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昔、バンドを組んで24分で解散した話

夏になると思い出す。
若かりしころの、夢や希望を。
無限に続くと感じていた青春を。

俺がきゃぴきゃぴした専門学生だったころ。

「バンド組むか。」

その一言で話し合いが始まった。

俺とのりお、ゴリオ、辰吉

この4人でバンドを組むことにしたのだ。

とりあえず、俺たちは形から入ることにした。


俺「まずはバンド名だな。名前は重要だ。」

のりお「確かにな。世界に名を知らしめるわけだから、かっけぇのにしてぇよな。」

ゴリオ「1発で覚えられるネーミングがいいな。」

辰吉「歴史に名を刻むわけだからな。恥じないものがいいぜ。」

俺たちはあーだこーだ、ごちゃごちゃ話し合った。

そして4人で悩むこと7分。

ついにバンド名が決まった。

その伝説のバンドチームの名は

「グレープフルーツ」

俺たちは震撼した。

俺「やべぇな。やばい。かっけぇよ。」

のりお「これは、もう世界とったな。」

ゴリオ「1発で覚えられるネーミングだ。」

辰吉「これはグレープフルーツ農家からCMの依頼がくるぞ。」

俺たちは歓喜した。

伝説のロックバンド「グレープフルーツ」が誕生した瞬間の喜びを分かち合った。

しかし、俺たちはすぐにでもメジャーデビューをしたかった。だから喜びもつかの間。

担当する楽器について話し合いを始めた。

のりお「アルトリコーダーを少々。」

ゴリオ「カスタネットとタンバリンならできる」

辰吉「俺もアルトリコーダーならたぶんできる」

俺「何もできん。」


ということで結成4分後に、いきなり危機に直面した。

でも俺たちはできない理由は探さない。

どうやれば、できるか。それしか考えなかった。

5分くらい真剣に話し合った末に

みんなボーカルでいいんじゃね??

ってことになった。斬新である。

エアバンドの案も浮上したが、それは俺たちのプライド的に却下となった。今思うと、エアバンドにしとけば、俺たちがゴールデンボンバーになっていたかもしれない。

俺「よし、んじゃあ、えっ、どーする?歌う?」

のりお「しかないよなぁ。歌う?」

俺「えっ、ちょまってまってまって!マジ恥ずかしいんだけど!」

ゴリオ「俺も無理だって!低い声しかでないって!」

辰吉「えっーー!!まってよぉ!!俺もはずいって!!」

俺「のりお歌えよ!たぶん一番うまいって!」

のりお「むりむりむりむり!!はずいはずい!!」

辰吉「のりお歌えって!!」

ゴリオ「のりおいっとけいっとけ!生まれ変わるときだって!!」

のりお「無理って!無理って!!」

その後も俺たちはのりおに歌うよう説得を続けた。

のりお「無理ってぇぇぇぇ。ひっく……ひっく……人前で歌うなんて……ひっく…ひっく……無理だぁ……」 

ついには泣き出してしまった。

俺「俺も……ひっく…ひっく…つい乗りで…バンド…組むなんて……ひっくひっく……言ったけど……ひっく…歌のテストも……歌ったことな~いヒックヒック…」

ゴリオ「ひっく…ひっく……ほんとは……バンド……したくなぁい……ひっくひっく…」

辰吉「俺も……ひっくひっく…バンドの練習するくらいなら…ひっく……アニメ見ときたぁい…」

ということで、漢4人で泣きながら、解散することを決意した。

結成して24分後のことである。


またいつか

俺たちが本当の意味で大人になって

みんなの心が1つになったとき、

そのときは、


そのときは、

忘れられない最高のメロディを

最高のイマジネーションを

最高のロックンロールを

最高の感動を


そして、最高の音楽を

世界に届けたい。








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