アルバムはbandcampオンリーです。

2. Cassandra Jenkins / An Overview on Phenomenal Nature

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アンビエントな香りも漂わす幽玄な音響フォーク的な趣が最高 of 最高。特にリードトラックであるM3「Hard Drive」のアグレッシブさと繊細さの入り混じったエモエモな展開には何度涙腺を刺激されたことか・・・。もはやアンビエントな最終曲もフィールドレコーディングとサックスの音色が本当に美しい。The Weather Stationと並んで2021年最高級のSSWアルバム。まだまだ世界は自分の知らない美しいもので溢れている

1. Tyler, The Creator / CALL ME IF YOU GET LOST

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間違いなくこれまでのタイラーの集大成。前作「IGOR」の流れを踏襲しつつ、ブラック・ポップ・ミュージックとして今できる最良のサウンドが繰り広げられているのではないだろうか。決して発明的なサウンドではないが、ファンク、ソウル、R&B、ヒップホップの全ての歴史と、彼自身がOdd Future時代から経験した全てを血肉とし、非常に説得力のあるアルバムをリリースしてみせた。アルバム単位では間違いなく今年一番リピートしたと思うし、このアルバム以上に2021年を代表し、かつタイムレスな輝きを放つアルバムはなかったと思う。

文句なし。お前がナンバーワンだ。


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今年も楽しかった。なんて、まだ終わりまで半月あって、得てしてこういう時に傑作がリリースされたりするので、まだまだ気が抜けない。実際に昨年のマイベストで2位に選んだMeitei「古風」の続編、その名も「古風II」がリリースされてしまって、これがまた最&高!な内容だったもので、「このランキングからは漏れたけど入れたかった〜」みたいなアルバムはまた年が明けたらnoteにまとめたいと思う。

ここまで目を通していただいた方、ありがとうございました。


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